スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
240 / 1,361

二百四十話 良く見えて、良く動ける

しおりを挟む
「よろしくお願いします!」

「あぁ、よろしく頼むぜ」

エリナの次はレオナが相手。

両者の武器は……素手。
お互いの五体のみで戦う。

審判はおらず……二人とも構えて呼吸を整え、今回もアラッドが先に飛び出した。
拳、肘、手刀をメインに使い、序盤は蹴りを使わない。

一撃の威力は蹴りの方が上だが、今のアラッドを相手に蹴りで状況をひっくり返そうとするのは難しい。
レオナは冷静な判断を下し、腕の動きを見逃さずに一つ一つ丁寧に対処。

そして隙あらば自分もという意思を見せ、徐々に攻撃を加えていく。

(いや、今日は本当に……動きが良く見えるな)

まだ攻撃は一度もクリーンヒットしていない。
レオナも相変わらず素手での戦い方は上手い。

その凄さは感じているが……いつもの様にその壁に対し、焦りは感じない。
寧ろ……やれる気しかない。

二人の攻撃して躱して捌いての流れが数分ほど続き……未だ決着は着かず。

(良い距離を、保たれてる!)

距離を離したり詰めたり、相手との空間が変わるだけで戦いやすさは変わっていく。
何度かそろそろ蹴りを解禁しようと思い、少しだけ距離を取ろうとするが、離れようとした瞬間に……アラッドがほぼ同時に動き、離した距離を潰される。

つまり、どう動こうともアラッドとの距離が変わらない。
アラッドが断然有利な距離間という訳でもないので、お互いに戦いやすさはそこまで変化なし。

ただ……ここまで距離を縮めることも、離すことも出来ないとなると……まるで操られている様な錯覚を感じる。

(結構マックスまでギア上げてきてるんだけど、それでもまだ躱して捌くか……いや、レオナのポテンシャルを考えれば当然か)

まだまだクリーンヒットなしという状況に対し、驚きはしない。
ただ、自然と負ける気もしなかった。

そんな自信に満ち溢れていると……やけにレオナの動きがゆっくりしている様に感じた。

(あっ、今いける)

本日のアラッドは若干極限の集中状態、ゾーンに入っているのか……それともランナーズハイ状態なのか。
ぶっちゃけ本人もいまいち分かっていない。

ただ、今日は相手の動きが良く見えて、体も良く動く。

アラッドはレオナの体重が乗った右ストレートを少し後ろに下がりながら左手で手首を掴み、内側に巻き込むように捻った。

「おわっ!?」

レオナの体はそのままぐるっと回転し、気付けば体は地面に倒れていた。

「ふっ!! ……俺の勝ちで良いか?」

「は、はい。参りました」

倒れたレオナの顔面に拳が突き付けられ、模擬戦は終了。

「アラッド様、今のはどうやったんですか!!!!」

「ん? えっと、今のはな……なんて言えば良いんだろうな」

元の世界で生活していた時、合気道なんて完全なやらせだと、アラッドは思っていた。

ただ、この世界の基準だと……相手の力を了利用することは出来る。
しかし今日……どう考えても綺麗にレオナの力を利用して投げることが出来たアラッドだが、個人的には技術だけで出来るものではなく、ある程度の力は必要だと感じた。

(そもそも爺さんやひょろいおっさんが、あんな軽々人を投げられる訳ないしな。それに、体の体重移動? が、全力で一つの方向に向いてないと厳しい)

レオナの最後の右ストレートが、右半身ごと動かすものでなければ、絶対にあそこまで綺麗に投げられなかった。

色々条件は難しいなと感じた……しかし、ある程度どんな状況で仕えるのかは理解した。

「自分で言うのはちょっと恥ずかしいんだけど、相手の体重の動き? みたいなのが一つの方向に思いっきり動いてたら、その力を利用して投げることが出来た……ってな感じかな」

「た、体重の動き、ですか?」

「いや、そういう反応になるよな……よし、ちょっと全力で殴り掛かって来い」

「えっと……分かりました!!!」

自分が全力で殴ってもアラッドにダメージを負わせることが出来ないと解っているので、孤児院の冒険者志望の少年は言われた通り、全力でアラッドに殴り掛かった。

「……えっ? いでっ!?」

「どうだ、解ったか」

「は、はい。何となくですけど、解りました」

言葉だけでは解らなかったが、少年はアラッドに投げられ、その言葉の意味を何となくではあるが感じ取った。

だが、実際にやれるかと訊かれたら、絶対に無理だと答える。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...