286 / 1,361
二百八十六話 どこまで信じるか
しおりを挟む
「最後の試合も結局一撃か」
「本当に、恐ろしいですね」
「全くね」
ベルたちは先程までアラッドの最後の校内戦を観ていた。
対戦相手は三年生の中でも、上位に名を連ねる強者。
ベルたちも上級生に負けない実力を持っていると自負しているが、仮に対戦して百パーセント勝てるかと問われれば、否と答える。
そんなハイレベルな上級生が相手だったのだが……アラッドはこれまでの試合通り、ただただ急接近してぶった斬る。
その動作を行い、勝利しようと考えていた。
ただ……そう何度も同じことを繰り返していれば、これからアラッドとぶつかるかもしれない生徒たちは、学生なりに対策を立て始める。
まずは最初の一撃を完全に受け止める。
ガードからの反撃を考えた者もいたが、実際に行った生徒……アイガスはその考えを見透かされ、ヤクザキックを食らって吹き飛んだ。
であれば、斬撃の型を見切ってカウンターで潰す。
もしくは自慢の柔剣で受け流す。
生徒たちは色々と方法を模索するが、アラッドと対戦することになった生徒たちは、多くて三撃で場外に吹き飛ばされてノックアウト。
もしくは戦意喪失し、降参。
「アラッドの場合さ……剣を使ってなくても、勝てそうだよな」
「彼の場合、もしかしたらそっちの方が得意かもしれないからね。でも、一応騎士を目指してるんだし、剣を使わないと駄目なんだよ」
「それは解ってるって。けどよ、本選で戦う奴らは可哀想だよな」
本日でパロスト学園で行われる個人戦は終了。
他の学園も数日以内には終わる為、いよいよ王都の闘技場で行われる学生の最強を決めるトーナメントが開催される。
「? 校内戦で戦った人たちも十分可哀想だと思うのだけど」
エリザの言葉に、リオ以外の全員がうんうんと頷いた。
確かに校内戦でアラッドとぶつかってしまった生徒たちは、十分可哀想と言えるだろう。
三年生にとっては、最大のアピールチャンスを奪われた結果になる。
それはリオも解っていた。
「それはそうだろうな。でも、他の学園の生徒たちは、アラッドが素手でもバリバリ戦えるってことを知らないだろ」
「……なるほど、そういうことか」
接近戦メインで戦う剛力令嬢であるレイは、リオが何を言いたいのか直ぐに気付いた。
「えっと…………あぁ、なるほど。確かに可哀想ではあるね」
そして尾根軸接近戦メインのベルも気付いた。
「どういうことなの?」
「アラッドは、私たちを相手に校内の訓練場で模擬戦を行っていただろう」
「そうね」
「その模擬戦で、アラッドは私たちを相手に素手で戦ったこともある」
そこまで言われ、ようやくエリザやルーフたちも理解した。
「そういうことね……本選出場まで進んで、まだまだこれからと意気込んでいる方にとっては、確かに可哀想ね」
訓練場には当たり前だが、アラッドたち以外の生徒たちも訓練や模擬戦を行っている。
つまり、アラッドと同じ訓練場で活動している生徒たちは、アラッドが剣を失っても素手で戦えるということを知っている。
校内戦や、トーナメント戦でも武器を落としたからといって、その時点で負けになることはない。
「アラッドが気に入らない奴はその情報を外に漏らすかもしれねぇが、他校の奴らがその話をどこまで信じるか……俺は素手でも戦えるが、剣よりも数段劣る。そう認識すると思ってんだ」
「十分あり得そうね。剣を上手く落とせば勝機があると思ってしまうのは無理もないけど……アラッドとしては、一切焦る必要がない状況ね」
「うむ、そうだな。寧ろ嬉々として殴り掛かるだろう」
特別な体を持ち、身体強化の才を授かったレイもその力を活かそうと体術の訓練も積み重ねてきたが、今のところ一度もアラッドに勝てていない。
「ただ……それはそれで面白い流れというだけだ」
未だ模擬戦で一勝も上げられていないというのが現状だが、もう一人の傑物は勝利を諦めておらず、獰猛な笑みを浮かべていた。
「本当に、恐ろしいですね」
「全くね」
ベルたちは先程までアラッドの最後の校内戦を観ていた。
対戦相手は三年生の中でも、上位に名を連ねる強者。
ベルたちも上級生に負けない実力を持っていると自負しているが、仮に対戦して百パーセント勝てるかと問われれば、否と答える。
そんなハイレベルな上級生が相手だったのだが……アラッドはこれまでの試合通り、ただただ急接近してぶった斬る。
その動作を行い、勝利しようと考えていた。
ただ……そう何度も同じことを繰り返していれば、これからアラッドとぶつかるかもしれない生徒たちは、学生なりに対策を立て始める。
まずは最初の一撃を完全に受け止める。
ガードからの反撃を考えた者もいたが、実際に行った生徒……アイガスはその考えを見透かされ、ヤクザキックを食らって吹き飛んだ。
であれば、斬撃の型を見切ってカウンターで潰す。
もしくは自慢の柔剣で受け流す。
生徒たちは色々と方法を模索するが、アラッドと対戦することになった生徒たちは、多くて三撃で場外に吹き飛ばされてノックアウト。
もしくは戦意喪失し、降参。
「アラッドの場合さ……剣を使ってなくても、勝てそうだよな」
「彼の場合、もしかしたらそっちの方が得意かもしれないからね。でも、一応騎士を目指してるんだし、剣を使わないと駄目なんだよ」
「それは解ってるって。けどよ、本選で戦う奴らは可哀想だよな」
本日でパロスト学園で行われる個人戦は終了。
他の学園も数日以内には終わる為、いよいよ王都の闘技場で行われる学生の最強を決めるトーナメントが開催される。
「? 校内戦で戦った人たちも十分可哀想だと思うのだけど」
エリザの言葉に、リオ以外の全員がうんうんと頷いた。
確かに校内戦でアラッドとぶつかってしまった生徒たちは、十分可哀想と言えるだろう。
三年生にとっては、最大のアピールチャンスを奪われた結果になる。
それはリオも解っていた。
「それはそうだろうな。でも、他の学園の生徒たちは、アラッドが素手でもバリバリ戦えるってことを知らないだろ」
「……なるほど、そういうことか」
接近戦メインで戦う剛力令嬢であるレイは、リオが何を言いたいのか直ぐに気付いた。
「えっと…………あぁ、なるほど。確かに可哀想ではあるね」
そして尾根軸接近戦メインのベルも気付いた。
「どういうことなの?」
「アラッドは、私たちを相手に校内の訓練場で模擬戦を行っていただろう」
「そうね」
「その模擬戦で、アラッドは私たちを相手に素手で戦ったこともある」
そこまで言われ、ようやくエリザやルーフたちも理解した。
「そういうことね……本選出場まで進んで、まだまだこれからと意気込んでいる方にとっては、確かに可哀想ね」
訓練場には当たり前だが、アラッドたち以外の生徒たちも訓練や模擬戦を行っている。
つまり、アラッドと同じ訓練場で活動している生徒たちは、アラッドが剣を失っても素手で戦えるということを知っている。
校内戦や、トーナメント戦でも武器を落としたからといって、その時点で負けになることはない。
「アラッドが気に入らない奴はその情報を外に漏らすかもしれねぇが、他校の奴らがその話をどこまで信じるか……俺は素手でも戦えるが、剣よりも数段劣る。そう認識すると思ってんだ」
「十分あり得そうね。剣を上手く落とせば勝機があると思ってしまうのは無理もないけど……アラッドとしては、一切焦る必要がない状況ね」
「うむ、そうだな。寧ろ嬉々として殴り掛かるだろう」
特別な体を持ち、身体強化の才を授かったレイもその力を活かそうと体術の訓練も積み重ねてきたが、今のところ一度もアラッドに勝てていない。
「ただ……それはそれで面白い流れというだけだ」
未だ模擬戦で一勝も上げられていないというのが現状だが、もう一人の傑物は勝利を諦めておらず、獰猛な笑みを浮かべていた。
340
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる