スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
367 / 1,361

三百六十七話 偶々運が重なっただけ

しおりを挟む
「………………」

いつもは驚きながらも、数秒後には通常運転に戻る受付嬢でさえも、目の前の光景に……固まって動けなかった。

「……あの、大丈夫ですか」

「えっ? あ、はい!! えっと……しょ、少々お待ちください!!!」

「分かりました」

アラッドに声を掛けられ、ようやく元に戻る。

その光景を見て、他の固まっていた者たちも元に戻った。
中には呼吸を止めていた者もおり、何人かは咳き込んでいた。

「……い、依頼の品通り、ユニコーンの角……ですね」

受付嬢の言葉を耳にした者たちは、再度大きな衝撃を受けた。

そもそもの話として、アラッドが嘘を付いたり見栄を張ることはないと思っている。
少なくとも、ベテラン組はアラッドを信用している。

ただ……そんなベテラン組でさえも、今回の一件は信じられない出来事だった。

「あ、アラッド!!! お前、それいったいどうやって手に入れたんだ!!??」

唾が飛んできそうな勢いで肩を掴み、口を開く先輩冒険者たち。

いったいどうやって、そもそも遭遇することすら困難なユニコーンと出会えたのか。
その他諸々知りたい事がある。

普段のベテラン達であれば、まずは情報量がわりに飯でも奢ってから、そういった話を聞き出そうとする。

だが、今の彼らにそんな余裕はなかった。

「えっと……偶々運が良かった、としか言えませんね」

それが精一杯の回答だった。

元々アラッドはクロの殺気も狩りて、ユニコーンが自分たちの殺気に固まった瞬間を狙い、角を斬り落として速攻で去ろうと考えていた。

しかし、変異体ケルピーとそれに従う三体の通常ケルピーという、丁度良い悪者がいてくれたお陰で、ユニコーンに悪い印象を持たれずに角をゲットすることが出来た。

実際にその場に遭遇するのにもかなり時間が掛かり、成体のユニコーンがアラッドに敵意という警告を向けてきた距離や、アラッドがその方向に目を向けた時には既に姿を消していたことなどを考えれば……本当に偶然が重なり合った結果としか言えない。

「う、運ってお前……そ、それだけなのか?」

「……そう、ですね。いや、自分にある程度力がなかったら無理だったとは思いますよ。ただ、今回の依頼は本当に運が良かったから達成することが出来た、としか言えませんね」

「そ、そうか……」

アラッドが自分たちに情報を漏らしたくないから、という理由で嘘を言っている様には思えない。

「あ、アラッドさん。こちらが報酬の金額になります」

「ありがとうございます」

受付嬢は自身が手に持つその金額に……手だけではなく、全身が小刻みに震えていた。

白金貨が三十枚。
冒険者ギルドの受付嬢ともなあれば、大金に触れる機会は決して少なくない。

しかし、白金貨三十枚という金額に触れる機会は、まずない。

(……大人の角とか指定はなかったし、子供の方で良いよな)

報酬を受け取ったアラッドは、ちょっとした罪悪感が心に残っていた。

ユニコーンの角の価値に関しては、同じく錬金術を扱うアラッドも理解している。
だからこそ……せめて片方は自分の欲の為に使いたかった。

「これ、お願いします」

「は、はい! かしこまりました!!」

依頼達成官僚だけでは当然終わらず、アラッドは数日分の素材や魔石を提出。

その中にはケルピーの素材も含まれていたが……変異体ケルピーの素材だけは、ギルドに提出しなかった。

(よし、今日はクロに美味い飯を食わせてやらないとな!)

依頼達成報酬も含めて大金が手に入り、アラッドはゴルドスの中で有名な高級料理店へ直行。

従業員に頼み、クロに食べやすい高級料理を大量に持っていくように頼む。
アラッドはアラッドで高級料理を堪能。

そして会計時、従業員はその金額に少々震えながら口にしたが、アラッドはなんて事はない表情で支払う。
従業員の驚く顔を無視し、幸せいっぱいの気持ちでクロと宿に戻った。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...