スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
479 / 1,361

四百七十九話 研ぎ澄まされる早さ

しおりを挟む
(センスがあると言うか、集中力が研ぎ澄まされるまでの時間が極端に短いな)

集団戦の訓練を初めて数日……当然ながらアラッド、クロ、ファルは本気を出して攻撃は行っていない。

しかし、物理攻撃を行うだけではなく、タイミングをズラして遠距離攻撃を放つ。
アラッドだけは器用に搦手などの攻撃手段も行うが……スティームはそれら全てに的確に反応し、反撃まで行う。

(雷魔法は、反応速度とか全体的な速さに関して相性が良いって聞くが、相性が良いだけであって使いこなせるか否かはまた別問題なんだが……スティームの場合、無意識にそこら辺も使いこなしてる、のか?)

アラッドは神童を越えて怪物ではあるが、スティームは神童という枠から零れ、ただの天才には成り下がっていない。

「よし、一旦休憩にしようか」

「はぁ、はぁ、はぁ、そう……だね」

(集中力が研ぎ澄まされてる分、疲労度は大きいみたいだな)

冷えた水を渡し、アラッドは友人の為になるアドバイスを考える。

「なぁ、スティーム。俺たちと模擬戦を行っている最中、ぼんやりと周囲の状況は把握出来てるんだよな」

「そう、だね。一応、それなりには」

「……それなら、もう少し行動の優先順位を意識して動いた方が良いかもな」

「…………なるほど。確かに、ちょっと全部の動きに対応しようと頑張り過ぎてたかもしれない。というか、わざわ飛んでくる攻撃を双剣で対応する必要はないよね」

軽くアドバイスを受けただけで、直ぐに改善点に気付くスティーム。

アラッドたちの攻撃に一応全て反応出来ていたからこそ、今までその無駄に気付かなかった。

「相手がBランクモンスターばかりとかならともかく、今回の勝ち残り戦に限っては、もう少し余裕を持っても良いかもな」

トーナメントの予選で行われる勝ち残り戦には、推薦などで本選の選手に選ばれずとも、誰彼構わず参加できるわけではない。

年齢は規定通りニ十歳以下であり、一定以上の戦闘力を有する者しか参加できない。

「やっぱり、試合が始まったら動き回るべきかな?」

「他の参加者たちが囲ってくるを狙って、同士討ちさせるのもありだと思ってたけど……そうだな。まず足元か頭上を通って包囲網から抜けて、駆け回りながら戦うのも悪くないな」

集中力が刻限まで研ぎ澄まされていても、周囲の状況を把握出来る冷静さもある為、うっかりリングの外に落ちてしまうという失態を起こすことはない。

「ちなみに、アラッドはどう戦うつもりなんだい?」

「俺は……そうだな。全員押し出しすれば良いかな。それが一番単純で怪我人を出さなさそうだし」

決して参加者たちを嘗めている訳ではないのだが、どう考えてもオルフェン並みの実力者が多く参加してるとは思えない。

「そのセリフ、参加者たちの前で言ったらダメだよ」

「解ってる。俺もそこまでバカじゃない」

確かにアラッドはそこまでバカではない。
しかし……喧嘩を売られてしまうと、ポロっと本音が零れてしまう可能性はそこそこ高い。

「……スティーム、あっちからそこそこ大きい戦闘音が聞こえるんだが」

「そうだね。僕の耳にも入ってきたよ……ちょっと行ってみる?」

「おぅ」

戦うことがそれなりに好きなアラッドだが、戦いを観戦することもそれなりに好きであるため、こっそりと足音と気配を消しながら接近。

「ウォオオオラァアアアアアアアアアッ!!!!!」

戦闘音の中心地には、一人で獣心を解放しながら戦うオルフェンがいた。

対戦相手はCランクモンスターのワイルドベア。
剛腕から強烈な裂爪を繰り出す恐ろしい熊なのだが……二人が戦場近くに駆け付けた時には、既にボコボコ状態だった。

そして剣技スキル、バッシュがワイルドベアの首に直撃。
見事ワイルドベアの首を綺麗に切断された。

ソロでCランクモンスターを一方的にボコボコ。
それ自体はとても優秀な内容なのだが……問題は現在、オルフェン獣心を解放しているという状況。

「ふぅ、ふぅ……ァアアアアアアアッ!!!!!」

声を荒げ、地面にひび割れが入るほどの拳を叩きつける。

「……ふぅーーーーー」

結果、オルフェンは獣心に飲まれることなく、元の精神状態に戻った。

「あれ? 二人は、確か……」

「よぅ、良い戦いを観せてもらった。お礼にそいつの解体手伝うよ」

「あ、ありがとう」

突然の申し出に困惑するも、アラッドが悪い人間ではないと解っているため、ありがたく手を借りた。

「そういえばさ、オルフェンは今度開催されるニ十歳以下の若者だけが参加出来るトーナメントに参加するのか?」

アラッドとしては、また戦える機会があるなら、それはそれで楽しみ。
スティームとしては少し嫌だな~という気持ちがありながらも、同世代の強者と本気で戦える良いチャンス。

「えっと、俺はその戦いには参加しないよ。というか……二人はあのトーナメントに参加するの?」

「俺は十五歳で、スティームは十八歳だからな。全く問題無いだろ」

「うん、それはそうなんだけど……あっ、でも二人とも確か貴族の令息、なんだよね」

「一応な。別に次期当主とか次期当主がなくなった時のスペアとかじゃないから、そんな偉い立場の人間じゃないけどな」

「僕も似た様な感じだよ」

本人達にとってはそうであっても、オルフェンからすればとりあえず偉い人? という認識だった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...