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五百四話 一つの槍となって
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「あれ、でも待ってください。クスリを渡す人物は……若者に絞られてるん、ですよね」
「そうだね。他にアラッド君が関わってない件が数件あるんだけど、クスリを使用して暴走した人物は全員ニ十歳以以下の青年たちだ」
「…………えっと、それならもしかして……他国が、関わってるんじゃないかと」
スティームの言葉にアラッドと騎士の表情が強張る。
「無差別にバラまかれてるならともかく、ニ十歳以下の将来有望であろう青年だけに渡してるとなると、将来的に国の戦力になる者たちを潰してるのかなと思って」
「……あながち、間違ってはいないな。貴族がそういうクスリを使用したとなったら、家の恥として監禁……もしくは秘密裏に処理されてもおかしくない」
「そうだね。そういうケースが殆どだから……そう考えると、どこかのクソ鬼畜野郎の娯楽って訳ではないのかもしれないね」
全くあり得ない可能性の話に、先程までところどころあった和やかな雰囲気が消えた。
「…………戦争、ってことになりますかね」
「最悪の場合、そうなるね」
頭が痛いとはまさにこのこと。
アルバス王国の国民ではないスティームも頭が痛い。
「仮にそれらしい証拠が見つかったとして、その国に証拠を突き付けて……簡単に認めるとは思えないからね~」
「一部の馬鹿が勝手に暴走した。そういった理由で白を切るってところですか」
「そうなる可能性が高いだろうね。アルバス王国としても、今は資源を欲したりしてないから、戦争したいと思う上の人たちも少ない筈だから……出来れば避けたいところだよね」
「そうですね。戦争が起こらないに越したことはありません。ただ、嫉妬心に付け込まれてクスリを使ってしまった人たちの親は納得しませんよね」
「そうなるよね~~~」
子供たちがクスリを使ってしまった理由は……さておき、その件に関しても元を辿れば……そういうクスリを心の弱さに付け込んで渡そうとしてきた連中が悪い、というのは間違ってはいない。
「……仮に戦争が起こったら、俺も参加しないといけませんね」
「いや、その……あれだよ。アラッド君はまだまだこれから伸びる逸材で、アルバス王国にとって欠かせない存在になる。だから、無理に参加する必要はないというか……上の人たちも絶対に了承するとは限らないと思うん、だよね」
「…………戦争後、戦力不足を狙われない様にするのは大事だと思います。それは解っていますが……それとこれとでは話が別です」
「ッ!!!」
既に解っていた。
解っていた事ではあるが……目の前の覚悟を決めた青年の眼を見て、改めて彼は既に戦士なのだと思い知らされる。
「正直、嫌ですよ。戦争が起これば、罪もない人達を殺すことになる」
「アラッド……」
「でも、俺が参加してたら助けられてた命があると思うと、参加しない訳にはいきません」
騎士は目の前の青年の心構えに感服した。
(まだ彼は十五歳なのだろう…………全く、彼ならと思ってしまうのは良くないね)
アラッドの功績を耳にしているからこそ「彼が参加すれば……」という思いが浮かんでしまい、まだ二十も越えていない青年の力を頼りにする心の弱さを恥じた。
「……もしかしたらなんだけどさ、仮に戦争が起きたとしても、その形によっては直ぐに終わらせられるんじゃないかな」
「? どういう事だ、スティーム」
「お互いの王国まで攻める侵略戦争でない限り、互いに大将を決めて戦うでしょ。それなら、最速でその大将さえ確保してしまえば、もしかしたら一日で終わらせられるかもしれないと思うんだ」
「………………クロか」
何を根拠にそんな夢に近い話をしているのかと考え込むが、割と直ぐその根拠を理解した。
「そうだよ。普通に考えて、クロが全速力で走れば脚力に優れた人たちでも容易に追いつけないよね」
「えっと、クロって言うのはアラッド君の従魔のことで合ってるかな」
「はい、そういう認識で合ってます。ちなみにAランクなので、脚は超速いです」
加えて、モンスターであってもマジックアイテムを装備することは可能。
クロが最高クラスの脚力強化系のマジックアイテムを装備すれば……今しがたスティームが提案した内容が成功する確率は跳ね上がる。
「……でも、そうなると大将を守る多くの敵をアラッド君とクロ君? だけで相手しなければならないことになるよね」
当然のことながら、戦場の王を守る銀や金は非常に強い。
いくらアラッドが飛び抜けた戦闘力を持つ戦闘者と言えど、王を守る鉄壁たちは歴戦の猛者。
戦闘経験の数だけなら、間違いなくアラッドよりも上である。
「そうなんですよね……となると、脚力に優れた者たちがアラッドの周囲を守る様に走って、こう……一つの槍として突き進む、とか?」
「「…………」」
頭の中でイメージを浮かべるアラッドと騎士。
アルバス王国とはあまり関係無い冒険者が出した答えは、意外にも悪くない案だった。
(すれ違う敵たちには拡散する糸の爆弾でも放って、数秒でも動きを封じられれば、そのまま突き放せる、か……うん、悪くないな)
出来ることなら、避けたくはある。
だが、今の内から万が一に対して考えるに越したことはなかった。
「そうだね。他にアラッド君が関わってない件が数件あるんだけど、クスリを使用して暴走した人物は全員ニ十歳以以下の青年たちだ」
「…………えっと、それならもしかして……他国が、関わってるんじゃないかと」
スティームの言葉にアラッドと騎士の表情が強張る。
「無差別にバラまかれてるならともかく、ニ十歳以下の将来有望であろう青年だけに渡してるとなると、将来的に国の戦力になる者たちを潰してるのかなと思って」
「……あながち、間違ってはいないな。貴族がそういうクスリを使用したとなったら、家の恥として監禁……もしくは秘密裏に処理されてもおかしくない」
「そうだね。そういうケースが殆どだから……そう考えると、どこかのクソ鬼畜野郎の娯楽って訳ではないのかもしれないね」
全くあり得ない可能性の話に、先程までところどころあった和やかな雰囲気が消えた。
「…………戦争、ってことになりますかね」
「最悪の場合、そうなるね」
頭が痛いとはまさにこのこと。
アルバス王国の国民ではないスティームも頭が痛い。
「仮にそれらしい証拠が見つかったとして、その国に証拠を突き付けて……簡単に認めるとは思えないからね~」
「一部の馬鹿が勝手に暴走した。そういった理由で白を切るってところですか」
「そうなる可能性が高いだろうね。アルバス王国としても、今は資源を欲したりしてないから、戦争したいと思う上の人たちも少ない筈だから……出来れば避けたいところだよね」
「そうですね。戦争が起こらないに越したことはありません。ただ、嫉妬心に付け込まれてクスリを使ってしまった人たちの親は納得しませんよね」
「そうなるよね~~~」
子供たちがクスリを使ってしまった理由は……さておき、その件に関しても元を辿れば……そういうクスリを心の弱さに付け込んで渡そうとしてきた連中が悪い、というのは間違ってはいない。
「……仮に戦争が起こったら、俺も参加しないといけませんね」
「いや、その……あれだよ。アラッド君はまだまだこれから伸びる逸材で、アルバス王国にとって欠かせない存在になる。だから、無理に参加する必要はないというか……上の人たちも絶対に了承するとは限らないと思うん、だよね」
「…………戦争後、戦力不足を狙われない様にするのは大事だと思います。それは解っていますが……それとこれとでは話が別です」
「ッ!!!」
既に解っていた。
解っていた事ではあるが……目の前の覚悟を決めた青年の眼を見て、改めて彼は既に戦士なのだと思い知らされる。
「正直、嫌ですよ。戦争が起これば、罪もない人達を殺すことになる」
「アラッド……」
「でも、俺が参加してたら助けられてた命があると思うと、参加しない訳にはいきません」
騎士は目の前の青年の心構えに感服した。
(まだ彼は十五歳なのだろう…………全く、彼ならと思ってしまうのは良くないね)
アラッドの功績を耳にしているからこそ「彼が参加すれば……」という思いが浮かんでしまい、まだ二十も越えていない青年の力を頼りにする心の弱さを恥じた。
「……もしかしたらなんだけどさ、仮に戦争が起きたとしても、その形によっては直ぐに終わらせられるんじゃないかな」
「? どういう事だ、スティーム」
「お互いの王国まで攻める侵略戦争でない限り、互いに大将を決めて戦うでしょ。それなら、最速でその大将さえ確保してしまえば、もしかしたら一日で終わらせられるかもしれないと思うんだ」
「………………クロか」
何を根拠にそんな夢に近い話をしているのかと考え込むが、割と直ぐその根拠を理解した。
「そうだよ。普通に考えて、クロが全速力で走れば脚力に優れた人たちでも容易に追いつけないよね」
「えっと、クロって言うのはアラッド君の従魔のことで合ってるかな」
「はい、そういう認識で合ってます。ちなみにAランクなので、脚は超速いです」
加えて、モンスターであってもマジックアイテムを装備することは可能。
クロが最高クラスの脚力強化系のマジックアイテムを装備すれば……今しがたスティームが提案した内容が成功する確率は跳ね上がる。
「……でも、そうなると大将を守る多くの敵をアラッド君とクロ君? だけで相手しなければならないことになるよね」
当然のことながら、戦場の王を守る銀や金は非常に強い。
いくらアラッドが飛び抜けた戦闘力を持つ戦闘者と言えど、王を守る鉄壁たちは歴戦の猛者。
戦闘経験の数だけなら、間違いなくアラッドよりも上である。
「そうなんですよね……となると、脚力に優れた者たちがアラッドの周囲を守る様に走って、こう……一つの槍として突き進む、とか?」
「「…………」」
頭の中でイメージを浮かべるアラッドと騎士。
アルバス王国とはあまり関係無い冒険者が出した答えは、意外にも悪くない案だった。
(すれ違う敵たちには拡散する糸の爆弾でも放って、数秒でも動きを封じられれば、そのまま突き放せる、か……うん、悪くないな)
出来ることなら、避けたくはある。
だが、今の内から万が一に対して考えるに越したことはなかった。
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