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五百八十四話 どちらを取る?
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(どう……すべきなんだろう)
スティームは固まってしまった。
木竜にはただ、少し気になっただけと答えたが、バチバチに気になっていた。
(最後に、ドラゴンに挑んだということは……これは、確実に……グリフィス様のバスターソード)
グリフィス・ハルドナー。
公爵家出身の騎士であり、英雄と呼ばれた戦闘者。
指導者としても優れており、第一線を退いた後も国の為にと動き続けた。
そんな男は……病に侵された家族を助ける為に、一人Aランクドラゴンの魔石を求めて手に入れた情報を頼りに……老体に鞭を打って旅立った。
(今、ここに……あのグリフィス様のバスターソードが、ある……………どうする、どうする!!!???)
木竜は対価を支払うと言った。
間違いなくそう宣言し、どの宝物は選んではいけないとも言われていない。
つまり、自身の戦闘スタイルに合わない武器を選んでも問題はない。
(木竜殿は……自分が改めてドラゴンという生き物だと思い出せてくれる、熱い戦いだと、仰った……それを伝えて、これも渡せば……)
ハルドナー公爵家はグリフィスが亡くなったからといって失墜はしておらず、今でも公爵家としての地位を保ち続けている。
それなりの騎士は輩出されているが……ある世代の者たちは口を揃えて「グリフィスには及ばない」と宣言する。
(…………このバスターソードを渡して、木竜殿の言葉を伝えれば色々と信じてくれる…………でも、そうしたら……ハルドナー公爵家はどう動く?)
もう、子供ではない。
自身の行動が、どういった影響を及ぼすのか想像が付かないほど幼くはない。
ハルドナー公爵家に、グリフィスが亡くなった経緯を伝えればどうなるか…………脳裏に浮かんだイメージは、最悪の光景だった。
(……それは、駄目だ)
間違いなく、グリフィス・ハルドナーを殺したのは直ぐ傍に居る木竜。
全てを伝えれば……どうなる?
木竜からすれば、自身の命を脅かす危機を全力で振り払っただけ。
自分の命を守った……ただそれだけであり、全く悪いことはしてない。
だが、それは木竜の考え。
ハルドナー公爵家の人間からすれば……命を奪おうとしたんだから、仕方ないよな……と、そう簡単に納得ではできない。
命を落とした戦いが他国との戦争であれば……まだ納得出来たかもしれない。
しかし…………英雄を殺した相手は、間違いなくドラゴン……知性を持っていようと、人の言葉を喋れようとも……モンスターという存在であることは変わらない。
(それだけは、駄目だ。今……アルバース王国とゴリディア帝国が戦争を行うかもしれないというのに、それは……駄目だ……嫌だ)
今……この事実を伝えれば、スティームとディックスの祖国は……ゴリディア帝国に手を貸すかもしれない。
最悪の場合、一時的な同盟を結び……共にアルバース王国を攻めるかもしれない。
そうなれば……アラッドと殺し合わなければならないかもしれない。
それだけは、嫌だった。
(でも……この、大剣は…………)
ハルドナー家の家紋が記された大剣に再び視線を向け……思わず、右手が伸びそうになる。
「っ…………」
天秤に掛ける。
貴族としての使命か、これから失われるかもしれない命を少しでも減らし……友情を取るか。
…………本来であれば、今は冒険者として活動しているとはいえ、貴族としての使命を果たすべきなのだが……それが、争いの火種になる可能性は非常に高い。
理不尽であり、妥当な理由になっていない?
英雄を……家族を奪われた者たちの心というのは、得てして正常な判断が出来なくなってしまうもの。
グリフィスはまだその話を何度も聞いてきたというだけに留まるが、ホットル王国にはまだグリフィスの同期だった人物立ち、子孫たち……彼を慕っていた騎士たちが多くいる。
(…………このバスターソードは、見なかった。ハルドナー公爵家の家紋が入ったバスターソードなんて……僕は、見なかった)
スティームは無理矢理視線を切り、他の宝物に目を向けて頂ける品選びを再開させた。
(ふむ…………もしや、スティームはあの騎士の血縁者だったのか?)
スティームがバスターソードの前で悩みに悩んでいたところを……木竜は後ろからバッチリと見ていた。
(いや、しかしそれなら……ほんの少し、ほんの一瞬でもその身から恨みや殺気が零れてもおかしくない。ただ……ただただ悲痛な表情を浮かべていたな)
解らない……正確な部分が解らない。
何故……スティームがあそこまで渋く、苦い顔を浮かべたのか解らない。
(さすがに死んでくれと言われても死ねないが……ともかく、あのバスターソードを持っていた騎士とのなんらかの関係性はあるのだろうな)
木竜としては、グリフィス・ハルドナーとの戦いで手に入れた戦利品は……かなり気に入っていた。
あの時木竜は……グリフィスに対して怒りの感情を持っていないにも関わらず、逆鱗が発動した。
何が何でも目の前の人間を打ち勝つと……それ以外の思考が頭からすっぽ抜けた。
そんな激闘、死闘を乗り越えて得た戦利品ということもあり、手放したくないランキング上位に入っている。
ただ、やはりスティームの苦悩が完全に表に現れた顔が脳裏から離れなかった。
スティームは固まってしまった。
木竜にはただ、少し気になっただけと答えたが、バチバチに気になっていた。
(最後に、ドラゴンに挑んだということは……これは、確実に……グリフィス様のバスターソード)
グリフィス・ハルドナー。
公爵家出身の騎士であり、英雄と呼ばれた戦闘者。
指導者としても優れており、第一線を退いた後も国の為にと動き続けた。
そんな男は……病に侵された家族を助ける為に、一人Aランクドラゴンの魔石を求めて手に入れた情報を頼りに……老体に鞭を打って旅立った。
(今、ここに……あのグリフィス様のバスターソードが、ある……………どうする、どうする!!!???)
木竜は対価を支払うと言った。
間違いなくそう宣言し、どの宝物は選んではいけないとも言われていない。
つまり、自身の戦闘スタイルに合わない武器を選んでも問題はない。
(木竜殿は……自分が改めてドラゴンという生き物だと思い出せてくれる、熱い戦いだと、仰った……それを伝えて、これも渡せば……)
ハルドナー公爵家はグリフィスが亡くなったからといって失墜はしておらず、今でも公爵家としての地位を保ち続けている。
それなりの騎士は輩出されているが……ある世代の者たちは口を揃えて「グリフィスには及ばない」と宣言する。
(…………このバスターソードを渡して、木竜殿の言葉を伝えれば色々と信じてくれる…………でも、そうしたら……ハルドナー公爵家はどう動く?)
もう、子供ではない。
自身の行動が、どういった影響を及ぼすのか想像が付かないほど幼くはない。
ハルドナー公爵家に、グリフィスが亡くなった経緯を伝えればどうなるか…………脳裏に浮かんだイメージは、最悪の光景だった。
(……それは、駄目だ)
間違いなく、グリフィス・ハルドナーを殺したのは直ぐ傍に居る木竜。
全てを伝えれば……どうなる?
木竜からすれば、自身の命を脅かす危機を全力で振り払っただけ。
自分の命を守った……ただそれだけであり、全く悪いことはしてない。
だが、それは木竜の考え。
ハルドナー公爵家の人間からすれば……命を奪おうとしたんだから、仕方ないよな……と、そう簡単に納得ではできない。
命を落とした戦いが他国との戦争であれば……まだ納得出来たかもしれない。
しかし…………英雄を殺した相手は、間違いなくドラゴン……知性を持っていようと、人の言葉を喋れようとも……モンスターという存在であることは変わらない。
(それだけは、駄目だ。今……アルバース王国とゴリディア帝国が戦争を行うかもしれないというのに、それは……駄目だ……嫌だ)
今……この事実を伝えれば、スティームとディックスの祖国は……ゴリディア帝国に手を貸すかもしれない。
最悪の場合、一時的な同盟を結び……共にアルバース王国を攻めるかもしれない。
そうなれば……アラッドと殺し合わなければならないかもしれない。
それだけは、嫌だった。
(でも……この、大剣は…………)
ハルドナー家の家紋が記された大剣に再び視線を向け……思わず、右手が伸びそうになる。
「っ…………」
天秤に掛ける。
貴族としての使命か、これから失われるかもしれない命を少しでも減らし……友情を取るか。
…………本来であれば、今は冒険者として活動しているとはいえ、貴族としての使命を果たすべきなのだが……それが、争いの火種になる可能性は非常に高い。
理不尽であり、妥当な理由になっていない?
英雄を……家族を奪われた者たちの心というのは、得てして正常な判断が出来なくなってしまうもの。
グリフィスはまだその話を何度も聞いてきたというだけに留まるが、ホットル王国にはまだグリフィスの同期だった人物立ち、子孫たち……彼を慕っていた騎士たちが多くいる。
(…………このバスターソードは、見なかった。ハルドナー公爵家の家紋が入ったバスターソードなんて……僕は、見なかった)
スティームは無理矢理視線を切り、他の宝物に目を向けて頂ける品選びを再開させた。
(ふむ…………もしや、スティームはあの騎士の血縁者だったのか?)
スティームがバスターソードの前で悩みに悩んでいたところを……木竜は後ろからバッチリと見ていた。
(いや、しかしそれなら……ほんの少し、ほんの一瞬でもその身から恨みや殺気が零れてもおかしくない。ただ……ただただ悲痛な表情を浮かべていたな)
解らない……正確な部分が解らない。
何故……スティームがあそこまで渋く、苦い顔を浮かべたのか解らない。
(さすがに死んでくれと言われても死ねないが……ともかく、あのバスターソードを持っていた騎士とのなんらかの関係性はあるのだろうな)
木竜としては、グリフィス・ハルドナーとの戦いで手に入れた戦利品は……かなり気に入っていた。
あの時木竜は……グリフィスに対して怒りの感情を持っていないにも関わらず、逆鱗が発動した。
何が何でも目の前の人間を打ち勝つと……それ以外の思考が頭からすっぽ抜けた。
そんな激闘、死闘を乗り越えて得た戦利品ということもあり、手放したくないランキング上位に入っている。
ただ、やはりスティームの苦悩が完全に表に現れた顔が脳裏から離れなかった。
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