スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
594 / 1,361

五百九十三話 無駄に出来ない

しおりを挟む
「……なぁ、スティーム。こいつは……俺たちだけで、戦らせてくれないか」

つい、言葉が零れた。
どうしようもない戦闘欲を抑えられず、元々分けて戦おうと伝えていた筈なのに……我儘な本音が零れてしまった。

「…………ふぅ~~~、仕方ないね。普通の火竜なら譲れないところだったけど、Aランクが相手だと、ね……でも、次は僕たちが戦えそうな相手を優先的に探すからね」

「あぁ、勿論だ」

スティームとて、恐怖心はありながらも、目の前のドラゴンと戦いたいという思いはある。
アラッドと同じく戦闘欲はあるのだが、成体の雷獣戦がリプレイされるイメージしか浮かばない。

アラッド、クロとファルが最前線で戦い、要所要所で……もしくは最後の一撃を決める。
それだけしか仕事が……出来る事がない。

それが解かっていながら、まさしく怪物同士の戦いに割って入りたい……それはそれで、邪魔になる我儘だと、理解していた。

「ま、待ってくれ!!!」

「……悪いが、待たない。俺は、あんた達水蓮と揉めたくない、実家と悪縁を持たれたくないから、そこら辺の事情を無視して挑まなかった」

正確に……正確に言えば、アラッドたちが先に二体の火竜に挑んではいけないという、絶対に破れない縛りなどはなかった。

それでもアラッドは、迷惑を掛けてしまう我儘を優先はしなかった。

「何があってこうなったのかは知らない。ただ……ここからは俺の時間だ。巻き込まれて死にたくなかったら、下がっててくれ」

追い付いた水蓮のメンバーたちは、持ってきていたポーションなどを使い尽くし、傷は癒えていた。

だが、傷は癒えても体力、気力までは回復しきっていない。
下手に介入しようとすれば、命の保証はなかった。

「すまない、待たせてしまった」

「…………」

「見たところ、その佇まい程の余裕はないだろう」

「…………」

Aランクに進化したこともあって、知能もレベルアップした轟炎竜は目の前の人間の言葉が、おおよそ解っていた。

「安心してほしい。くだらない真似をするつもりはない。ただ、全力をぶつけ合おう」

「…………ゴォォォォォオオオオァアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!」

轟炎竜を喜びの咆哮を上げた。

敵は一人だけではなく、後方の巨狼も含まれている。
Aランクという、正真正銘……怪物と呼ばれる者たちの領域に達したからこそ、より深く解る。

人間一人が相手でもリスクはある。
そこに巨狼が加われば、間違いなく自分は死ぬ。

上がった知能と本能、両方が訴えかけたが……竜のプライドが、野性がそれを振り払った。

(っ!!!!! 燃え滾らせて、くれるじゃないか!!!!!)

轟炎竜が放った方向には……純粋な竜としてのプライドに加えてアラッドとクロに対する敬意が含まれていた。

アラッドが口にした通り、今まで一緒に暴れ回ってきた同族を食らい、上の次元に登ることが出来た。
そのお陰で傷は癒えた……しかし、水蓮のメンバーと同じく、体力と気力までは回復していなかった。

「ッシャァァァアアアアアアアアッ!!!!!」

「グルルゥアアアアアッ!!!!!」

先程宣言した通り、アラッドはくだらない真似をするつもりは一切ない。

開始直後から強化系スキルと狂化を同時に使用。
クロも同じく自身を強化し、闇の魔力を全身に纏った。

アラッドは渦雷を抜剣し、文字通り最初からクライマックス状態で挑む。

「ギィイイイアアアアアッ!!!!!」

開幕から数秒後に放たれたブレスは火竜の時と比べ、格段に熱さが増しており、範囲も広い。

「ファル!!!!」

ファルは主人の言葉に乗せられた意図を正確に読み取り、全力で翼を扇いだ。

アリファが熱を食らえることを考えれば、そこまで全て対応しなくても良いのだが、スティームも彼女たちが万全ではないことは把握していた。

(これで、まだ多分本気じゃない……Aランクに成り立てとはいえ、まさに災害だ)

悔しさがこみ上げてくる。

今の自分の実力では……本当の意味で戦いに加わることは出来ない。
それが解かっているからこそ、自身の我儘を押し通さなかった……もっと言えば、我儘を押し通す力がなかった。

仕方ない。

そんな言葉で納得出来ないが、納得しなければならない。
だからこそ、スティームは目の前で繰り広げられる攻防……特に轟炎竜の動きに注視し続けた。

今の攻撃、自分ならどう捌くか。
あの攻撃をどう避け、どういったカウンターを叩き込むか。

今の自分では対処しきれない攻撃だと判断すれば、どう成長すれば対処出来るかを考える。

目の前の光景から得られる情報を全て無駄にしたくない。
その姿勢は……紛れもなく、成長という名の壁を上っているのだと……後ろの者たちに解らせた。

解らせたが、彼らが全員その姿勢を理解出来たか否かは別だった。


努力出来るのも才能。


中々に意見が別れる内容である。
確かに人には才能という成長するのに大きな要素である。

だが、成長という現象に欠かせない行動に、努力という要素もある。

互いに意味が違う言葉である。

そんな努力という目に見えるものは……目に見えない才能という要素の一部なのか?

冒険者の様に、上に登るには何かしらの努力は欠かせない職業に就いている彼ら。
努力と才能は別物だと割り切り、ここまで登ってきたが……目の前で行われている激闘は、そんな彼らに努力出来るのも……才の一つなのではないかと思わせるほど、常識から外れたものだった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...