スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
609 / 1,361

六百八話 責任を取れるのか?

しおりを挟む
「ソルヴァイパーを狙っているなら、どれだけ逃げ足が速いかを知ってるよね」

「えぇ、勿論です」

本日、実際にどれだけ速いのかを体感。
本気で追いかける気がなかったとはいえ、圧倒的な速さに驚かされた。

「倒すことよりも逃がさないことが重要なんだ。ただ強ければ倒せるわけではない」

「数が揃っていなければ、あと一歩のところまで追い詰められても逃げられてしまう可能性があると……そういう事ですね」

「解っているじゃないか。流石だね」

そんな事、少し考えれば誰でも解るに決まってんだろ、適当におだててご機嫌取ろうとしてんじゃねぇぞ。

と言いたいところだったが、グッと堪えて我慢。
あくまで向こうは自分のことを褒めてくれている。
ここで牙をむく様な発言するのは、さすがにナンセンスだった。

「最大のメリットはそこだよ。君たちも、折角追い込むことが出来たのに、取り逃がすなんて悔しい真似はしたくないだろう」

(これは……俺たちなら二人だけでも、ソルヴァイパーを追い詰めることが出来るとは評価されてる……と考えていいのか?)

本当にこちらを評価している。
そう思うと悪い気はしない。

しかし……評価してくれているとはいえ、それなら手を組んでも良いかな? とは思わない。

「そうですね……ただ、それだけならそのお誘いには乗れません」

「っ……どうしてかな」

ここが、この会話の鬼門であった。

まず、レストを慕う者たちの怒りが更に溜まり、テーブルの下で拳を震わせていた。
まだそういった感情をコントロール出来る者がいなければ、速攻で殴り合いが始まっていたかもしれない。

そして何故レストからの誘いに乗れないのか……これに対し、アラッドの正直な答えは自分たちはスティームとファルだけでソルヴァイパーを挑むために来たから、である。

決してそれは冒険者らしからぬ答えではなく、寧ろ強者に挑むためにソルヴァイパーを選んだとなれば、とりあえず同業者たちは笑って応援するだろう。
本当にスティームとファルがソルヴァイパーに勝てるかどうかは置いておき、そういった漢気を嫌う者は少ない。

だが……今回は色々と事情がある。
ソルヴァイパーの心臓という素材がなければ、侯爵家の令嬢が亡くなってしまう。
その為に、というのが本音ではない冒険者もいるが、建前はその為にソルヴァイパーを探している冒険者たちが殆ど。

加えて、侯爵家に仕える騎士たちも独自に捜索を行っている。

そんな中……ただ強者と戦う為だけにソルヴァイパーを選び、倒そうとしている。
建前を隠さずにそれを口にしてしまうと、少なからず批判が集まる。

アラッドとスティームが貴族の令息であることを考えれば、他の冒険者が本音を零す以上に批判が集まってしまう。

(……面倒だが、仕方ない、か)

そういうものだと割り切るしかない。
アラッドはゆっくりと口を開き、答えを伝えた。

「レストさんたちと戦った場合、巻き込んでしまう可能性があるので」

「…………ねぇ、あんた。私たちに喧嘩売ってんの」

巻き込んでしまう可能性があるから、一緒に戦う事は出来ない。
この言葉から、よっぽど馬鹿でなければアラッドが本当は何を言いたいのか読み取れる。

そしてこの場に、その意図を読み取れない者はいなかった。

「そう捉えられてもおかしくはないとは思っています。ただ、俺はとりあえず全ての武器を使って戦うとなると自分以外に三人……増えても四人か五人。そこまでしかそこまで意識しなくても当たらないように攻撃するのが限界なんです。レストさんたちと組むと、どうしても間違いが起こってしまうというか…………正直、窮屈な戦い方をするのも嫌という思いがあります」

そもそもアラッドはソルヴァイパーと戦うつもりがない。

この場でそれを知っているのはスティームだけだが、スティームはアラッドなりの考えがあって喋ってるのだと理解している為、空気を読んで変に喋らなかった。

「窮屈な戦い方はしたくない、か……それは、スティーム君も同じなのかな」

「スティームは雷をメインに戦います。最大火力の攻撃に触れた場合、魔力を纏っていたとしても、被害を受けてしまう可能性はあります」

一応、間違ったことは言っていない。

スティームの最大火力……万雷を使い、赤雷を使用して幾千の雷を落せば……完全に避けられなければ、死なずとも焼かれてしまう可能性が高い。

(……この眼、多分嘘ではないようだね)

元々手に入れた情報から、二人がただのスーパールーキーではないことは解っていた。
だが、レストとしてもそう簡単に引き下がる訳にはいかない。

しかしアラッドの「だから無理なんですよ」説明は止まらない。

「それに、うちには頼れる相棒たちがいます。クロとファルは……モンスターですが、一応手加減は出来ます。とはいえ、その精度は俺たちより落ちます。俺としては……そういった思いを背負わせたくない。俺たちならまだしも、それだけは避けたい」

もしそんな事故が起きれば、それから先の行動に、戦闘に確実に影響が出る。

まだ実際に互いの戦いぶりを見せていないのに……と言いたいところだが、中々痛いところを突かれた状態。
何か言葉を出そうとしていたレストは口を閉じ、グッと飲み込むしかなかった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...