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六百八話 責任を取れるのか?
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「ソルヴァイパーを狙っているなら、どれだけ逃げ足が速いかを知ってるよね」
「えぇ、勿論です」
本日、実際にどれだけ速いのかを体感。
本気で追いかける気がなかったとはいえ、圧倒的な速さに驚かされた。
「倒すことよりも逃がさないことが重要なんだ。ただ強ければ倒せるわけではない」
「数が揃っていなければ、あと一歩のところまで追い詰められても逃げられてしまう可能性があると……そういう事ですね」
「解っているじゃないか。流石だね」
そんな事、少し考えれば誰でも解るに決まってんだろ、適当におだててご機嫌取ろうとしてんじゃねぇぞ。
と言いたいところだったが、グッと堪えて我慢。
あくまで向こうは自分のことを褒めてくれている。
ここで牙をむく様な発言するのは、さすがにナンセンスだった。
「最大のメリットはそこだよ。君たちも、折角追い込むことが出来たのに、取り逃がすなんて悔しい真似はしたくないだろう」
(これは……俺たちなら二人だけでも、ソルヴァイパーを追い詰めることが出来るとは評価されてる……と考えていいのか?)
本当にこちらを評価している。
そう思うと悪い気はしない。
しかし……評価してくれているとはいえ、それなら手を組んでも良いかな? とは思わない。
「そうですね……ただ、それだけならそのお誘いには乗れません」
「っ……どうしてかな」
ここが、この会話の鬼門であった。
まず、レストを慕う者たちの怒りが更に溜まり、テーブルの下で拳を震わせていた。
まだそういった感情をコントロール出来る者がいなければ、速攻で殴り合いが始まっていたかもしれない。
そして何故レストからの誘いに乗れないのか……これに対し、アラッドの正直な答えは自分たちはスティームとファルだけでソルヴァイパーを挑むために来たから、である。
決してそれは冒険者らしからぬ答えではなく、寧ろ強者に挑むためにソルヴァイパーを選んだとなれば、とりあえず同業者たちは笑って応援するだろう。
本当にスティームとファルがソルヴァイパーに勝てるかどうかは置いておき、そういった漢気を嫌う者は少ない。
だが……今回は色々と事情がある。
ソルヴァイパーの心臓という素材がなければ、侯爵家の令嬢が亡くなってしまう。
その為に、というのが本音ではない冒険者もいるが、建前はその為にソルヴァイパーを探している冒険者たちが殆ど。
加えて、侯爵家に仕える騎士たちも独自に捜索を行っている。
そんな中……ただ強者と戦う為だけにソルヴァイパーを選び、倒そうとしている。
建前を隠さずにそれを口にしてしまうと、少なからず批判が集まる。
アラッドとスティームが貴族の令息であることを考えれば、他の冒険者が本音を零す以上に批判が集まってしまう。
(……面倒だが、仕方ない、か)
そういうものだと割り切るしかない。
アラッドはゆっくりと口を開き、答えを伝えた。
「レストさんたちと戦った場合、巻き込んでしまう可能性があるので」
「…………ねぇ、あんた。私たちに喧嘩売ってんの」
巻き込んでしまう可能性があるから、一緒に戦う事は出来ない。
この言葉から、よっぽど馬鹿でなければアラッドが本当は何を言いたいのか読み取れる。
そしてこの場に、その意図を読み取れない者はいなかった。
「そう捉えられてもおかしくはないとは思っています。ただ、俺はとりあえず全ての武器を使って戦うとなると自分以外に三人……増えても四人か五人。そこまでしかそこまで意識しなくても当たらないように攻撃するのが限界なんです。レストさんたちと組むと、どうしても間違いが起こってしまうというか…………正直、窮屈な戦い方をするのも嫌という思いがあります」
そもそもアラッドはソルヴァイパーと戦うつもりがない。
この場でそれを知っているのはスティームだけだが、スティームはアラッドなりの考えがあって喋ってるのだと理解している為、空気を読んで変に喋らなかった。
「窮屈な戦い方はしたくない、か……それは、スティーム君も同じなのかな」
「スティームは雷をメインに戦います。最大火力の攻撃に触れた場合、魔力を纏っていたとしても、被害を受けてしまう可能性はあります」
一応、間違ったことは言っていない。
スティームの最大火力……万雷を使い、赤雷を使用して幾千の雷を落せば……完全に避けられなければ、死なずとも焼かれてしまう可能性が高い。
(……この眼、多分嘘ではないようだね)
元々手に入れた情報から、二人がただのスーパールーキーではないことは解っていた。
だが、レストとしてもそう簡単に引き下がる訳にはいかない。
しかしアラッドの「だから無理なんですよ」説明は止まらない。
「それに、うちには頼れる相棒たちがいます。クロとファルは……モンスターですが、一応手加減は出来ます。とはいえ、その精度は俺たちより落ちます。俺としては……そういった思いを背負わせたくない。俺たちならまだしも、それだけは避けたい」
もしそんな事故が起きれば、それから先の行動に、戦闘に確実に影響が出る。
まだ実際に互いの戦いぶりを見せていないのに……と言いたいところだが、中々痛いところを突かれた状態。
何か言葉を出そうとしていたレストは口を閉じ、グッと飲み込むしかなかった。
「えぇ、勿論です」
本日、実際にどれだけ速いのかを体感。
本気で追いかける気がなかったとはいえ、圧倒的な速さに驚かされた。
「倒すことよりも逃がさないことが重要なんだ。ただ強ければ倒せるわけではない」
「数が揃っていなければ、あと一歩のところまで追い詰められても逃げられてしまう可能性があると……そういう事ですね」
「解っているじゃないか。流石だね」
そんな事、少し考えれば誰でも解るに決まってんだろ、適当におだててご機嫌取ろうとしてんじゃねぇぞ。
と言いたいところだったが、グッと堪えて我慢。
あくまで向こうは自分のことを褒めてくれている。
ここで牙をむく様な発言するのは、さすがにナンセンスだった。
「最大のメリットはそこだよ。君たちも、折角追い込むことが出来たのに、取り逃がすなんて悔しい真似はしたくないだろう」
(これは……俺たちなら二人だけでも、ソルヴァイパーを追い詰めることが出来るとは評価されてる……と考えていいのか?)
本当にこちらを評価している。
そう思うと悪い気はしない。
しかし……評価してくれているとはいえ、それなら手を組んでも良いかな? とは思わない。
「そうですね……ただ、それだけならそのお誘いには乗れません」
「っ……どうしてかな」
ここが、この会話の鬼門であった。
まず、レストを慕う者たちの怒りが更に溜まり、テーブルの下で拳を震わせていた。
まだそういった感情をコントロール出来る者がいなければ、速攻で殴り合いが始まっていたかもしれない。
そして何故レストからの誘いに乗れないのか……これに対し、アラッドの正直な答えは自分たちはスティームとファルだけでソルヴァイパーを挑むために来たから、である。
決してそれは冒険者らしからぬ答えではなく、寧ろ強者に挑むためにソルヴァイパーを選んだとなれば、とりあえず同業者たちは笑って応援するだろう。
本当にスティームとファルがソルヴァイパーに勝てるかどうかは置いておき、そういった漢気を嫌う者は少ない。
だが……今回は色々と事情がある。
ソルヴァイパーの心臓という素材がなければ、侯爵家の令嬢が亡くなってしまう。
その為に、というのが本音ではない冒険者もいるが、建前はその為にソルヴァイパーを探している冒険者たちが殆ど。
加えて、侯爵家に仕える騎士たちも独自に捜索を行っている。
そんな中……ただ強者と戦う為だけにソルヴァイパーを選び、倒そうとしている。
建前を隠さずにそれを口にしてしまうと、少なからず批判が集まる。
アラッドとスティームが貴族の令息であることを考えれば、他の冒険者が本音を零す以上に批判が集まってしまう。
(……面倒だが、仕方ない、か)
そういうものだと割り切るしかない。
アラッドはゆっくりと口を開き、答えを伝えた。
「レストさんたちと戦った場合、巻き込んでしまう可能性があるので」
「…………ねぇ、あんた。私たちに喧嘩売ってんの」
巻き込んでしまう可能性があるから、一緒に戦う事は出来ない。
この言葉から、よっぽど馬鹿でなければアラッドが本当は何を言いたいのか読み取れる。
そしてこの場に、その意図を読み取れない者はいなかった。
「そう捉えられてもおかしくはないとは思っています。ただ、俺はとりあえず全ての武器を使って戦うとなると自分以外に三人……増えても四人か五人。そこまでしかそこまで意識しなくても当たらないように攻撃するのが限界なんです。レストさんたちと組むと、どうしても間違いが起こってしまうというか…………正直、窮屈な戦い方をするのも嫌という思いがあります」
そもそもアラッドはソルヴァイパーと戦うつもりがない。
この場でそれを知っているのはスティームだけだが、スティームはアラッドなりの考えがあって喋ってるのだと理解している為、空気を読んで変に喋らなかった。
「窮屈な戦い方はしたくない、か……それは、スティーム君も同じなのかな」
「スティームは雷をメインに戦います。最大火力の攻撃に触れた場合、魔力を纏っていたとしても、被害を受けてしまう可能性はあります」
一応、間違ったことは言っていない。
スティームの最大火力……万雷を使い、赤雷を使用して幾千の雷を落せば……完全に避けられなければ、死なずとも焼かれてしまう可能性が高い。
(……この眼、多分嘘ではないようだね)
元々手に入れた情報から、二人がただのスーパールーキーではないことは解っていた。
だが、レストとしてもそう簡単に引き下がる訳にはいかない。
しかしアラッドの「だから無理なんですよ」説明は止まらない。
「それに、うちには頼れる相棒たちがいます。クロとファルは……モンスターですが、一応手加減は出来ます。とはいえ、その精度は俺たちより落ちます。俺としては……そういった思いを背負わせたくない。俺たちならまだしも、それだけは避けたい」
もしそんな事故が起きれば、それから先の行動に、戦闘に確実に影響が出る。
まだ実際に互いの戦いぶりを見せていないのに……と言いたいところだが、中々痛いところを突かれた状態。
何か言葉を出そうとしていたレストは口を閉じ、グッと飲み込むしかなかった。
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