スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
617 / 1,361

六百十六話 解らなくもない

しおりを挟む
(……依頼主の名前、娘が病に侵されてる侯爵と、同じだよな?)

クエストボードには、新しい依頼書が張り出されていた。

それは……娘の病を治す為に、とある素材が必要であるといった内容。
その素材とは、ソルヴァイパーの心臓の代用となるものなのだが……侯爵はそれがソルヴァイパーの心臓よりも手に入り辛い物だと知っているからこそ、今までギルドに依頼を出さなかった。

(マジ、か………………えっ、じゃあ大丈夫、だよな)

「どうしたの、アラッド?」

「…………スティーム、どうやらついでの問題は何とかなりそうだ」

「えっ?」

パーティーメンバーが何を言ってるのか解らない。
本当に何故ついでの問題が何とかなるのか、全く解らないのだが……スティームの頭が混乱している間に、アラッドは手の空いているギルド職員を確保し、個室へ移動。

「こいつを」

「ッ!!!!!????? えっ………………あ、あの……もしかして、出会ったことが……あるのですか?」

「はい。本当に、凄い偶然が重なったと言いますか」

アラッドが取り出した物は……ユニコーンの角。

そう、以前黒いケルピーに襲われていたユニコーン親子から貰った……成体の方の角。

「あ、ありがとうございます!!!!!」

これまで多くの冒険者たちがソルヴァイパーに挑んできた。
地元の冒険者たちだけではなく、離れた街を拠点にしているクランの冒険者たちも挑んだが……犠牲こそ殆ど出てないが、それでも多くの冒険者たちが倒せなかったというのが事実として残っている。

当たり前だが……そこまで冒険者たちが不甲斐ないと、領主の機嫌が凄まじく悪くなる。
ここ数週間、ギルドのトップであるギルドマスターは毎日胃痛と戦っていた。

「それでですね……俺たち、さっきまでソルヴァイパーと戦ってたんですよ」

「えっ、そう……なんですか? でも……あ、アラッドさんたちでも、やっぱりソルヴァイパーを捉えきることは難しかったのですか?」

既にこのギルドの職員たちもアラッド、スティームの功績は把握済み。

一番ホットな話題で言えば、アラッドが従魔のクロと共にAランクのモンスター、轟炎竜を討伐したという事。
もう試験なんて受けさせずにBランクに上げても良いのではという声が、ギルド内から上がるほど短期間の間に功績を上げ続けている。

そんなアラッドと、現時点での実力……これからの成長も含めればパーティーメンバーに相応しいスティーム、従魔のストームファルコンと共に戦っても逃げられとなれば、ギルドはソルヴァイパーが本気で逃げようとした時の力を評価し直さなければならない。

だが……実際のところはそうではなく、アラッドは自分たちが何故この街に来てソルヴァイパーと戦おうとしてたのかについて話した。

「ってな感じで、俺が前回の戦いでクロと一緒に轟炎竜と戦ったので、今回はスティームとファルがメインで戦うと決めてたんですよ」

「な、なるほど……そうだったん、ですね」

話を聞いたギルド職員は若干呆れつつも、二人にはそういった生き方をするだけの実力があるのだと、改めて認識した。

だが、結果としてソルヴァイパーを逃がしてしまった。
職員はアラッドとクロが戦闘には参加していなくとも、逃がしてしまうとは思えない。

「アラッド、続きは僕が話すよ」

「分かった」

「ソルヴァイパーと戦い始めてから……多分、五分ぐらいは経ってたかな。もう、これ以上戦い続ける意味はないと思い、赤雷を使って仕留めようとしたんです。ですが……ソルヴァイパーはおそらくその場で覚醒したのか、白雷を纏って攻撃を防ぎました」

「っ!!!!!?????」

戦闘職に関わる者として、多少なりとも色を持つ魔力について聞き覚えはある。

「ま、待ってください。という事は……もし、かして」

「完全に僕の油断です。ソルヴァイパーが基本的に逃走癖があることを忘れて、反撃にくると勘違いして……」

「観ていた俺も同じ考えを持っていました。あの状況で、まさか会得した力を逃げる為に使うとは思えず」

揃って頭を下げる二人の青年。

ギルド職員としては……ちょっとまだ把握しきれていなかった。

「えっと…………………………と、とりあえず!!! このユニコーンの角を渡していただけでも、ギルドとしては本当に大助かりです!!!!!」

ざっと話を聞いた結果、職員は二人の感覚が解らなくもなかった。

強い奴と戦うためにこの地域に訪れ、ついに標的となるモンスターと遭遇。
それなりに満足するまで戦い、そろそろ倒そうとガチの殺る気な攻撃を放ったにもかかわらず、新たな力の発現によって防がれた。

強い奴と戦う為にという目標を持っていたことを考えれば……そこから更に熱く、濃密な戦いに繋がると期待してしまうもの。

「今報酬のお金を持ってきますね!!!」

「あ、はい。分かりました……」

確かに、色付きの魔力を持つモンスターという存在は……色々とマズい。

ただ、そのモンスターがソルヴァイパーという基本的に自分から人間を襲うことがない。
そういった珍しい個体であることを考えれば、ギルドとしてもそこまで焦る案件ではなかった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

エクセプション

黒蓮
ファンタジー
 血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。  雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。  やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

私、実はマンドラゴラです! 仲間が根絶やしにされかかってたので守ってあげることにしました! 街でポーション屋を開きつつ、ついでに魔王軍も撃退

あなたのはレヴィオサー
ファンタジー
【一行あらすじ】  擬人化マンドラゴラの女の子主人公が仲間たちを守るために街でポーション屋を開きつつ魔王軍を追っ払う話。 【ちゃんとしたあらすじ】  とあるポーション屋の店主、アルメリア・リーフレットの正体は"擬人化"したマンドラゴラである。魔物について、とりわけ強い魔力を持つ個体は、成長に伴って人の姿へ近づく——そんな現象が古くより報告されてきた。スライムからドラゴンまで前例は様々あるが、アルメリアはなんとその希少すぎるマンドラゴラ版。森で人間の少女として拾われ、育てられた彼女はある日ふと思う。——もしかしてこの広い世界のどこかに、自分と同じような存在がいるのではないか? そうと確信し、旅に出る。やがて通常のマンドラゴラたちがひっそりと暮らす集落にたどり着くが……。そこではちょうど彼らを巡って、魔王軍と冒険者たちが衝突しているところだった。このままではいずれ、自分たちは根絶やしにされてしまうだろう。シクシクと泣いている彼らをまえに、見捨てて立ち去るわけにもいかず。アルメリアは深いため息とともに覚悟を決めた。 「……はぁ、わかりました。そういうことでしたら」

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...