スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
656 / 1,361

六百五十五話 伝えなければ

しおりを挟む
「……私の力では無理だったと、認められなかったということだな」

「っ!!!!!!」

騎士の男はなんと言葉を返せば良いのか解らなかった。

そんな事はありません。
では何故アラッドたちが強大なモンスターを討伐した瞬間に、剛柔が山頂に現れた?

偶々運が良かっただけです。
運が良かった……それは運命という言葉に繋がるのではないか?

どんな慰めの言葉を伝えても、反論が返ってくるイメージしか湧かない。
アマルガその様な人物ではないと解ってはいるものの……騎士はなんとか言葉を絞り出そうとしても、結局何も出てこなかった。

「ふぅーーーーー……ソルヴァイパー、プロミネンスコブラ、ディーマンバを倒した、か…………私たちに出来るか、怪しいところだな」

「…………」

これに関しても、どう返答すれば良いか分からない。

三体の大蛇のうち、一体だけであれば討伐出来る自信がある。
剛柔を発見する為に雇っていた冒険者も含めれば……一体だけであれば、余裕を持って討伐出来ると騎士は断言する。

Bランクの大蛇が二体であれば、当然だが余裕はない。
それでも無理ではないと思っている。

しかし……三体ともなれば、仮に倒せたとしても、誰かが確実に死ぬ。
騎士の男は、その覚悟は出来ている。
だが、きっとアマルは納得しない。

「……あの人と私の差は、何なのだろうな」

もう、嫉妬や憎しみなどはない。

お前は強いだろ。

その言葉を投げられ、混乱しながらも……まず嬉しかった。
心を覆う優しさが、負の感情を全て溶かした。

だが、それでも剛柔を手に入れることを諦めた訳ではない。
剛柔の捜索と同時に、自分を強くするための鍛錬も、これまで以上に力を入れて行い始めた。
それでも……結局は敵わなかった。

どれだけアラッドに対して負の感情が薄れ、消えて敬意だけが残ったとしても、敵わなかったという喪失感は消えない。

「恐れながら…………あの方は、私たちと比べて、根っこから違うかと」

恐れながらという言葉はどちらに向けられているのか。

ひとまず、アマルは騎士の言葉をゆっくり脳内で繰り返し考える。

「才能とはまた違う部分、ということか?」

「えぇ。あの方は幼き頃から訓練に励むだけではなく、モンスターと何度も何度も戦い続けていたらしいです。どういった心境で戦っていたのかまでは解りませんが……普通の幼子では、とても耐えられないかと」

貴族の令息の子供が、普通の幼子に当てはまるのか否か気になるところだが、子供の頃から得物……もしくは魔法の訓練を受ける。
この点に関しては貴族ならではの習慣ではある。

しかし、五歳の時点から何度も何度も……一年、三百六十五日、毎日……というのは少々大袈裟だが、三百三十日ほどは街の外に出てモンスターと戦っており、特に頭を使って考えずとも、普通ではないと解る。

「生まれた時から、何かが決定的に違う。それが狂気なのか、もしくは生まれながらに自分が目指す道が薄っすらと定まっていたのか……明確な答えはありませんが、それらが私の直感的な感想です」

「……ありがとう」

楽になったわけではない。
何かが違っても、だから負けて良いという理由にはならない。

それでも……気持ちの落としどころは見えた……かもしれない。

(英雄とは何なのか、なんてことを考えることがそもそも違う……間違いなのかもしれないな)

祖先であり、英雄であるエルス・エスペラーサは英雄になりたくて英雄になったのか……違う。

アマルはアラッドという同じ侯爵家出身の人間でありながら、全く違う存在の様に思える者と出会い、思考の一部が変わった。

(何をもってして英雄となるのか…………ふ、ふふふ。こういった事を考えている時点で、私は英雄になれないのだろうな)

何かを悟ったとはいえないが、改めてアラッドという人間と出会ったことで、多くの事に気付かされたと感じたアマル。

もう剛柔に未練はない。
悔しさは残っているが、やはり嫉妬などの負の感情が再発することはなかった。

ただ、礼を伝えたかった。
あなたと出会えたことで自分が勘違いをしていた事に気付けた、そもそもあなた達が現れなければ……剛柔を探そうとしなければ、剛柔はこれからも見つからず、永遠にリバディス鉱山に眠ったままだったかもしれない。

アマルは直ぐにアラッドたちが今現在何処にいるかを探し、ダッシュで現場に向かった。


「あ、アラッド殿」

「ん? あなたは……アマルさん、でしたね」

何故殿と呼ばれたのか、なんで息絶え絶え状態なのか……色々とツッコミたいことはあるが、アポを取られてないにもかかわらず自分のところに来たという事は、どう考えても自分に用がある。

アラッドはアマルの域が整うまで待った。

因みに今現在場所は大通り。
そろそろ日が完全に沈み始めるが、夕食時という事もあり、周囲に人はそれなりにいる。

だが、アマルはそんな事お構いなしに口を開き、自分の思った事を伝え始めた。

素直にあなた達が先に剛柔を手に入れたことが悔しかった。
でも、あなた達が剛柔を探そうと思わなければ、ずっとリバディス鉱山に眠ったままだったかもしれない。
あなたのお陰で、英雄に対する考え方が変わったと。

アマルは……何度も感謝の言葉を伝えた。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

私は……何も知らなかった……それだけなのに……

#Daki-Makura
ファンタジー
第2王子が獣人の婚約者へ婚約破棄を叩きつけた。 しかし、彼女の婚約者は、4歳年下の弟だった。 そう。第2王子は……何も知らなかった……知ろうとしなかっただけだった…… ※ゆるい設定です。ゆるく読んでください。 ※AI校正を使わせてもらっています。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。 目覚めた先は、近江・長浜城。 自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。 史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。 そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。 「この未来だけは、変える」 冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。 これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。 「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。 ※小説家になろうにも投稿しています。

世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~

fuwamofu
ファンタジー
魔力量ゼロの落ちこぼれとして勇者パーティを追放された少年リアン。 絶望の果てに始めた自由な旅の中で、偶然助けた少女たちが次々と彼に惹かれていく。 だが誰も知らない。彼こそが古代勇者の血を継ぎ、世界を滅ぼす運命の「真なる勇者」だということを──。 無自覚最強の少年が、世界を変える奇跡を紡ぐ異世界ファンタジー!

処理中です...