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七百十七話 それ、ズルくない?
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「カハっ!!!!????」
僅かコンマ数秒、アラッドの斬撃の方が速かった。
振り下ろされた斬撃はラディアの体を切断することはなかったが、それでも斜めに一閃……綺麗に入り、血飛沫が宙を舞った。
(……終わりと思って、良さそうだな)
狂化を発動した状態とはいえ、それ相応の理性が残っているアラッドは冷静に状況判断し、後方へ下がった。
「っ……そこっ!!!???」
「っ!!!!!?????」
審判が「そこまで!!!!」と試合終了を宣言しようとした瞬間、アラッドも含めてラディアから発せられる闘志が別物に変わったことに気付いた。
「ぐっ!!!!」
そしてアラッドがまだ試合は終っていない……そう思った直後にはラディアが先程までよりも素早く距離を詰め、精霊剣を振るった。
(速さ、だけじゃない!! 腕力も上がっている!!! ということは、おそらく全ての身体能力が、先程よりも上がっている)
狂化を解く前で良かったと、心底思ったアラッド。
仮に狂化解いていれば……間違いなく、リングから吹き飛ばされ、壁に激突していた。
リングから吹き飛ばされるだけでは、試合上敗北にはならないが、痛手は負わされる。
(まだ、精霊剣の力を完全には、引き出していなかった、ということか!?)
再び渦雷の効果を活かしながら動き、当然攻めることも忘れない。
ただ……先程までの様に、やや優位に戦況を維持することが出来ない。
(あの眼、やはり、我を忘れている、のか!!??)
雰囲気から感じ取っただけではなく、アラッドは実際に試合の中で何十、何百と斬り結び……ラディアこれまでの人生の中で積み上げてきた技術力に敬意を感じた。
だが、我を忘れ……顔に青筋が浮かぶ状態になってから、その技術力に陰りが見えた。
(付け入る隙があるとすれば、そこしかないな!!!!!!)
アラッド自身も狂化を使った状態になると、狂気に……激情に引っ張られ、少々技術力が落ちるものの、今のラディアであれば……そこで差を付けることが出来なくもない。
ただ…………アラッド自身も、タイムリミットに余裕がる訳ではなかった。
「あれは、いったい……」
「……多分だけどさ、暴走しちゃってる……よね?」
「抑えていた感情が爆発したとか、そういった類の暴走、ではないんだよね」
「そういうのじゃない気がする。えっとね…………多分だけど、何かに乗っ取られてる感じ?」
ガルーレは過去に臨時パーティーを組んだ同業者が、レイスというアンデット系のモンスターに乗っ取られた状態を
見たことがある。
「なるほど。であれば、説明が尽きますね」
「フローレンスさん。もしかして、あの人は自身の得物である精霊剣に乗っ取られた、という事ですか」
「その通りです、アッシュ君。おそらく、今彼女はあの精霊剣に封印されている……水の精霊に乗っ取られている状態です」
「やっぱり……でも、そうなるとあの精霊剣の所有者の意識は、今気を失ってる状態なんですよね」
先程アラッドが与えた一撃は、間違いなく試合を終わらせるに至る一撃であり、意識が飛ぶ可能性はゼロではない。
「……おそらく」
「それなら、今あの人は精霊に意識を乗っ取られてる状態で戦ってると考えると…………なんだか、ズルくありませんか?」
アッシュの言葉に、何を言っているんだこの子は? という顔になる三人だが、なんとなく言いたい事は解らなくもない。
「そう、だね……アラッドが従魔としてクロと共に戦う、フローレンスさんが契約している光の精霊と共に戦うのとは、少し訳が違うね」
公式の試合の場であれば、主人となる者がノックアウトされた時点で、基本的には試合終了となる。
だが、現在ラディアは精霊剣ウィルビアに封印されている精霊の力によって体を乗っ取られ、動き続けている。
「…………でも、審判の人が止めないってことは、反則ではないのかな」
「明確にルールにない状況、という可能性もありますが……これは国王様方の自慢から始まった試合とはいえ、国を背負った一戦と同意」
「つまり、審判の判断で代表の選手の……貴族であれば、家門に泥を塗ることは出来ないと」
スティームの言葉に、フローレンスは小さく……緊張の色を浮かべながら頷いた。
「しがらみってやつ? やっぱりこういうのにそういった面倒は付きものなのね。でも……予想外の事態だとは思うけど、アラッドはなんだかんだでこの状況を歓迎してそうじゃない?」
予想外の緊急事態を歓迎する。
普通に考えれば、脳が正常かを心配するところだが、現在加速を続ける狂戦士と化した男は、あいにくと色々と普通ではない。
それを知っているスティームたちは……揃って苦笑いを浮かべ、静かにアラッドが戦う姿を見守ることにした。
(……良いん、だな。そうだな…………致、し方ない)
これまでの戦闘の中で、アラッドは狂化に眠る……更なる可能性があることに気付くも、踏み込むことに躊躇していた。
(子供みたいな、理由だが……負けるのは、嫌だ)
真剣勝負の場において、負けの美学などアラッドの頭には一切ない。
僅かコンマ数秒、アラッドの斬撃の方が速かった。
振り下ろされた斬撃はラディアの体を切断することはなかったが、それでも斜めに一閃……綺麗に入り、血飛沫が宙を舞った。
(……終わりと思って、良さそうだな)
狂化を発動した状態とはいえ、それ相応の理性が残っているアラッドは冷静に状況判断し、後方へ下がった。
「っ……そこっ!!!???」
「っ!!!!!?????」
審判が「そこまで!!!!」と試合終了を宣言しようとした瞬間、アラッドも含めてラディアから発せられる闘志が別物に変わったことに気付いた。
「ぐっ!!!!」
そしてアラッドがまだ試合は終っていない……そう思った直後にはラディアが先程までよりも素早く距離を詰め、精霊剣を振るった。
(速さ、だけじゃない!! 腕力も上がっている!!! ということは、おそらく全ての身体能力が、先程よりも上がっている)
狂化を解く前で良かったと、心底思ったアラッド。
仮に狂化解いていれば……間違いなく、リングから吹き飛ばされ、壁に激突していた。
リングから吹き飛ばされるだけでは、試合上敗北にはならないが、痛手は負わされる。
(まだ、精霊剣の力を完全には、引き出していなかった、ということか!?)
再び渦雷の効果を活かしながら動き、当然攻めることも忘れない。
ただ……先程までの様に、やや優位に戦況を維持することが出来ない。
(あの眼、やはり、我を忘れている、のか!!??)
雰囲気から感じ取っただけではなく、アラッドは実際に試合の中で何十、何百と斬り結び……ラディアこれまでの人生の中で積み上げてきた技術力に敬意を感じた。
だが、我を忘れ……顔に青筋が浮かぶ状態になってから、その技術力に陰りが見えた。
(付け入る隙があるとすれば、そこしかないな!!!!!!)
アラッド自身も狂化を使った状態になると、狂気に……激情に引っ張られ、少々技術力が落ちるものの、今のラディアであれば……そこで差を付けることが出来なくもない。
ただ…………アラッド自身も、タイムリミットに余裕がる訳ではなかった。
「あれは、いったい……」
「……多分だけどさ、暴走しちゃってる……よね?」
「抑えていた感情が爆発したとか、そういった類の暴走、ではないんだよね」
「そういうのじゃない気がする。えっとね…………多分だけど、何かに乗っ取られてる感じ?」
ガルーレは過去に臨時パーティーを組んだ同業者が、レイスというアンデット系のモンスターに乗っ取られた状態を
見たことがある。
「なるほど。であれば、説明が尽きますね」
「フローレンスさん。もしかして、あの人は自身の得物である精霊剣に乗っ取られた、という事ですか」
「その通りです、アッシュ君。おそらく、今彼女はあの精霊剣に封印されている……水の精霊に乗っ取られている状態です」
「やっぱり……でも、そうなるとあの精霊剣の所有者の意識は、今気を失ってる状態なんですよね」
先程アラッドが与えた一撃は、間違いなく試合を終わらせるに至る一撃であり、意識が飛ぶ可能性はゼロではない。
「……おそらく」
「それなら、今あの人は精霊に意識を乗っ取られてる状態で戦ってると考えると…………なんだか、ズルくありませんか?」
アッシュの言葉に、何を言っているんだこの子は? という顔になる三人だが、なんとなく言いたい事は解らなくもない。
「そう、だね……アラッドが従魔としてクロと共に戦う、フローレンスさんが契約している光の精霊と共に戦うのとは、少し訳が違うね」
公式の試合の場であれば、主人となる者がノックアウトされた時点で、基本的には試合終了となる。
だが、現在ラディアは精霊剣ウィルビアに封印されている精霊の力によって体を乗っ取られ、動き続けている。
「…………でも、審判の人が止めないってことは、反則ではないのかな」
「明確にルールにない状況、という可能性もありますが……これは国王様方の自慢から始まった試合とはいえ、国を背負った一戦と同意」
「つまり、審判の判断で代表の選手の……貴族であれば、家門に泥を塗ることは出来ないと」
スティームの言葉に、フローレンスは小さく……緊張の色を浮かべながら頷いた。
「しがらみってやつ? やっぱりこういうのにそういった面倒は付きものなのね。でも……予想外の事態だとは思うけど、アラッドはなんだかんだでこの状況を歓迎してそうじゃない?」
予想外の緊急事態を歓迎する。
普通に考えれば、脳が正常かを心配するところだが、現在加速を続ける狂戦士と化した男は、あいにくと色々と普通ではない。
それを知っているスティームたちは……揃って苦笑いを浮かべ、静かにアラッドが戦う姿を見守ることにした。
(……良いん、だな。そうだな…………致、し方ない)
これまでの戦闘の中で、アラッドは狂化に眠る……更なる可能性があることに気付くも、踏み込むことに躊躇していた。
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