724 / 1,361
七百二十三話 無駄とは、思えない
しおりを挟む
SIDE アラッド
「フローレンスが強化系スキルを使って超強化したと思ったら、向こうの岩男も同じようなスキルを発動したみたいだな」
「……筋肉パラダイス?」
「ぶふっ!!!!!」
弟の呟きに思わず吹き出してしまったアラッド。
審判の男性も、間違いが起きそうになった時に止められるだけの強靭な体を有しているため、確かにリングの上は筋肉パラダイスと呼べる状態……かもしれない。
「ぶはっはっは!!!!!」
当然、ガルーレは大爆笑。
「ふっ、ふっ……ふふふ」
スティームは笑いをこらえるのは必死になっていた。
「き、筋肉パラダイス、か……確かにそう表現できる状態かもしれないな」
「お、お腹、痛い…………よ、よじれる」
「えっと、リングの上が筋肉パラダイス、なのは一旦置いといて、フローレンスさんが使用した強化スキルは、アラッドが度々話してくれてた、聖光雄化で良いんだよな」
それを使用した状態のフローレンスは、アラッドは筋肉聖女と評していた。
そして今、リングの上で動きが損なわれない限界まで筋肉が肥大化したライホルトと渡り合っているフローレンスの姿は……確かにその言葉がピッタリ当てはまる。
失礼だとは思いつつも、色々と納得してしまったスティーム。
「そうだ。あれが、フローレンスの切り札の一つ、聖光雄化だ。あっちの岩男も何かしらの手札を持っているとは思っていたが……中々どうして、ふっふっふ。やはり、あの岩男とも戦ってみたかったな」
「うん、アラッドはアラッドだね。それで、あの人はいったいどういった強化スキルを使ったんだろ」
「…………身体強化系なのは間違いない。ただ……腕力がメイン、か?」
そんな事言われなくても解る!!! と、何も解らない者であればツッコんでしまうが……アッシュも含め、アラッドの言葉に対して下手に……不用意なツッコミを入れることはなかった。
「戦況としては、さっきまでとそんなに変わってない感じ?」
「そう、だね……予想以上に、岩男さんが発動した強化系スキルの効果が高い」
「…………仕方ない。視させてもらうか」
失礼を承知で、アラッドは一瞬だけ岩男ことライホルト・ギュレリックのステータスを視た。
「……気になるスキルが、一つだけあった」
「どんなスキルだったんですか?」
「巨人の怒り、だ」
「詳細は?」
「悪いが、そこまでは視れてない。仕方ないと思いはしたが、試合中にあまりじろじろと視るのは、な」
ただ注意深く感心するのと、鑑定を使って視られるのは違う。
それを理解しているアラッドは、本当に一瞬だけしかライホルトの事を視てない。
「巨人の怒り。名前からして、やっぱり身体強化の中でも、腕力強化がメインのスキルなのかな」
「……戦況的に、腕力だけじゃなくて防御力? も上がってそうじゃない」
「ガルーレの言う通りだな。それでもフローレンスが使用した聖光雄化の方が、効果は勝っている。だから先程までと比べて、攻撃は通るようになっているが……だとしても、先程まで以上に、一発で試合がひっくり返る脅威を感じる」
アラッドの違和感は、的中していた。
ライホルト・ギュレリックが有している強化系スキル、巨人の怒りの効果は身体能力の大幅強化……それにプラス、対峙している者との速度が大きければ大きい程、使用者の腕力と防御力を上げる。
(フローレンスも聖光雄化で防御力が強化されている。聖光を纏うことで、斬撃や刺突の威力は向上してる。しかし、やはり試合を直ぐに終わらせることは…………いや、そこは俺が心配するところじゃないか)
首を横に振り、脳裏に過った考えをかき消す。
「……アラッド兄さん。この勝負、やろうと思えばフローレンスが勝てますよね」
「やろうと思えば、というのはどういう意味だ?」
「向こうの人も貴族出身の方らしく、魔力量は多いです。でも、やはり前衛タイプの人の特徴が出てるというか……つまり、逃げれば勝てますよね」
逃げる、という言葉がどの様な戦い方を示しているのか、アラッドたちは直ぐに理解し……そしてアッシュの考えを肯定した。
「そうだな。確かに魔力の総量はフローレンスの方が多い。逃げて魔力切れを待つのも、一つの戦略だ。ただ……そうはしないだろうな」
言葉通り、アラッドは相手の魔力切れを待って戦うという、消極的な戦法を否定するつもりはない。
リングの上という場所で、消極的な相手を仕留められない。
それはそれで、ライホルトの仕留める力のなさも指摘される。
だが……アラッドは、フローレンスがその戦法を取るとは思えなかった。
「何故ですか?」
「アッシュからすれば、あまり理解出来ない話だとは思うが……プライド、だろうな」
「プライド、ですか」
「あぁ、そうだ。自身に全力を尽くそうと向かってくる相手から、逃げたくない。他に戦い方があると解っていても……真っ向から打ち勝ちたい。あまり、理解出来ないだろ」
「そうですね。僕は、高ランクモンスターの素材が欲しいので、あぁいった戦いをしましたけど……でも、無駄なプライドだとは、思いませんね」
逃げず真正面から打ち勝とうとするフローレンスのプライドを理解出来ずとも、アッシュはそのプライドを否定しようとは……とても思えなかった。
「フローレンスが強化系スキルを使って超強化したと思ったら、向こうの岩男も同じようなスキルを発動したみたいだな」
「……筋肉パラダイス?」
「ぶふっ!!!!!」
弟の呟きに思わず吹き出してしまったアラッド。
審判の男性も、間違いが起きそうになった時に止められるだけの強靭な体を有しているため、確かにリングの上は筋肉パラダイスと呼べる状態……かもしれない。
「ぶはっはっは!!!!!」
当然、ガルーレは大爆笑。
「ふっ、ふっ……ふふふ」
スティームは笑いをこらえるのは必死になっていた。
「き、筋肉パラダイス、か……確かにそう表現できる状態かもしれないな」
「お、お腹、痛い…………よ、よじれる」
「えっと、リングの上が筋肉パラダイス、なのは一旦置いといて、フローレンスさんが使用した強化スキルは、アラッドが度々話してくれてた、聖光雄化で良いんだよな」
それを使用した状態のフローレンスは、アラッドは筋肉聖女と評していた。
そして今、リングの上で動きが損なわれない限界まで筋肉が肥大化したライホルトと渡り合っているフローレンスの姿は……確かにその言葉がピッタリ当てはまる。
失礼だとは思いつつも、色々と納得してしまったスティーム。
「そうだ。あれが、フローレンスの切り札の一つ、聖光雄化だ。あっちの岩男も何かしらの手札を持っているとは思っていたが……中々どうして、ふっふっふ。やはり、あの岩男とも戦ってみたかったな」
「うん、アラッドはアラッドだね。それで、あの人はいったいどういった強化スキルを使ったんだろ」
「…………身体強化系なのは間違いない。ただ……腕力がメイン、か?」
そんな事言われなくても解る!!! と、何も解らない者であればツッコんでしまうが……アッシュも含め、アラッドの言葉に対して下手に……不用意なツッコミを入れることはなかった。
「戦況としては、さっきまでとそんなに変わってない感じ?」
「そう、だね……予想以上に、岩男さんが発動した強化系スキルの効果が高い」
「…………仕方ない。視させてもらうか」
失礼を承知で、アラッドは一瞬だけ岩男ことライホルト・ギュレリックのステータスを視た。
「……気になるスキルが、一つだけあった」
「どんなスキルだったんですか?」
「巨人の怒り、だ」
「詳細は?」
「悪いが、そこまでは視れてない。仕方ないと思いはしたが、試合中にあまりじろじろと視るのは、な」
ただ注意深く感心するのと、鑑定を使って視られるのは違う。
それを理解しているアラッドは、本当に一瞬だけしかライホルトの事を視てない。
「巨人の怒り。名前からして、やっぱり身体強化の中でも、腕力強化がメインのスキルなのかな」
「……戦況的に、腕力だけじゃなくて防御力? も上がってそうじゃない」
「ガルーレの言う通りだな。それでもフローレンスが使用した聖光雄化の方が、効果は勝っている。だから先程までと比べて、攻撃は通るようになっているが……だとしても、先程まで以上に、一発で試合がひっくり返る脅威を感じる」
アラッドの違和感は、的中していた。
ライホルト・ギュレリックが有している強化系スキル、巨人の怒りの効果は身体能力の大幅強化……それにプラス、対峙している者との速度が大きければ大きい程、使用者の腕力と防御力を上げる。
(フローレンスも聖光雄化で防御力が強化されている。聖光を纏うことで、斬撃や刺突の威力は向上してる。しかし、やはり試合を直ぐに終わらせることは…………いや、そこは俺が心配するところじゃないか)
首を横に振り、脳裏に過った考えをかき消す。
「……アラッド兄さん。この勝負、やろうと思えばフローレンスが勝てますよね」
「やろうと思えば、というのはどういう意味だ?」
「向こうの人も貴族出身の方らしく、魔力量は多いです。でも、やはり前衛タイプの人の特徴が出てるというか……つまり、逃げれば勝てますよね」
逃げる、という言葉がどの様な戦い方を示しているのか、アラッドたちは直ぐに理解し……そしてアッシュの考えを肯定した。
「そうだな。確かに魔力の総量はフローレンスの方が多い。逃げて魔力切れを待つのも、一つの戦略だ。ただ……そうはしないだろうな」
言葉通り、アラッドは相手の魔力切れを待って戦うという、消極的な戦法を否定するつもりはない。
リングの上という場所で、消極的な相手を仕留められない。
それはそれで、ライホルトの仕留める力のなさも指摘される。
だが……アラッドは、フローレンスがその戦法を取るとは思えなかった。
「何故ですか?」
「アッシュからすれば、あまり理解出来ない話だとは思うが……プライド、だろうな」
「プライド、ですか」
「あぁ、そうだ。自身に全力を尽くそうと向かってくる相手から、逃げたくない。他に戦い方があると解っていても……真っ向から打ち勝ちたい。あまり、理解出来ないだろ」
「そうですね。僕は、高ランクモンスターの素材が欲しいので、あぁいった戦いをしましたけど……でも、無駄なプライドだとは、思いませんね」
逃げず真正面から打ち勝とうとするフローレンスのプライドを理解出来ずとも、アッシュはそのプライドを否定しようとは……とても思えなかった。
189
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる