スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
779 / 1,361

七百七十八話 経験の重み

しおりを挟む
「ありがとう、ございました」

「こちらこそ。いやぁ~~、強かったよ。私が出会ってきた徒手格闘がメインの者たちとも十分に渡り合えるよ」

「どうも。まぁ……でも、私なんてやっぱりまだまだですよ」

ガルーレは……初めてではない。

故郷で暮らしている時、同じく徒手格闘がメインのアマゾネスとの指導最中、何度も何度も負けた。
そして故郷を出て、冒険者としての生活が始まってからも、何度か負けを経験した。

(アラッドのお父さんなんだから、強いってことは解ってた。解ってた…………私が油断し過ぎてた? いや、違う。確かに本気の本気ではなかったけど……でも、感覚的には師匠と戦ってる時の感覚に近かった……ちょっと違うけど)

師匠と拳を交えていた際、ガルーレは純粋に身体能力の差で圧倒されていた。
それはガルーレが故郷を離れて冒険者として活動する少し前になっても変わらなかった。

だが、フールとの戦いは違った。
圧倒的に技術と経験値の差を感じさせられた。

(この人……本当にメイン武器はアラッドと同じでロングソード、なのよね?)

本気でそう疑いたくなる程、フールの徒手格闘の完成度は高かった。

「さて、次はスティーム君だね」

「は、はい!!」

ガルーレと模擬戦を行った後なんですから、少し休息を取った方が……なんて言葉が出てくるわけがなかった。

何が何でも勝ちたい理由があるから、という訳ではない。

ただ、ガルーレとの戦闘を観て解ってしまった。
自分とフールにどれほどの差があるのか。


「お疲れさん、ガルーレ」

「……ポーションはいいよ」

「そうか?」

「うん、いらない。これぐらい放っておけば治る。それに……随分と手加減されたわけだし」

アラッドの元へ戻って来たガルーレは、ポーションの使用を断り、大きなため息を吐いた。

「はぁ~~~~~~~~…………」

「随分と大きなため息だな」

「だってさぁ……さっきも言ったけど、思いっきり手加減されたんだよ」

「ロングソードを使わなかったことに対してか?」

「それもあるけど、多分フールさんは脚も使えたでしょ」

格闘戦は拳を使ったスタイルに特化している、とも捉えられる戦いっぷりではあったが、実際に拳を交えたガルーレはそうは思わなかった。

「……どうだろうな」

「とりあえず、諸々手加減されたのよ。ペイル・サーベルスを使ったところでって話とも思えるほど……技術に差があった」

「ガルーレも決して技術力がないわけではないだろ。大きな要因としては、経験値の差だ」

「それって、つまりどう考えられても埋められない差が大きな要因ってことじゃん」

「………………」

まさにその通り過ぎる返しに、言葉が詰まるアラッド。

ガルーレは一度完封と呼べる敗北を体験したからといって、萎える気は一切ない。
ただ、どう越えるべきか……そのぼんやりとした道筋程度は把握しておきたい。

「…………父さんは、基本的にこれ以上戦場に出ることはない。けど、俺達はこれから多くの戦場を駆けることが出来る」

「あぁ~~~~……なるほどなるほど。言いたい事は解った。でもさ、その時はさすがにフールさんも良い歳になって、当主の座を…………ギーラスさんだけ? その人に譲ってそうじゃない?」

「そうだな。けどな、フール。当主の座を引退したということは、自由に動ける時間が一気に増える」

「…………えっ、マジ???」

まさかの答えに辿り着いてしまったガルーレは心底信じられないといった表情を浮かべた。

「ふっふっふ、さぁどうだろうな。ただ、自由な時間が増えてしまうのは間違いない。それに、父さんが歳を取ったからといって、それ相応に老いてくれると思うか」

「思えない、かなぁ。それじゃあ、スティームも同じく完封されちゃう感じ?」

「……模擬戦、という条件下なら、難しいだろうな」

既に、ロングソードを持ったフールと双剣を持ったスティームの模擬戦は始まっていた。

模擬戦ではあるものの、両者の武器は刃引きされていない真剣。

「経験、ねぇ…………大事なのは解ってたけど、なんか……アラッドのお父さんの場合、洒落にならなくない」

「……否定出来ないな」

ロングソードと双剣。
手数であれば、双剣の方が有利なのは明白。

フールが身体能力を制限しないのであればまだしも、スティームの身体能力に近い状態でセーブするのであれば、その有利が消えることはない。

だが……模擬戦開始から一分、スティームの双剣はフールに掠りすらしていない。

「理想的な動き方、体捌きって感じ? もしかしてフールさんって剣聖とか呼ばれてたりして」

「人によってはそう呼ぶ人はいるかもしれないが、父さんは光魔法や聖光魔法は会得してない。騎士界隈で二つ名があるとしたら……おそらく、剣鬼だろうな」

経験から来る動き。
では、いったいどれほどの経験を積んで来たのか。

「剣鬼……あんなに優しい顔してる人が?」

「あれが父さんの素であるとは思うけど……俺も、多分兄弟姉妹全員、父さんが本気で戦う姿は見たことがない」

アラッドが思い付いた父の二つ名、剣鬼。

それは実際にフールと同世代、その更に上の世代の者たちが実際に呼んでいた二つ名であった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...