810 / 1,361
八百九話 そこがゴールではない
しおりを挟む
SIDE ルリナ
「ぐっ、参りました」
「ありがとうございました!」
「……モーナさん、また腕に磨きがかかりましたか?」
「いやぁ~~~、最近攻めばかりを意識し過ぎてたと思ってね。防御方面も頑張ろうと思って」
今現在、ルリナは基本的に王女たちを護衛する騎士団に入団していた。
王女たちを護衛するのが主な仕事とはいえ、常に護衛しなければならない訳ではなく……模擬戦を行って腕を磨き、モンスターが多く生息している地域やダンジョンに遠征しに行くこともある。
そしてルリナは休日中、先輩騎士であるモーナと模擬戦を行っていた。
「流石ですね……私も、モーナさんみたいに、いつまでも精進していきたいです」
モーナの年齢は既にがっつり二十代後半。
見た目的には幼さと低身長故に全くそう見えないが、良縁もあって現在は結婚している。
しかし、結婚したからといって騎士を辞めることはなく、寧ろ更に精力的に活動していた。
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいよ。でもね……こう、調子に乗ってたとかそういう訳じゃないんだけど、世の中は広いって教えてくれたのは、ルリナちゃんの弟君なんだ」
「私の弟と言いますと…………アラッドの事、ですね」
完全に血が繋がっている弟となればアッシュではあるが、アラッドもルリナの弟であるのは間違いなかった。
「そうなんだよ~~。初めて会ったのは……あの子が七歳の時だったかな? 王都に来てた時、せっかくの機会だから模擬戦をしてみようってなったんだ」
「……その模擬戦で、アラッドが勝ったのですね」
「そうなんだよルリナちゃん!! もうこう……本当にびっくりし過ぎたよね!!!」
当時、モーナは騎士としての活動を始めたばかりではあるが、新米騎士の中では男性騎士を含めてもトップクラスの腕前を持っていた。
だが、アラッドは七歳時に……ハンデありの模擬戦とはいえ、モーナ相手に勝利を収めた。
「あれがあったから、私ももっともっと頑張らないとって思えたんだよ」
騎士になるまでの人生……決してモーナが頑張ってこなかった訳ではない。
剣技の才に胡坐をかくことはなく、幾重にも修練を重ねてきた。
ただ……事実として、アラッドにハンデありの模擬戦で負けた。
「モーナさんは、その……ショックでは、なかったのですか?」
「ん~~~…………勿論、悔しいって思いはあったよ。私なりに頑張って騎士になったからね。ただ……実際にアラッド君と戦ってみて、剣を合わせて思ったんだ。あの子は……私よりも、濃密な時間を過ごしてきたんだって」
濃密な時間を過ごしてきた。
その言葉を聞いて、アラッドの姉であるルリナは直ぐに納得した。
(確かに、モーナさんの言う通りあの子はこう……常に、何かしら頑張ってたわね)
しょっちゅう関わっていた訳ではないが、それでも弟の頑張りはある程度把握していた。
「だから、私ももっともっと頑張らないと…………騎士になったのがゴールじゃないんだって思えたんだ」
「……そう、ですね」
騎士になったのがゴールではない。
その言葉は、ややルリナの心に重く響いた。
フールの子供たちは、アッシュという超例外を除いて、全員父親である……Aランクドラゴンをソロで討伐したドラゴンスレイヤーであるフールに憧れの気持ちを抱いている。
当然、ルリナも同じ気持ちを抱いている。
しかし少し前になるが、長男であるギーラスがBランクのドラゴンをソロで討伐することに成功したという内容を耳にした。
フールと同様に、ギーラスに対しても敬意を抱いており、素直に「流石ギーラス兄さんね」と思った。
ただ……同時に、焦りの気持ちも湧き上がってきた。
騎士になることがゴールではないルリナにとって、兄や……そして弟の功績は、手放しで喜べることではない。
「ルリナちゃん、焦り過ぎて取り返しのつかないことはしちゃだめだよ」
「っ、モーナさん…………そうですね」
モーナは決して失敗してはいけない、とは言わなかった。
新人時代、何度も先輩たちに助けてもらったモーナとしては、そんな事恥ずかしくて絶対に言えないという事情もあり、寧ろモーナや他の後輩女性騎士たちが失敗して困っていたら、積極的に助けようと思っている。
「アラッド君には物凄い感謝してるよ。物凄い感謝してるけど……あの子と自分を比べるのはダメだよ!!!!」
ルリナの上司であるモーナ……の、更に上司である団長のディーネはアラッドの母、アリサの友人。
そのため、割と定期的に自分たちの近況を手紙で報告し合っている。
当然……その中には、アラッドがまだ十代前半であるにもかかわらず、クロが半殺しにされたことで怒りが爆発し……単身でトロール亜種に挑んだという事も書かれていた。
その内容を見た時、ディーネは思わず飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。
モーナたちもその話を聞いた時は半信半疑だったものの……トーナメントの決勝戦であの様な戦いぶりを魅せられては……信じるほかなかった。
「だから、ルリナちゃんのペースで経験を積んでいって、その時が来たら逃さず挑戦しよう!!!」
「……ありがとう、ございます」
本当に自分は先輩たちに恵まれている。
そう思いながら休日の自主訓練を終え、少し遅めのランチへ向かおうと思った時……一通の手紙がルリナの元に届いた。
(…………………………………………本当に、モーナさんの言う通りね)
届いた手紙には、おおよそギーラスやガルアと同じ様な内容が書かれていた。
しっかり手紙を読んだうえで……弟に非がないことは十分に理解した。
ただ……アラッドと比べて、自分もあれぐらいはっちゃけなければ!!! ……と思うことはなく、改めて自分は自分なりのペースで進もうと心に誓うルリナだった。
「ぐっ、参りました」
「ありがとうございました!」
「……モーナさん、また腕に磨きがかかりましたか?」
「いやぁ~~~、最近攻めばかりを意識し過ぎてたと思ってね。防御方面も頑張ろうと思って」
今現在、ルリナは基本的に王女たちを護衛する騎士団に入団していた。
王女たちを護衛するのが主な仕事とはいえ、常に護衛しなければならない訳ではなく……模擬戦を行って腕を磨き、モンスターが多く生息している地域やダンジョンに遠征しに行くこともある。
そしてルリナは休日中、先輩騎士であるモーナと模擬戦を行っていた。
「流石ですね……私も、モーナさんみたいに、いつまでも精進していきたいです」
モーナの年齢は既にがっつり二十代後半。
見た目的には幼さと低身長故に全くそう見えないが、良縁もあって現在は結婚している。
しかし、結婚したからといって騎士を辞めることはなく、寧ろ更に精力的に活動していた。
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいよ。でもね……こう、調子に乗ってたとかそういう訳じゃないんだけど、世の中は広いって教えてくれたのは、ルリナちゃんの弟君なんだ」
「私の弟と言いますと…………アラッドの事、ですね」
完全に血が繋がっている弟となればアッシュではあるが、アラッドもルリナの弟であるのは間違いなかった。
「そうなんだよ~~。初めて会ったのは……あの子が七歳の時だったかな? 王都に来てた時、せっかくの機会だから模擬戦をしてみようってなったんだ」
「……その模擬戦で、アラッドが勝ったのですね」
「そうなんだよルリナちゃん!! もうこう……本当にびっくりし過ぎたよね!!!」
当時、モーナは騎士としての活動を始めたばかりではあるが、新米騎士の中では男性騎士を含めてもトップクラスの腕前を持っていた。
だが、アラッドは七歳時に……ハンデありの模擬戦とはいえ、モーナ相手に勝利を収めた。
「あれがあったから、私ももっともっと頑張らないとって思えたんだよ」
騎士になるまでの人生……決してモーナが頑張ってこなかった訳ではない。
剣技の才に胡坐をかくことはなく、幾重にも修練を重ねてきた。
ただ……事実として、アラッドにハンデありの模擬戦で負けた。
「モーナさんは、その……ショックでは、なかったのですか?」
「ん~~~…………勿論、悔しいって思いはあったよ。私なりに頑張って騎士になったからね。ただ……実際にアラッド君と戦ってみて、剣を合わせて思ったんだ。あの子は……私よりも、濃密な時間を過ごしてきたんだって」
濃密な時間を過ごしてきた。
その言葉を聞いて、アラッドの姉であるルリナは直ぐに納得した。
(確かに、モーナさんの言う通りあの子はこう……常に、何かしら頑張ってたわね)
しょっちゅう関わっていた訳ではないが、それでも弟の頑張りはある程度把握していた。
「だから、私ももっともっと頑張らないと…………騎士になったのがゴールじゃないんだって思えたんだ」
「……そう、ですね」
騎士になったのがゴールではない。
その言葉は、ややルリナの心に重く響いた。
フールの子供たちは、アッシュという超例外を除いて、全員父親である……Aランクドラゴンをソロで討伐したドラゴンスレイヤーであるフールに憧れの気持ちを抱いている。
当然、ルリナも同じ気持ちを抱いている。
しかし少し前になるが、長男であるギーラスがBランクのドラゴンをソロで討伐することに成功したという内容を耳にした。
フールと同様に、ギーラスに対しても敬意を抱いており、素直に「流石ギーラス兄さんね」と思った。
ただ……同時に、焦りの気持ちも湧き上がってきた。
騎士になることがゴールではないルリナにとって、兄や……そして弟の功績は、手放しで喜べることではない。
「ルリナちゃん、焦り過ぎて取り返しのつかないことはしちゃだめだよ」
「っ、モーナさん…………そうですね」
モーナは決して失敗してはいけない、とは言わなかった。
新人時代、何度も先輩たちに助けてもらったモーナとしては、そんな事恥ずかしくて絶対に言えないという事情もあり、寧ろモーナや他の後輩女性騎士たちが失敗して困っていたら、積極的に助けようと思っている。
「アラッド君には物凄い感謝してるよ。物凄い感謝してるけど……あの子と自分を比べるのはダメだよ!!!!」
ルリナの上司であるモーナ……の、更に上司である団長のディーネはアラッドの母、アリサの友人。
そのため、割と定期的に自分たちの近況を手紙で報告し合っている。
当然……その中には、アラッドがまだ十代前半であるにもかかわらず、クロが半殺しにされたことで怒りが爆発し……単身でトロール亜種に挑んだという事も書かれていた。
その内容を見た時、ディーネは思わず飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。
モーナたちもその話を聞いた時は半信半疑だったものの……トーナメントの決勝戦であの様な戦いぶりを魅せられては……信じるほかなかった。
「だから、ルリナちゃんのペースで経験を積んでいって、その時が来たら逃さず挑戦しよう!!!」
「……ありがとう、ございます」
本当に自分は先輩たちに恵まれている。
そう思いながら休日の自主訓練を終え、少し遅めのランチへ向かおうと思った時……一通の手紙がルリナの元に届いた。
(…………………………………………本当に、モーナさんの言う通りね)
届いた手紙には、おおよそギーラスやガルアと同じ様な内容が書かれていた。
しっかり手紙を読んだうえで……弟に非がないことは十分に理解した。
ただ……アラッドと比べて、自分もあれぐらいはっちゃけなければ!!! ……と思うことはなく、改めて自分は自分なりのペースで進もうと心に誓うルリナだった。
703
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる