813 / 1,361
八百十二話 本当に残念
しおりを挟む
「……先輩、最近あの三人組を見ませんね」
昼過ぎ頃の冒険者ギルド内で働く受付嬢が、ふと思い出したかのように呟いた。
「アラッドさんたちの事ね。そういえば……確かに最近見ないわね」
「また依頼は受けずに、気ままに狩りを行ってるのでしょうか?」
「かもしれないわね」
アラッドたちが街から出て活動する日、三人は必ずしも冒険者ギルドに寄ってはいなかった。
理由は特に珍しくはなく、金に困っていないから。
それをギルド側もある程度把握しており……三人が偶に気ままに狩りを行ない、溜まった素材などを売却しに来ることいった流れも把握していた。
「それが、別の街に移ったのかもしれませんね」
「それは……少し残念ですね」
残念と呟いた受付嬢は、アラッドやスティームといった冒険者として活動しているが、実際は貴族の令息といった玉の輿を狙っていた訳ではなく、純粋に三人が売却しに来る素材に対して有難さを感じていた。
「アラッドさんたち、この寒さでも全く気にせず連日の様に外に出てたらしいですからね」
「防寒対策のマジックアイテムを装備してたらしいけど……それでもってツッコみたくなったわ」
雪原や雪山での探索に慣れている冒険者であっても、一度探索を終えれば最低でも一日……基本的に二日か三日は休日を取りたい。
それほど体力を消費させられる環境であり、探索慣れしているからといって、容易に消費を抑えられるものではない。
「全ての素材を売ってくれてた訳じゃないけど、本当にびっくりするぐらい売却してくれたお陰で、今年もなんとかなりそうね」
基本的に気温が低く、寒い時期は本当に寒くなる。
その為、一定の時機に突入する前に、街全体で備える取り組みを行うのだが……百パーセントと完全に備えられるかと言えば……やや怪しい。
雪山や雪原などを主な生息地とするモンスターの錬金術に使える素材などは、貴重な収入源。
勿論肉などに関しても、全ての冒険者がアイテムバッグやリングを持っているわけではなく……一般的な森、草原などと違ってその場で解体を行うのに向かない環境であるため、丸々持って帰る方が効率が良いのだが、出来るパーティーが限られている。
「当然と言えば当然の事なんでしょうけど……本当に強かったですね、アラッドさんたち」
「そうね。この街を拠点にしてくれないかって、本気で思うぐらいにね」
アラッドたちは討伐したBランクモンスターの素材に関しては、肉などの食べられる物や、アラッドが討伐したモンスターのキャバリオンの素材として使える物などは売却しなかったが、その他の素材に関してはギルドで売却していた。
キャバリオン以外のマジックアイテムを造れるアラッドだが、自分の腕ではまた使いこなせる素材ではないと判断していた。
肉に関しても必要以上に溜め込むことはなく、ある程度は売却しており、ここ最近で一番ギルドに貢献した冒険者たちは誰かと問われれば……受付嬢たちは間違いなくアラッドたちだと答える。
「そう考えると……あの冒険者たち、よくアラッドさんたちの事を嗤えましたね」
以前、アラッドたちがクエストボードを見ながら、目に映ったヘイルタイガーやブリザードパンサーといったモンスターたちと戦ってみたいという言葉に反応し……比較的若い冒険者たちが三人の事を小バカにするように嗤うという事件があった。
事件という言葉を聞いて、大袈裟ではないかとツッコむ者がいるかもしれない。
しかし、ウィラーナの冒険者ギルドの職員たちにとっては、決して笑いごとで済ませる話ではなかった。
「そうね…………彼等の事を良く知らなかったとはいえ、あれは本当に肝が冷えたわ」
アラッドに非はまったくないのだが、結果としてある冒険者をギルドから追放する件に関わったことがある。
冒険者ギルドから見て、アラッドはここ一年と少しの間でいくつもの功績をたたき上げ、かつ侯爵家の令息という……超新星とほんの少しの恐ろしさが混ざった存在。
諸々の事情を考慮すれば、アラッドの一声で冒険者を追放しなければならないと判断するのは……決して冒険者ギルドの早計とは言えない。
「嫉妬するという気持ちは解らなくもないけど、冒険者なのだから……もう少しその辺りを考えて言葉を発してほしいわ」
受付嬢として数年以上の実務経験がある彼女。
容姿は受付嬢らしく整っているが、受付嬢として働き始めた当時……現在は受付嬢たちを纏める立場として働いている上司の美しさに嫉妬した経験がある。
とはいえ、嫉妬したからといってどうこう出来るわけがなく、仕事が出来る者が失われれば、そのしわ寄せが襲い掛かってくるだけ。
基本的に嫌がらせなどをしようとしても、メリットなど欠片もない。
加えて、される側も潰したところで直ぐに使える新人が入ってくるわけでもないため、気にするだけ無駄と判断することが多い。
だが……冒険者たちは、物理的な力がある。
ギルド内で起こる件に関しては口を出せるが、外で起こる事に関しては口を出せず……仮にアラッドたちが裏で嗤った者たちと軽くお話をしたとしても、それはそれで致し方ないと思われるだけ。
「なんだが、今となってはって話ですけど、一度ぐらい死なず……本当の意味で心が折れないぐらいにはボコボコにして貰った方が良かったのではと思います」
「……上手くいく保証はないけれど、同意はするわ」
二人は揃って大きなため息を吐きつつも、上司に怒られない様に真面目に手を動かし続けた。
昼過ぎ頃の冒険者ギルド内で働く受付嬢が、ふと思い出したかのように呟いた。
「アラッドさんたちの事ね。そういえば……確かに最近見ないわね」
「また依頼は受けずに、気ままに狩りを行ってるのでしょうか?」
「かもしれないわね」
アラッドたちが街から出て活動する日、三人は必ずしも冒険者ギルドに寄ってはいなかった。
理由は特に珍しくはなく、金に困っていないから。
それをギルド側もある程度把握しており……三人が偶に気ままに狩りを行ない、溜まった素材などを売却しに来ることいった流れも把握していた。
「それが、別の街に移ったのかもしれませんね」
「それは……少し残念ですね」
残念と呟いた受付嬢は、アラッドやスティームといった冒険者として活動しているが、実際は貴族の令息といった玉の輿を狙っていた訳ではなく、純粋に三人が売却しに来る素材に対して有難さを感じていた。
「アラッドさんたち、この寒さでも全く気にせず連日の様に外に出てたらしいですからね」
「防寒対策のマジックアイテムを装備してたらしいけど……それでもってツッコみたくなったわ」
雪原や雪山での探索に慣れている冒険者であっても、一度探索を終えれば最低でも一日……基本的に二日か三日は休日を取りたい。
それほど体力を消費させられる環境であり、探索慣れしているからといって、容易に消費を抑えられるものではない。
「全ての素材を売ってくれてた訳じゃないけど、本当にびっくりするぐらい売却してくれたお陰で、今年もなんとかなりそうね」
基本的に気温が低く、寒い時期は本当に寒くなる。
その為、一定の時機に突入する前に、街全体で備える取り組みを行うのだが……百パーセントと完全に備えられるかと言えば……やや怪しい。
雪山や雪原などを主な生息地とするモンスターの錬金術に使える素材などは、貴重な収入源。
勿論肉などに関しても、全ての冒険者がアイテムバッグやリングを持っているわけではなく……一般的な森、草原などと違ってその場で解体を行うのに向かない環境であるため、丸々持って帰る方が効率が良いのだが、出来るパーティーが限られている。
「当然と言えば当然の事なんでしょうけど……本当に強かったですね、アラッドさんたち」
「そうね。この街を拠点にしてくれないかって、本気で思うぐらいにね」
アラッドたちは討伐したBランクモンスターの素材に関しては、肉などの食べられる物や、アラッドが討伐したモンスターのキャバリオンの素材として使える物などは売却しなかったが、その他の素材に関してはギルドで売却していた。
キャバリオン以外のマジックアイテムを造れるアラッドだが、自分の腕ではまた使いこなせる素材ではないと判断していた。
肉に関しても必要以上に溜め込むことはなく、ある程度は売却しており、ここ最近で一番ギルドに貢献した冒険者たちは誰かと問われれば……受付嬢たちは間違いなくアラッドたちだと答える。
「そう考えると……あの冒険者たち、よくアラッドさんたちの事を嗤えましたね」
以前、アラッドたちがクエストボードを見ながら、目に映ったヘイルタイガーやブリザードパンサーといったモンスターたちと戦ってみたいという言葉に反応し……比較的若い冒険者たちが三人の事を小バカにするように嗤うという事件があった。
事件という言葉を聞いて、大袈裟ではないかとツッコむ者がいるかもしれない。
しかし、ウィラーナの冒険者ギルドの職員たちにとっては、決して笑いごとで済ませる話ではなかった。
「そうね…………彼等の事を良く知らなかったとはいえ、あれは本当に肝が冷えたわ」
アラッドに非はまったくないのだが、結果としてある冒険者をギルドから追放する件に関わったことがある。
冒険者ギルドから見て、アラッドはここ一年と少しの間でいくつもの功績をたたき上げ、かつ侯爵家の令息という……超新星とほんの少しの恐ろしさが混ざった存在。
諸々の事情を考慮すれば、アラッドの一声で冒険者を追放しなければならないと判断するのは……決して冒険者ギルドの早計とは言えない。
「嫉妬するという気持ちは解らなくもないけど、冒険者なのだから……もう少しその辺りを考えて言葉を発してほしいわ」
受付嬢として数年以上の実務経験がある彼女。
容姿は受付嬢らしく整っているが、受付嬢として働き始めた当時……現在は受付嬢たちを纏める立場として働いている上司の美しさに嫉妬した経験がある。
とはいえ、嫉妬したからといってどうこう出来るわけがなく、仕事が出来る者が失われれば、そのしわ寄せが襲い掛かってくるだけ。
基本的に嫌がらせなどをしようとしても、メリットなど欠片もない。
加えて、される側も潰したところで直ぐに使える新人が入ってくるわけでもないため、気にするだけ無駄と判断することが多い。
だが……冒険者たちは、物理的な力がある。
ギルド内で起こる件に関しては口を出せるが、外で起こる事に関しては口を出せず……仮にアラッドたちが裏で嗤った者たちと軽くお話をしたとしても、それはそれで致し方ないと思われるだけ。
「なんだが、今となってはって話ですけど、一度ぐらい死なず……本当の意味で心が折れないぐらいにはボコボコにして貰った方が良かったのではと思います」
「……上手くいく保証はないけれど、同意はするわ」
二人は揃って大きなため息を吐きつつも、上司に怒られない様に真面目に手を動かし続けた。
686
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる