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九百六話 先輩に相談
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「なぁ、ちょっと良いか」
「ん? ……珍しいな」
夕食を食べ終えた後、アラッドは簡易風呂でスティームやレパレスたちと汗を流し、今は一人で夜風に当たっていた。
そんな中、声を掛けてきたのは自分の事を間違いなく嫌っている人物……ソルだった。
「フローレンスが関わらなければ、俺に話しかけてくることなんてあり得ないと思ってたんだが」
「ッ…………悪かった。いや、すいませんでした」
痛いところを突かれたソルは、苦々しい表情を浮かべながらも、頭を下げた。
(……今日、生の肉とかは食べてないと思うんだが?)
何か変な物を食べたのか? と思い、先程食べた夕食のメニューを思い出すも、頭をやられるような物は食べておらず、肉に関してもしっかりと中まで火を通していた。
「…………まぁ、良いか。それで、俺に話しかけてきたという事は、何か訊きたいことがあるんだよな」
「あぁ……狂化について、話を訊きたい」
何の因果か、ソルは嫌っている筈のアラッドが持つ手札……切り札とも言えるスキル、狂化を会得してしまった。
なんで……なんでこのスキルなのだとぶつけようのない怒りを持った。
だが、それでも激戦の中で追い込まれた際、戦況をひっくり返せれる手札となる。
「まず、あんたはあれを、どうやって手に入れたんだ」
「前に話したかもしれないが、クロがまたブラックウルフの頃に、トロールの亜種に遭遇した。クロが俺を庇って殺されかけた……結果死んでなかったんだが、俺はクロが死んだと思った。そこから先は、あまりよく覚えていない。ただ……持てる力を全て使って、全力でトロール亜種を殺した。それだけは、なんとなく覚えてる」
(ッ、本当に……本当におかしいな、こいつ)
出会いがそこまで浅くないからこそ、嘘ではないと解る。
クロがまだブラックウルフだった時、アラッドが何歳だったのかは知らないが、少なくとも……今のソルは、一人でトロール亜種を討伐出来る気がしない。
「実はあんたの従魔が生きてるって知れたからこそ、狂気に飲まれなかった、ってところか」
「察しが良いな。幸いにもトロール亜種を討伐することは出来たが、あの時復活したクロの声が聞こえなかったら、護衛の騎士たちに襲い掛かってただろうな……そういうのが、冒険者になってからも一度だけあった」
狂化という見るからにリスク、デメリットのある技を扱う者にとって、それは恥。
だが、アラッドは自分と同じスキルを持っている者が真剣に相談に来たからこそ、その恥を隠そうとはしなかった。
「冒険者になってからも、そんな事があったのかい?」
「狂化を使うなら、戦いが長引けば長引くほど、狂気が暴走しようとするのは知ってるだろ。冒険者になってからまだ一年も経ってない時に、そういう奴と戦うことになったのか」
「……ひとまず、倒しはしたけど、危なかったってわけかい」
「そういう事だ。その時も、相棒の声に助けられた……んで、お前はどうやって狂化を会得したんだ?」
「私の場合は……自分への、情けなさが爆発したって言うか」
あるCランクモンスターとソロで戦う状況があり、あまり状況は芳しくなく、敗北の色が濃かった。
その時、ソルは負の感情を目の前の自分を追い込んでいるモンスターや、一人で戦っているという状況などではなく……今現在、膝を付き追い詰められている自分に怒りを覚えた。
結果、会得した狂化を無意識に発動し、討伐には成功し……アラッドの時とは違って魔力が切れてしまい、強制的に狂化状態が解除された。
離れた場所で戦っていたルーナたちが駆け付けたことで、最悪の事態に発展することはなかった。
「なるほどな……それで、俺とスキルが被ってるから、これまであんまり実戦で使ってこなかったと」
「ッ! …………そうだよ」
「別に俺はお前の先輩とかじゃないから、怒ったりする気はない。ただ、狂化に関してはなぁ…………お前がメインで訊きたい事は、後衛のルーナとどうすれば上手く戦えるか、で合ってるか」
「あぁ、そうだ。何度か、使わないと勝てない、生き残れない場面っていうのがあった。ただ……振り返った時、自分でも上手く戦えてると思えなかった」
これまで完璧だと、そこら辺のタッグを組んでる連中たちよりも自分たちのコンビネーションの方が優れてると、本気で思っていた。
その自信は傲慢ではなく、確かな鍛錬と実績の重なりの上に成り立つもの。
だが、ソルが狂化をしようした瞬間……そのコンビネーションはあっけなく崩れ去った。
「私たちの強味は、間違いなくそこだ。でも、私は…………自分の狂気を、上手く扱えてなくて……あんたと、従魔のクロは、どう上手く戦ってるんだ」
「……………………俺らは、付き合いがもう……十年近いからな」
正直なところ、トロール亜種の一件でアラッドは狂化を会得し、クロはCランクのブラックウルフから二段飛ばしの進化を果たし、Aランクモンスターに至った。
そのため、二人揃って全力中の全力を出して戦うということはなかった。
とはいえ、ここ最近だと二人はAランクドラゴンである轟炎竜に挑み、見事勝利を掴み取っていた。
(とはいえ、こいつが欲しいのはそういう理由じゃないんだよな)
時間が解決してくれる。
そんな曖昧以外の答えがあるか否か……アラッドは深く……深く、真剣に考え込んだ。
「ん? ……珍しいな」
夕食を食べ終えた後、アラッドは簡易風呂でスティームやレパレスたちと汗を流し、今は一人で夜風に当たっていた。
そんな中、声を掛けてきたのは自分の事を間違いなく嫌っている人物……ソルだった。
「フローレンスが関わらなければ、俺に話しかけてくることなんてあり得ないと思ってたんだが」
「ッ…………悪かった。いや、すいませんでした」
痛いところを突かれたソルは、苦々しい表情を浮かべながらも、頭を下げた。
(……今日、生の肉とかは食べてないと思うんだが?)
何か変な物を食べたのか? と思い、先程食べた夕食のメニューを思い出すも、頭をやられるような物は食べておらず、肉に関してもしっかりと中まで火を通していた。
「…………まぁ、良いか。それで、俺に話しかけてきたという事は、何か訊きたいことがあるんだよな」
「あぁ……狂化について、話を訊きたい」
何の因果か、ソルは嫌っている筈のアラッドが持つ手札……切り札とも言えるスキル、狂化を会得してしまった。
なんで……なんでこのスキルなのだとぶつけようのない怒りを持った。
だが、それでも激戦の中で追い込まれた際、戦況をひっくり返せれる手札となる。
「まず、あんたはあれを、どうやって手に入れたんだ」
「前に話したかもしれないが、クロがまたブラックウルフの頃に、トロールの亜種に遭遇した。クロが俺を庇って殺されかけた……結果死んでなかったんだが、俺はクロが死んだと思った。そこから先は、あまりよく覚えていない。ただ……持てる力を全て使って、全力でトロール亜種を殺した。それだけは、なんとなく覚えてる」
(ッ、本当に……本当におかしいな、こいつ)
出会いがそこまで浅くないからこそ、嘘ではないと解る。
クロがまだブラックウルフだった時、アラッドが何歳だったのかは知らないが、少なくとも……今のソルは、一人でトロール亜種を討伐出来る気がしない。
「実はあんたの従魔が生きてるって知れたからこそ、狂気に飲まれなかった、ってところか」
「察しが良いな。幸いにもトロール亜種を討伐することは出来たが、あの時復活したクロの声が聞こえなかったら、護衛の騎士たちに襲い掛かってただろうな……そういうのが、冒険者になってからも一度だけあった」
狂化という見るからにリスク、デメリットのある技を扱う者にとって、それは恥。
だが、アラッドは自分と同じスキルを持っている者が真剣に相談に来たからこそ、その恥を隠そうとはしなかった。
「冒険者になってからも、そんな事があったのかい?」
「狂化を使うなら、戦いが長引けば長引くほど、狂気が暴走しようとするのは知ってるだろ。冒険者になってからまだ一年も経ってない時に、そういう奴と戦うことになったのか」
「……ひとまず、倒しはしたけど、危なかったってわけかい」
「そういう事だ。その時も、相棒の声に助けられた……んで、お前はどうやって狂化を会得したんだ?」
「私の場合は……自分への、情けなさが爆発したって言うか」
あるCランクモンスターとソロで戦う状況があり、あまり状況は芳しくなく、敗北の色が濃かった。
その時、ソルは負の感情を目の前の自分を追い込んでいるモンスターや、一人で戦っているという状況などではなく……今現在、膝を付き追い詰められている自分に怒りを覚えた。
結果、会得した狂化を無意識に発動し、討伐には成功し……アラッドの時とは違って魔力が切れてしまい、強制的に狂化状態が解除された。
離れた場所で戦っていたルーナたちが駆け付けたことで、最悪の事態に発展することはなかった。
「なるほどな……それで、俺とスキルが被ってるから、これまであんまり実戦で使ってこなかったと」
「ッ! …………そうだよ」
「別に俺はお前の先輩とかじゃないから、怒ったりする気はない。ただ、狂化に関してはなぁ…………お前がメインで訊きたい事は、後衛のルーナとどうすれば上手く戦えるか、で合ってるか」
「あぁ、そうだ。何度か、使わないと勝てない、生き残れない場面っていうのがあった。ただ……振り返った時、自分でも上手く戦えてると思えなかった」
これまで完璧だと、そこら辺のタッグを組んでる連中たちよりも自分たちのコンビネーションの方が優れてると、本気で思っていた。
その自信は傲慢ではなく、確かな鍛錬と実績の重なりの上に成り立つもの。
だが、ソルが狂化をしようした瞬間……そのコンビネーションはあっけなく崩れ去った。
「私たちの強味は、間違いなくそこだ。でも、私は…………自分の狂気を、上手く扱えてなくて……あんたと、従魔のクロは、どう上手く戦ってるんだ」
「……………………俺らは、付き合いがもう……十年近いからな」
正直なところ、トロール亜種の一件でアラッドは狂化を会得し、クロはCランクのブラックウルフから二段飛ばしの進化を果たし、Aランクモンスターに至った。
そのため、二人揃って全力中の全力を出して戦うということはなかった。
とはいえ、ここ最近だと二人はAランクドラゴンである轟炎竜に挑み、見事勝利を掴み取っていた。
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