スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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九百三十一話 枠に収まらない変化

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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、っつ……はぁ、はぁ…………随分と、面倒な事、してくれたな」

「…………」

「なんで、俺が……元に? 戻ったか解らねぇ、って顔だな」

そう言いながら、アラッドは隠すことなくアイテムバッグの中からポーションを取り出した。
自分で刺した傷ではあるが、当然痛い。

先程まで、そんな隙を晒せば闇竜に邪魔されると確信していた。

だが……何故かデネブはその場から動くことはなく、アラッドが回復するのを許してしまった。

「そうだね……君は、僕がダークランスに混ぜ合わせた幻惑系の闇で、狂気に飲まれる筈だった」

「なるほどな。そういうのを仕込んでたのか……本当に頭が回る個体だな」

ポーションで傷は塞がったものの、脚を突き刺した際に流れた血までは戻らないため、少しふらつくアラッド。

「っと、ふぅーーーー……お前がダークランスに何かを仕込んだ靄が俺の体に浸食して来る際……嫌な予感がした。最も近い経験で言えば、初めて狂化のスキルを得て、発動した時か」

自分の意思じゃないのに、体が動こうとする。
別の何かが、自分の体を乗っ取ろうとする……そんな感覚に近かった。

だからこそ、アラッドは咄嗟にあるスキルを発動した。

「にしても、なんでそういう技を発動した? まぁ、確定で相手を暴走させることが出来るなら、使わない手はないと思うけど」

「……君は、狂化のスキルを持っているでしょう。僕は過去に、見た目が異なるモンスターと人間に出会った事があるんだけど、二人とも醸し出す雰囲気は同じだったんだ」

「狂化を持ってる奴の空気、か……俺は持ってる側だから解らないが、感覚の鋭い奴は、そういう違いに気付くのか……それで、俺を使ってスティームたちを殺させようとしたって訳か」

「そうだね」

デネブは、一切悪びれることなく、その通りだと答えた。
自分は労力を消費せず、厄介な残りの人間たちをアラッドに始末させようと考えていた。

だが、アラッドはその選択肢を取った闇竜デネブに対し、特に怒りを爆発させることはなかった。

行っていた戦いは、野性の殺し合い。
基本的に卑怯もクソもない戦いであるため、今回デネブが取った行動に難癖を付けるのはナンセンス過ぎた。

「そうか。で、俺がどうやってお前の技に抗ったかだが、身に迫っている危険がどういう危機なのかなんとなく察せたからこそ、意識が飛ぶ前に手を打つことが出来た」

スキル糸、マリオネット。

相手の体内に侵入して操る糸は、相手の体だけではなく、自分の体にも入れて操ることが出来る。

本来、アラッドは自分の体を使う際には、腕や脚が砕けた場合の補助に使う予定だった。
今回は狂気による暴走が強く、直ぐに実行するには至らなかったが、それでも使い手から命を受けた通り……糸はアラッドの右手を操り、渦雷を自身の脚に突き刺すことが出来た。

「どういったスキルか気になるところだけど、さすがに教えてくれないよね」

「そういうものだからな」

二人が行っているのがガチな模擬戦ではなく、本気の殺し合い。

ただ、自分の体を操ることが出来る。そこまでしか言えなかった。

「はぁ~~~~~~~~…………もう少し、あまり臆病になり過ぎず、どうにかして人間たちの情報を集めておくべきだったかな。君ぐらいの冒険者なら、直ぐに集まりそうだしね」

「かもしれないな」

今、冒険者の中で誰が一番ホッと冒険者かと聞かれれば、同業者たちの多くはアラッドだと答える。

だが……アラッドはあまり糸という存在を知らしめてはおらず、糸に関しては多少調べただけでは得られない可能性が高かった。

「何はともあれ、企みは失敗したわけだが……どうする」

「逃がしてくれ、と言えば逃がしてくれるのかい」

冗談交じりに笑うデネブに対し……アラッドは渦雷をしまい、代わりに亜空間から羅刹を取り出した。

「いいや、そんな訳ないだろ」

帯刀、そして抜刀……静かに狂化を発動するアラッド。

「……ふっ、ふっふっふ……あっはっは!!!!!!!! 凄いね、君は……君よりも長く生きてる筈なんだけど、君みたいな人間を見たことはないよ」

額の片側から角が生えている。
そんな人間は見たことがあるも、その人間はオーガと人間のハーフであり、そうなることもあると、多くの人間が知っており、知恵を……高い思考力を持つモンスターも知っている個体はいる。

だが、アラッドは間違ないく、狂化を発動してから、額の片側から角が生えた。

「そうか。長く生きるドラゴンが見たことないってのは、割と褒め言葉なのかもな。でもあれだぞ、俺の知人には、獣人の特徴を持たないのに、獣心を解放することが出来る奴もいる。祖先に人族以外の種族がいれば、割と俺みたいな人間はいるのかもしれないぞ」

「なるほど。可能性とし絵はあり得るだろうね……ただ、やはり僕は、君をただの人間とは思えないよ」

才能が違う、積み重ねてきた努力や経験の数が違う、そもそもそこまで鍛錬を積み重ねられる異常性が異なる……そのどれもが、違う。

(片方に、もしくは二つの角が生えるまでなら解る。しかし、その瞳はなんだい、アラッド君)

狂化を発動したと同時に、アラッドの方眼は……金色と化していた。
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