スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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九百八十二話 共通認識

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『…………アラッドに、任せるかな』

アラッドが殺せと言えば殺す。殺すなと言えば、殺さない。
それがクロの答えである。

『まぁ、殺さないとしても、どうにかして僕だけに怒りや殺意が向くようにする』

『…………』

『なんだよその顔は、ヴァジュラ』

『いや、ほら。クロさんて基本的に優しいじゃないっすか。だから……あ、悪役? になるのは、難しんじゃないかって思って』

ヴァジュラがクロを簡単に表すなら、強く優しい巨狼。
それが一番合っていると思っている。

『そうですね。ヴァジュラの言う通り、そこに関しては難しそうですね』

『っ、ファルまで……』

『事実を述べただけです。第一、クロはそういった態度を他者に取ってきたことがないでしょう』

『ん~~~~…………アラッドの、弟の…………ドラング、だったかな? そいつになら、吠えたことはあったと思うよ』

『ドラングと言うと……私の記憶が正しければ、才能に溢れている方の弟ではなく、問題児の方の弟ですね』

『そうそう、問題児!!!!』

従魔たちの中で、アラッドの弟であるドラングは問題児と認定されていた。

仮に従魔たちの詳細な会話を知った場合、アラッドはその言い方を止めようねと言うことはなく、ただただ爆笑する。

『アラッドさんを一方的にライバルだと思ってる奴でしたっけ』

『そんな感じの奴だね』

『いやぁ~~~、アラッドさんをライバルだと思うのは……超自分の力に自信ないと、無理じゃないっすか?』

戦闘大好きヴァジュラではあるが、闇竜と戦うアラッドを観て、仮に自分が本気で……己の全てを出し切り、スティームとの戦いで見せた金色の炎を使えたとしても、勝てる未来が想像出来ない。

『無理だよ』

『……こんな事を言うのもあれですが、正気かどうか疑います』

現在共に行動している面子の中であれば、一番共に行動しているクロだからこそ、ライバル視するだけ無駄だと思ってしまう。

ファルは一度もドラングと出会ったことはなく、戦いっぷりも見たことがない。
しかし、アラッドの本気の実力は見たことがあるからこそ、それこそ自分の主であるスティームほどの可能性、現時点でのフローレンスほどの戦闘力がなければ……ライバル視という行動は、全くの無意味だと感じる。

『っと、話しが脱線しましたね。確かに吠えたことはあるのかもしれませんが、それでもこの人間はウザい人間だから追い払おうと、その程度のものでしょう』

『…………』

『それだと、悪意を持って? 抑えつけようとしたことにはなりませんよ』

ファルの言う通りであるため、全くもって言い返せないクロ。

『……それなら、ディーナっていう冒険者の人が戦った方が良いのかな~~』

『っ!!!??? クロさん、折角超強い奴と戦える機会を逃しても良いんすか!!!!』

急にウキャ! ウキャキャキャ、キャキャキャキャっ!!!! と喋るヴァジュラ。

しかし、従魔たちが従魔たちだけで喋ることは珍しくなく、主人組は特に振り向かなかった。

『そりゃあ、戦えるなら戦いたいよ。虎竜なんて、名前からして強いモンスターなんでしょ。でも、僕はただ強い奴と戦いたいだけで、ディーナって冒険者は虎竜に復讐したいんでしょ』

クロとしては、ガルーレやヴァジュラが虎竜と戦いたいという思いが、自分と同じく強い奴と戦いたいだけだからこそ、アラッドも大丈夫だと言ってくれたため、譲るつもりはない。

だが、虎竜に復讐したいと思うものがいれば……話はまた別である。

『復讐するには、虎竜を倒すしかないでしょ』

『それはそうなんだろうとは思うっすけど……でも、勿体なくないっすか。だって……いや、俺全然詳しくないっすけど、虎竜って他のドラゴンに比べて全然遭遇出来ないドラゴンじゃないっすか』

クロの思いは……心情的には正しい。
しかし、ヴァジュラの言う事もまた間違ってはいない。

『だよねぇ……でもさ、ディーナって人はアラッドの手の骨を折れるほど強いんでしょ。だったら……む、無駄死? 犬死? することはないと思うんだよね』

『そうれば…………そうかもしれないっすね』

そういったところも主人に似ており、戦うだけ無駄な者が挑もうとしているのであれば、譲ろうという気持ちすら浮かばない。

だが、虎竜以外で復讐心を解消することは出来ず、虎竜に打ち勝つ可能性を持っているのであれば……本当のところ、惜しいと思ってはいるが……譲った方が良いのかと、思わなくもないクロ。

『私としてはどちらでも構わないですけど、先にクロが虎竜と戦い、そして虎竜に子がいた場合、私は私で……ヘイト、を自分に向けさせますよ』

『えっ!?』

『あっ、じゃあ俺もやるっす!!!!』

『良いんじゃないでしょうか』

『…………えっ、なんで?』

本当に意味が解らず、思わず首を傾げるクロ。

『アラッドさんたちではなく、私たちに敵意を向けることが出来れば、少なくとも人間に敵意が向くことはないでしょう』

『その子供が大きくなって強くなれば、その時に戦う楽しみってやつも生まれるっすからね』

『……ありがとう。ファル、ヴァジュラ』

仲間の、友達の優しさを感じ、クロは小さく微笑んだ。
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