スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千五話 過ごし方次第

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どうすれば強くなれるのか。
訪ねてきた者がまだ子供であれば、色々と伝えられることがある。

幼い子供ではなくとも、学生であればまだ伝えられる事がそれなりにあるが……声を掛けて来たバジェスタや先程手合わせを行った騎士たちは、全員就職している。

騎士という職業に就いている以上、仕事をしなければならない。

アラッドの言う通り、ただモンスターを倒し、盗賊を討伐するだけではなく、書類仕事や見回りといった仕事もしなければならない。
冒険者と違って最初からそれなりに良い固定給を貰えるが、その分自由に動ける時間が少ない。

「や、やっぱり今からだと、難しいですか」

「経験の積み方次第、としか言えませんね。まだ肉体的に全盛期がきてるわけではないと思うので、本当にこれからどう過ごすのか……それによって変わるかと」

「過ごし方次第…………解りました。ありがとうございます!!!」

元気良く返事を返し、同期たちの元へ向かい、早速どう過ごしていくかを話し合うバジェスタ。

(……我ながら、無茶な事言ってるんだろうなぁ)

アラッドは前世では成人しておらず、バイトもしたことがないため、労働の辛さを解っていない。

ただ……同じ疲れであっても、学校から帰って来た時に感じる疲れと、社会人たちが仕事を終えて帰って来た時に感じる疲れが別物ということぐらいは、なんとなく解る。

(俺も今は……一応冒険者として……働いている? とは思うが、やはり冒険という感覚が強いから……別なんだろうな)

アラッドも強敵と戦い終えた後は疲れるが、毎日毎日強敵と戦っているわけではない。
討伐依頼や採集依頼を受ける、もしくはなんとなく周辺の森や草原に出て狩りを行うこともあるが……アラッドにとって、それは楽しい冒険。

傍から見れば仕事と思われるかもしれないが、そこに紛れもない楽しさがある。

(騎士として日々仕事をしながら、更に何かをする………………いや、待てよ。騎士たちとしては、一応本業は民に危害を加えるモンスターや盗賊の討伐な訳だから、休日に鍛錬を行うのは普通か? それがスキルアップに、自身の命を守ることにも繋がる…………とはいえ、それだと心が休まる時間がないか)

騎士にとって、鍛錬は自身の命や仲間の命を守るためのスキルアップに繋がる。
それは間違いない事実。

ただ、本当の労働を知らないアラッドであっても、仕事仕事仕事に鍛錬鍛錬鍛錬を積み重ねれば、どこかで限界が来ることぐらいは予想出来る。

「な~~にそんな悩んでんの、アラッド」

「ガルーレ……騎士の方々は、毎日仕事をしてるんだなと思ってな」

「? そりゃそうなんじゃないの。騎士っていう職業に就いてるんだし」

「それはそうだが、俺たち冒険者とちがって、稼げば数日間休みを取って自身のスキルアップのためにじっくり時間を使おうとは出来ないだろ」

「あぁ~~~~、なるほど?」

「アラッド、騎士の方々の役目を考えれば、寧ろそれは当然だと思うよ。だって、民の命や主の身を護るのが騎士たちでしょ」

スティームとしては、アラッドの考えも解る事も解る。

だが、騎士たちはそれを承知の上で騎士としての道を選んだ。
だから、そこに関してどうこう言うのは違うのではないか……というのが、スティームの考えだった。

「……そうだな。それもそうか。しかし、そうなるとさっき俺に質問してきた騎士たちが求める答えはないままだろ」

「そう、だね。そこに関しては、なぁなぁで放っておいていい問題じゃないかもしれないね」

「だろ。とはいえ、俺は騎士たちの生活に関しては専門外だからな…………学園でその辺りも教えるのが、一番良いと思うんだな」

学園では、騎士としての心構えや必要な強さ、戦略知識などは当然教えてくれる。
しかし、騎士として活動を始めてから、仕事以外の時間をどう過ごすべきか……そこに関して、詳しい話をしてくれる教師はあまりいない。

「興味深い話だな」

「シュルドさん」

「私としても、休日でも欠かさず訓練を行っていた……ということぐらいしか、積み重ねてきたものを思い出せない。人よりも多く討伐任務などを受けていたとは思うが、それは彼等にとってアドバイスにはならないだろう」

「……かもしれませんね。まず、学園側が騎士を目指す学生に対して、そういった点を教えた方が良さそうですね」

「騎士としての活動が始まれば、自己鍛錬に使う時間も減ってしまうという事を、か……上手くいけば、学生たちの競争心を煽ることが出来るか」

学生であれば、逆にモンスターと戦える機会などが限られるが、授業が終われば時間まで鍛錬し放題であり、何より学問や戦闘に関する生徒の質問には基本的に答えなければならない教師たちに質問し放題である。

改めて、その環境がどれだけ恵まれているのか、学生たちは理解しなければならない。

「おそらく、可能かと」

「ふむ…………是非とも、各学園に伝えておこう。それにしても……少し話には聞いていたが、アラッド君はやはり教育者としてのセンスもあるようだな……冒険者を引退した後、騎士たちの教官にならないか?」

「お誘いは嬉しいですが、いつ冒険が終わるかは解らないので」

断られるであろう事はなんとなく解っていたが、それでもあっさりと勧誘を断られ、シュルドはほんの少しだけ残念な思いが零れた。
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