スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
1,034 / 1,361

千三十二話 炊きつく

しおりを挟む
「理想論とはいえ、教えていただき感謝します」

アラッドから教えられた内容に関して、一つか二つはディクセンも考えていた内容があった。

だが、まだ若く……アラッドよりも弱いディクセンからすれば、自分にとって絶対的な強者であるアラッドからアドバイスとして伝えられた方が、間違っていないのだと思える。

「どういたしまして。そうなると…………後は、まぁあれだな。強くなる為に、金は重用だよ」

「金、ですか」

「うん。金に意地汚くなってほしい訳じゃない。ただ、強くなる為には……万全な状態で冒険に挑むには、金が掛かるからな」

アラッドで言えば、ロングソードなどの武器はフールたちが用意してくれていた。
当然と言えば当然だが、衣食住……美味い食事をたらふく食べられて、睡眠に関してはリバーシなどで儲けた金を使い、快眠の効果が付与されたベッドで寝て上質な睡眠を取っていた。

「たとえば、俺は普段頑丈で良い切れ味を持つロングソードを使っているが、切り札として幾つかの武器を持っている」

そう言いながら、アラッドは亜空間から渦雷と羅刹、迅罰の三つを取り出した。

「っ……これ、が…………アラッド殿の、切り札……」

「そうだ。こっちの迅罰に関しては以前討伐した雷獣の成体の素材を使っているから、そこまで金は掛かっていないが、渦雷は昔……それなりに良い値段で買った。羅刹に関しては……元々買うつもりはなかったんだけどな」

「買うつもりはなかった……誰かから、プレゼントされたということか?」

「いや、そうじゃない。光栄な事と言えば光栄な事かもしれないが、ショーケースに入っていたんだが、無理矢理それを破って俺の前に来たんだ」

「…………………………ぶ、武器に選ばれた、という事で合っているか?」

人間が武器を選ぶのではなく、武器が人間を選ぶという話を初めて聞いたディクセン。

いったいどういう事なんだと、色々とツッコミたいところではあるが、目の前の人物ならばと……無理矢理納得出来ないことはなかった。

「そうなんだろうな……羅刹の値段は勿論、破壊してしまった? ショーケースの弁償も支払ったから、かなり良い値段になってしまった」

「そ、そんな事が…………」

何はともあれ、アラッドという人物が明らかに高価な武器を、切り札を有していることは解った。

「金があれば、強い武器を変える。武器だけじゃなく、防具や質の良いポーションにマジックアイテム……ダンジョンという場所を探索するのであれば、使用すれば地上に転移出来る帰還石も必要だろうな」

「……金はあってもあっても、足りなさそうだな」

「手っ取り早い方法は、討伐したモンスターの素材を冒険者ギルドで売ることだな」

「それは、冒険者たちに喧嘩を売ることにならないか?」

「冒険者ギルドに入った際に、余計な事を口走らなければ大丈夫だと思うぞ。寧ろ、ダンジョン探索を視野に入れるなら、冒険者という存在と交流できるようになっておいた方が、寧ろ得かもしれない」

「なる、ほど…………」

まだまだ先の話であり、そもそもダンジョンを探索して強くなるという方法を許されるのかも解らない。

それでも……元々高いディクセンの向上心を更に燃え上がらせる結果となった。




「呑めるだろう」

「うん、まぁ……それなりに」

結局アラッドたちはバリアスティー家の屋敷に泊まることになり、夕食を食べ終えた後は……また新米騎士たちに頼まれ、訓練場でアドバイスをしながら模擬戦などを行っていた。

そんな中、スティームは父親であるラヴェスに誘われて私室に訪れ、高価なワインが注がれたグラスを渡された。

「……昼食時にも尋ねたが、冒険者として……アラッド君たちと上手くやれているか」

「うん。上手くやれてるよ……彼は、本当に優しいからね」

昼間にラヴェスに手の届く限り守り、共に戦うと伝えた件だけではなく普段から優しいと、スティームはワインを呑みながら機嫌よく語った。

「見た目に反して、とてもお人好しなんだな」

「ふふ、そうだね……面白いところで言えば」

気分が良くなったスティームは、剛柔という得物を手に入れる関係で、元々剛柔の使い手であった英雄の子孫と話し合い、そこで起こった出来事を伝えた。

「わざわざなんでそんなに強いのにと、と怒ったのか……確かに、そこに彼の優しさが滲み出てると言えるな」

「でしょ。歯向かってくる人には割と容赦ないけど、それでも反省する人には優しいしね」

「………………これからも、彼と冒険を続けていきたいか」

父親からの問いに、スティームは間を置かずに答えた。

「うん、そうだね。この先も……アラッドやガルーレと共に冒険したいね」

一緒にいて楽しい。
そう思える者は、スティームのまだそこまで長くない冒険者人生の中でも、それなりにいた。

ただ、アラッドほど一緒にいて楽しいと感じる冒険者は、他にいない。
だからこそ、アラッドが結婚して冒険者を引退するといった出来事がなければ……これからも、是非ともアラッドとガルーレと共に冒険を続けていきたい。

それが、スティームの噓偽りない気持ちであった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...