スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千五十三話 自慢

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SIDE リン

「…………」

ハーフドワーフのリンは、工房の中で出来上がった闇属性の戦斧の刃を研いでいた。

「………………こんなところかな」

完成した戦斧の刃は輝きを見せる。
その光は何処か鈍く……戦斧を扱う者にとっては、頼もしいと感じるなんとも矛盾した輝きを放っていた。

「……とりあえず、腕はそれなりに戻ってきたかな」

リンの視線の先にはロングソード、大剣、槍、双剣、短剣に刀と複数の武器が並んでいた。

それらの武器は、全てアラッドから渡された素材を元に造った物。
新米騎士、新米冒険者たちからすれば喉から手が出るほど憧れの品々であり、ベテランや腕の立つ上位冒険者たちからしても、売ってもらえるなら是非とも売って欲しいと思わせるほどの質を持つ。

だが……それらは全て、リンにとって本番を始める為のリハビリ作品。

「……ん~~~~~~~………………もう少し、何本か造った方が良いかな」

それなりに腕は戻ってきた。
そう感じるものの、アラッドから本番の際に使ってほしいと頼まれている素材を思い出し、不安が過ぎる。

加えて、アラッドから造ってほしいと頼まれた武器……薙刀は、これまでリンがあまり造ってこなかった武器であるため、まだ納得のいく作品が造れる!!!! という自信が、あまりなかった。

(ん~~~……そうだねぇ…………あまり時間がないのは解ってるけど、それでも不出来な品を造る訳にはいかない……あと、二本か三本だけ造ってみよう)

リンはアラッドから貰った素材だけではなく、過去に仕入れてまだ残っている水属性や雷属性の素材を取り出し、薙刀の製作に取りかかろうとした。

「よぅ、リン」

「っ、アラッドさん。どうも……どうかしたっすか?」

気合を入れ直したところで、自身の主人であるアラッドが入ってきた。

「進捗はどんなものかと思ってな」

そう言いながら、アラッドは部屋の端に掛けられている武器たちを見て……ニヤッと笑みを浮かべた。

「リン、こいつらを借りてくぞ」

「良いですけど、それは全部リハビリの武器たちですよ」

何に使うんだと尋ねると、これまたアラッドは楽し気な笑みを浮かべながら答えた。

「自慢する為だよ」

それだけ言うと、工房から出て行った。

本当にその為だけに持っていくのか、他に別の理由があるのではないか。
そんな考えが頭に浮かぶも……直ぐに先程アラッドが浮かべた笑みを思い出し、疑念は消えた。

「さてと、私も頑張らないとね」

誰に自慢する為に自分の武器を持って行った。
それだけで、リンにとっては更にやる気の炎が燃えがり、薙刀造りに没頭するのだった。




「……素晴らしい武器ですね」

「だろ」

工房から出た後、アラッドは本当にリンの武器を自慢していた。

「……ねぇ、アラッド。これって、全部リンさんが造った武器、だよね」

片方が火属性、もう片方が闇属性の双剣を振るいながら、スティームは製作者を言い当てた。

「あぁ、そうだぞ」

「リンさんってアラッドの迅罰とか、スティームの万雷を造ったハーフドワーフの人、だよね」

「そうだ」

アラッドたちが実家に戻って来てから、リンはアラッドに頼まれた仕事を完璧にこなすため、直ぐに腕を取り戻す為にリハビリ品を造り始めた。

そのため、二人はこの人があのハーフドワーフのリンなのだと知ってはいるが、実際に模擬戦などはしておらず、あまり深く話してもいなかった。

「本当に良い武器を造るね~~」

「…………」

闇属性の槍を振るいながら喋るガルーレの隣では、火属性の大剣を黙々と振るうソルがいた。

彼女も、リンというハーフドワーフが造った武器が、一流の職人レベルの武器だと認めている。
だが……何か思うところがあるのか、フローレンスやガルーレの様に、素直に褒められずにいた……が、とにかく振るうのが止められなかった。

「……彼女も、エリナさんやガルシアさんと同じく、アラッドの臣下という立場なのですよね」

「まぁ、そうだな……一応、形としては臣下か従者って感じではあるな」

アラッドとしてはそうは思っていないものの、外の人間たちが形付けるなら、そういった形となる。

(あの闇竜……以前、アラッドとクロが討伐したであろう轟炎竜の素材を使ているのでしょうが……本当に質の高い武器ですね)

身内の中に、質の高い素材を使い、上手く質の高い武器に昇華出来る職人がいる。
その事実に……フローレンスは少なからず羨ましさを感じていた。

当たり前の話だが、鍛冶師に武器を造ってもらうとなれば、その人物に対する技術料を払わなければならない。
当然と言えば当然の話であり、それを支払わずに造れというのは、ただの搾取でる。

だが……リンは、アラッドに買われた奴隷の一人。
現在は既に奴隷ではないものの、今更元いた場所に戻ろうというつもりはなく、自分を最悪の未来から救ってくれたアラッドに恩を返したい。

そう思っていたら、元々特技であった鍛冶を存分に行える環境を用意してくれた。

本人は珍しい、高価な武器を扱えて嬉しく、衣食住が最高レベルに揃っているため、報酬を寄越せなど口が裂けても言えなかった。

一流レベルの鍛冶師に、良い金額を支払わずに武器を造ってもらえる。
いかに公爵家の令嬢といえど、立場やその他を利用してもその状態をつくることは、相当難しかった。
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