スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千七十八話 何も思わない

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(降参、か)

自分たちはこれ以上戦うつもりはないという意志表示。
先程までアラッドたちの命を狙って攻撃した行動を考えれば、ふざけてるのかと叫びたくなるが……それでも目の前の冒険者が降参の言葉を口にし、両手を上げて降参のポーズを取っているのは間違いない。

戦争が始まって一日目でその行動を見るとは思っていなかったアラッド。

だが、降参の言葉を聞き、降参のポーズを見たからといって……戦意が緩むことはない。

「おいおい、俺の言葉が聞こえなかったのか? 降参だって言ってるだろ」

「降参か………………そうだな。本当に降参するというなら、全員素っ裸になれ」

「「「「「「「「「「はっ!!!!!?????」」」」」」」」」」

突然の提案に、冒険者たちは揃って驚きの声を上げる。

スティームやフローレンスも同じような表情を浮かべる中……ガルーレだけは爆笑していた。

「いや、ちょ」

「今度は俺が言おうか。俺の言葉が聞こえなかったのか」

「い、いや。聞こえたぜ。勿論聞こえたけどよ、そりゃいくらなんでも酷ぇんじゃねぇか」

「いいや、酷くはないな」

男の言葉を、アラッドは真正面からバッサリと斬った。
当然……男だけではなく、他の冒険者たちもアラッドの行動にドン引きである。

だが、アラッドにはアラッドなりの理由があった。

「降参するとは言ったが、まだお前たちは武器を持っている。マジックアイテムを身に付けている。武装している状態のお前たちを、どう信用しろと言うんだ」

「っ」

「それに、俺たちの様な戦いを生業にする者にとっては、例え武器がなくとも戦う手段がある。そして、空間収納のスキルを持つ者がいれば、直ぐに整えらえるだろう」

空間収納のスキルを持っている冒険者は少ないが……現在アラッドたちの前に現れた冒険者たちのレベル、ランクを考えれば……持っている者がいてもおかしくない。

ついでに言うと、中堅ランク以上の冒険者が有する武器であれば、離れていても使い手の元に戻って来る帰属の効果が付与されている場合がある。

そのため、武器を捨てて全裸になったところで、油断は出来ない。

「俺とかはまだ良いけど、一応女もいんだぜ」

「そうだな。だが、それがどうした。女という理由で本気でちやほやされると思ってるなら、冒険者という道に進まないと思うが」

「ぐっ」

ちくちくざくざくと正論で男を突き刺していくアラッド。

(それに、他にも気になるところがある)

己の勘だけを信じ、降参宣言をした冒険者を口撃している訳ではなかった。

「それに……降参するって言ったのは、あんただけだよな」

「それがどうしたって言うんだよ」

「戦争なんだ……俺は降参と言ったが、他の連中は降参とは言ってないからという屁理屈で、ッ!!!!!!!!」

全てを言い終わる前にリーダーらしく男が上げていた両腕を振り下ろして合図を出した。

すると、先程まで同じく両腕を上げていた冒険者たち、バレていないだろうと思って木影に隠れていた者たちは一斉に動き始めた。

(やっぱりか)

汚い、とは思わない。
ここが戦争という戦いの場だから、ではない。

油断させて攻撃を行う。
そういった戦法はモンスターとの戦いでも行う。
騎士対騎士の一騎打ちではないのだ……人によっては、騙し討ちをしない方が失礼だと語る者もいる。

アラッドはそこまで言う事はないが、自分たちを騙そうとしてきた同業者たちに対し、特に思うところはなかった。
寧ろ……早い段階で、まだ疲れがたまっていないタイミングでそういった手段を使ってくれて良かったとすら思っている。

(いるとは思っていたが、本当にやるんだな)

そういった手段を使う者が、戦争という戦場にいると知れた。
それだけでも……今後、重要な場面で心を鬼にすることが出来る。

「あん? ……ッ!!!!!!??????」

やはり戦うことになる。
それが解った瞬間、アラッドは左手でフィンガースナップ鳴らした。

それはアラッドたちの間で決めていた合図である。

その内容とは……本気で潰す、である。

「「「了解」」」

騙し討ちという戦法を取ってきた。
だが、それは彼らが弱いからではない。
平均以上の実力を有しており、中にはBランクの冒険者も存在する。

そう……彼らは冒険者だからこそ、最もアラッドたちを討伐出来て、尚且つ自分たちも生き残れる可能性が高い選択を選んだだけ。

それが解っているからこそ、アラッドは狂化を使用。
スティームは全身に赤雷を纏い、ガルーレは立体感知をフルに発動。
フローレンスは聖光雄化を発動。

文字通り……本気も本気。

「がっ!!!???」

「ぐそ、がッ!!!!」

「ああああああああああああ!!!???」

「ぬぅっ!!!!!!!!!」

「ふざ、けんな、よ」

「ぬぅうううああああああああ!!!! ぁ……あ」

吼える声、零れる悪態に、鳴り響く悲鳴。
まさに戦争中と言える戦況であり、現場にいる者たちからすれば、文字通り地獄絵図。

そう……片方の者たちにとっては、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

(騙し討ちも、ガチの戦いでも無理、か…………出来るんなら、本当に降参……したかった、ぜ)

二、三……五、十、二十……三十に届かない辺りで、リーダーであった男の首が渦雷によって刎ね飛ばされた。
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