1,082 / 1,361
千八十話 素直に、受け取る
しおりを挟む
「僕も……あまり偉そうな事は言えないけど、ガルーレの言う通りアラッドは下手に変わる必要はないと思う」
「私もお二人と同じです。ただ強く、恐ろしいだけがアラッドではありません」
「………………そうか」
ガルーレだけではなく、スティームとフローレンスの二人からも、変わる必要はないのだと……その優しさを持っているからこそアラッドなのだと、自分を肯定され……少し、心が落ち着いた。
(ふぅーーーーー……リーダーなのに、こうも慰められるとはな…………俺もまだまだ子供ということか)
実際のところ、アラッドはここ最近ようやっと前世の年齢に今世の年齢が追い付いてきたばかり。
そのため、まだまだ心は大人ではなく青年……子供な部分が大半を占めていてもおかしくはない
それに、深く悩んでしまうリーダーを慰める三人ではあるが、ガルーレたちもアラッドと比べて精神に大きな余裕がある訳ではなかった。
ガルーレはある程度予想は出来ていたものの、自分たちを狙ってくる騎士や冒険者たちが普通に強く、アラッドたちやヴァジュラたちといった非常に頼れる仲間がいるとはいえ、どの戦いも決して温くない。
戦闘大好きアマゾネスである彼女にとっては、どれも口端が吊り上がってしまう戦いなのだが……だからといって、余裕ぶっこける状態ではない。
そのため、正直なところ自分が生き残り、仲間たちが無事であることを確認する……それで一杯一杯なところがある。
スティームも表情に出していないだけで、戦争という戦いに関してそれなりに思うところがある。
ただ、それでも貴族令息時代に培ってきたポーカーフェイスを利用し、表に出さないようにしていた。
自分までその様な表情を出してしまえば、リーダーであるアラッドの負担になってしまうと考えていた。
(……私も、あまり人の事は言えませんね……しっかり、切り替えていきませんと)
そして、今回の戦争に騎士として参加しているフローレンスも……騎士とはいえ、戦争に参加するのは今回が初めて。
普段受けている任務の盗賊団退治とは違うと、身に染みて感じていた。
だが、騎士としての務めだと……騎士として生きていく以上、避けては通れないのだと、自身に言い聞かせていた。
「……すまない、落ち着けた。それじゃあ、移動しようか」
強い。
それは間違いない。
アラッドたちだけで、既に五十ほどの戦闘者たちを倒している。
これだけでも良い功績と言っても過言ではない。
ただ……全員、まだ二十を越えていない若僧である。
自分や自分たちのことで一杯になり、顔には出さずとも心の中では零れてしまう……それは、至極当然のことであった。
「ガゥ?」
「クロ………………いや、そういう訳にはいかない。ここでそういった真似をすれば、殺していった者たちに失礼だ」
間違いなくテンションは下がっている。
そんな主人を見て、クロは戦闘の際に自分たちがメインとなって戦おうかと提案した。
クロ、ファル、ヴァジュラはアラッドたちに付き従う従魔ではあるが、その根っこはモンスター。
自分たちの主人、その仲間たち……親しい者は、確かに守りたい。
だが、敵対する者たちに関しては、どうでもいいと思っている。
主人と出会うまで野性の中で生きてきた彼らにとって、それまでの戦いは常に戦争という戦場といっても過言ではなかった。
同族同士仲良くする者もいたが、同じウルフ系モンスター同士でも争う事は珍しくない。
だからこそ、自分だったら大丈夫だからこそ、アラッドにメインで戦う役割を変わろうかと提案した。
(クロに気を遣わせてしまうとは……情けないな………………違うな。素直に、ありがとうと受け取るべきか)
自分でも戦争が始まってからテンションが下がっているのが解る。
ただ、仲間たちが自身の悩んでしまう部分を、優しさだと伝えてくれたのを思い出し、どんどんテンションが落ちるであろう思考を止めようと判断。
どれだけ仲間たちが肯定してくれようとも、その本人が少しでもポジティブな方向に心を持っていこうとしなければ、そのままずるずるとネガティブな方向に心が流されてしまう。
「ワゥ………………っ、ワゥ」
「そうか。もう直ぐ衝突だ」
戦場では、自身の都合で完全に心を落ち着かせる時間は取れない。
敵対者からすれば、そんな事情は知ったことではなく……寧ろ仕留めるチャンス。
(切り替えろ。悩むのは全て終わってからだ)
敵の姿が見えた瞬間、おおよその戦闘力を把握し……今回はタンクが多い事を確認。
その瞬間、渦雷ではなく迅罰でもなく……羅刹を抜刀。
(全員……斬る)
並みのタンクたちではない事は重々承知している。
向こうもアラッドたちの接近、攻撃態勢を取っていることを把握し、大盾にそれぞれの魔力を纏い、その更に前に後衛の魔術師が壁を展開。
「フッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりにも厚い壁を前にすれば、左右から……もしくは真上から攻めようとしてくる。
そんなゴリディア帝国の者たちの予想を裏切り、アラッドは真正面から鬼の一閃を放つのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新作、「チートはズルくて卑怯? バカ野郎、だから使うのが楽しいんだろう!!! ゲームのやり過ぎで死んだ大学生のセカンドライフ」の連載を始めました!!!!
ファンタジーカップにも出してるので、是非読んでお気に入りしてくれると嬉しいです!!!
よろしくお願いします。
「私もお二人と同じです。ただ強く、恐ろしいだけがアラッドではありません」
「………………そうか」
ガルーレだけではなく、スティームとフローレンスの二人からも、変わる必要はないのだと……その優しさを持っているからこそアラッドなのだと、自分を肯定され……少し、心が落ち着いた。
(ふぅーーーーー……リーダーなのに、こうも慰められるとはな…………俺もまだまだ子供ということか)
実際のところ、アラッドはここ最近ようやっと前世の年齢に今世の年齢が追い付いてきたばかり。
そのため、まだまだ心は大人ではなく青年……子供な部分が大半を占めていてもおかしくはない
それに、深く悩んでしまうリーダーを慰める三人ではあるが、ガルーレたちもアラッドと比べて精神に大きな余裕がある訳ではなかった。
ガルーレはある程度予想は出来ていたものの、自分たちを狙ってくる騎士や冒険者たちが普通に強く、アラッドたちやヴァジュラたちといった非常に頼れる仲間がいるとはいえ、どの戦いも決して温くない。
戦闘大好きアマゾネスである彼女にとっては、どれも口端が吊り上がってしまう戦いなのだが……だからといって、余裕ぶっこける状態ではない。
そのため、正直なところ自分が生き残り、仲間たちが無事であることを確認する……それで一杯一杯なところがある。
スティームも表情に出していないだけで、戦争という戦いに関してそれなりに思うところがある。
ただ、それでも貴族令息時代に培ってきたポーカーフェイスを利用し、表に出さないようにしていた。
自分までその様な表情を出してしまえば、リーダーであるアラッドの負担になってしまうと考えていた。
(……私も、あまり人の事は言えませんね……しっかり、切り替えていきませんと)
そして、今回の戦争に騎士として参加しているフローレンスも……騎士とはいえ、戦争に参加するのは今回が初めて。
普段受けている任務の盗賊団退治とは違うと、身に染みて感じていた。
だが、騎士としての務めだと……騎士として生きていく以上、避けては通れないのだと、自身に言い聞かせていた。
「……すまない、落ち着けた。それじゃあ、移動しようか」
強い。
それは間違いない。
アラッドたちだけで、既に五十ほどの戦闘者たちを倒している。
これだけでも良い功績と言っても過言ではない。
ただ……全員、まだ二十を越えていない若僧である。
自分や自分たちのことで一杯になり、顔には出さずとも心の中では零れてしまう……それは、至極当然のことであった。
「ガゥ?」
「クロ………………いや、そういう訳にはいかない。ここでそういった真似をすれば、殺していった者たちに失礼だ」
間違いなくテンションは下がっている。
そんな主人を見て、クロは戦闘の際に自分たちがメインとなって戦おうかと提案した。
クロ、ファル、ヴァジュラはアラッドたちに付き従う従魔ではあるが、その根っこはモンスター。
自分たちの主人、その仲間たち……親しい者は、確かに守りたい。
だが、敵対する者たちに関しては、どうでもいいと思っている。
主人と出会うまで野性の中で生きてきた彼らにとって、それまでの戦いは常に戦争という戦場といっても過言ではなかった。
同族同士仲良くする者もいたが、同じウルフ系モンスター同士でも争う事は珍しくない。
だからこそ、自分だったら大丈夫だからこそ、アラッドにメインで戦う役割を変わろうかと提案した。
(クロに気を遣わせてしまうとは……情けないな………………違うな。素直に、ありがとうと受け取るべきか)
自分でも戦争が始まってからテンションが下がっているのが解る。
ただ、仲間たちが自身の悩んでしまう部分を、優しさだと伝えてくれたのを思い出し、どんどんテンションが落ちるであろう思考を止めようと判断。
どれだけ仲間たちが肯定してくれようとも、その本人が少しでもポジティブな方向に心を持っていこうとしなければ、そのままずるずるとネガティブな方向に心が流されてしまう。
「ワゥ………………っ、ワゥ」
「そうか。もう直ぐ衝突だ」
戦場では、自身の都合で完全に心を落ち着かせる時間は取れない。
敵対者からすれば、そんな事情は知ったことではなく……寧ろ仕留めるチャンス。
(切り替えろ。悩むのは全て終わってからだ)
敵の姿が見えた瞬間、おおよその戦闘力を把握し……今回はタンクが多い事を確認。
その瞬間、渦雷ではなく迅罰でもなく……羅刹を抜刀。
(全員……斬る)
並みのタンクたちではない事は重々承知している。
向こうもアラッドたちの接近、攻撃態勢を取っていることを把握し、大盾にそれぞれの魔力を纏い、その更に前に後衛の魔術師が壁を展開。
「フッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりにも厚い壁を前にすれば、左右から……もしくは真上から攻めようとしてくる。
そんなゴリディア帝国の者たちの予想を裏切り、アラッドは真正面から鬼の一閃を放つのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新作、「チートはズルくて卑怯? バカ野郎、だから使うのが楽しいんだろう!!! ゲームのやり過ぎで死んだ大学生のセカンドライフ」の連載を始めました!!!!
ファンタジーカップにも出してるので、是非読んでお気に入りしてくれると嬉しいです!!!
よろしくお願いします。
430
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
私は……何も知らなかった……それだけなのに……
#Daki-Makura
ファンタジー
第2王子が獣人の婚約者へ婚約破棄を叩きつけた。
しかし、彼女の婚約者は、4歳年下の弟だった。
そう。第2王子は……何も知らなかった……知ろうとしなかっただけだった……
※ゆるい設定です。ゆるく読んでください。
※AI校正を使わせてもらっています。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。
目覚めた先は、近江・長浜城。
自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。
史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。
そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。
「この未来だけは、変える」
冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。
これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。
「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。
※小説家になろうにも投稿しています。
世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~
fuwamofu
ファンタジー
魔力量ゼロの落ちこぼれとして勇者パーティを追放された少年リアン。
絶望の果てに始めた自由な旅の中で、偶然助けた少女たちが次々と彼に惹かれていく。
だが誰も知らない。彼こそが古代勇者の血を継ぎ、世界を滅ぼす運命の「真なる勇者」だということを──。
無自覚最強の少年が、世界を変える奇跡を紡ぐ異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる