スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千九十五話 止め止め

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(ん~~~~……うん!!! 止め止め!!!)

炎の騎士、ヴェラ・ラクローズと戦闘中のガルーレ。

先程まで何故ヴェラほどの騎士が、あまり男として魅力的な部分がないであろうケプトに惚れているのか……もしかしてただ純粋に惚れているのではなく、何かしらの力が働ているのではと考えていた。

ただ、それらしい考えに至りはしたものの、だからといってどうすれば良いのか解らない。
ガルーレはアラッドのように手札が多くなく、出来ることと言えば相手を思いっきりぶん殴り、蹴り飛ばして倒すこと。

(ぐっ!!! 攻撃の威力が、少し上昇した、ような……ここからが、本番ということねッ!!!!)

拳の重さ、衝撃の変化を感じ取り、ヴェラはヴェラで心の帯を締め直す。
より研ぎ澄まし、確実にガルーレを斬る。

ケプトは……ガルーレの事を求めていた。
多少の嫉妬はあれど、それについてどうこう言うつもりはない。

ただ…………腕や脚を切断するどころか、殺してしまうかもしれない。
それは嫉妬からくるものではなく、そうしなければ自分が負けてもおかしくないという焦燥感から来る判断。

(向こうも、ギアが上がった、感じねッ!!!)

ガルーレとしても、それは望むところ。
あれこれ考え、もしかしたら可哀想な未来が待っているのかもしれない、などと考えはしたが……ひとまず、自分が勝たなければ何も始まらない。

避けて避けて避けて鉄拳を叩き込み、そのまま鉄蹴も追加。

「ッッッッッ、ァアアアアア゛ア゛アッ!!!!!」

鉄拳が脇に当たり、吐血を零しながらも、なんとか鉄蹴は炎剣でガード。
そのまま下がる……のではなく、脇の痛みなどクソ喰らえと言わんばかりの吼え、自慢の得物を振るう。

「つッッッッ!! んん、よいしょッ!!!!」

炎剣の鋭さだけではなく、火力も上がっている。
なんとか紙一重で避けるが、切傷は避けられてもロングソードに纏われる炎の熱さまでは防げない。

火傷と打撲。
それぞれの体に数が増える中……先に切り札を切ったのは、ヴェラ。

「まだ、まだああああああッ!!!!!」

「い゛っ!!??」

ここにきて、ヴェラは炎剣を振るうだけではなく、自身の周囲に火球や炎槍を展開しながら攻め始めた。
ヴェラは炎剣を振るう剣士ではなく、剣と魔法を同時に扱える魔法剣士。

その情報を、ヴェラはガルーレとの戦いの中でここぞという場面まで隠していた。

ゴリディア帝国の騎士の中では有名な情報であり、そのゴリディア帝国と敵対するとなれば、彼女の情報を手に入れていてもおかしくない。
だが、ヴェラはガルーレの戦いぶりから、自分の情報を持っていないと確信。
であればっと、勝負を決めなければならないタイミングまで、火魔法を発動せずに隠し続けた。

まさかの攻撃に、ガルーレも驚きを隠せない。
避けることは出来る、弾くことも出来る。
対処は可能だが……突然の事で完璧な対応は出来ず、火球や炎槍を対処しなければならず、ヴェラへの対処がどうしても遅れてしまう。

(炎嵐、舞踏ッ!!!!!!!)

「っっっっっっっっっっ!!!!!!!」

舞い……のように見えて、実は苛烈な攻めである十二の刃が一瞬にして迫る。

ヴェラの切り札であり、これまで多くの強敵を鎮めてきた。
人間であれば四肢を斬り飛ばすどころか細切れに。
巨体を持つモンスターであろうと、刻まれた十二の屑口から鮮血が飛び出し、その体を地面に鎮める。

一部の人間が、寧ろ刻まれたいと訳の解らないことを口にするほどの美しさと、絶対に食らいたくない……そもそも技を始動させたくないと語る者がいる。

(っ!!! これでも、まだッ!!!)

だが、これまで発動した時とは違い、十二の刃……どの炎斬にも、明確に相手を斬り裂いたという感覚がなかった。

(あっっっっっつ!!!!!!! けど、これでっ!!!!!!!)

十二の炎斬は全くガルーレの体に届いていないわけではなかった。

寧ろ、ほぼ全て届きかけていたが、なんとかギリギリの回避によって切傷程度のダメージで済んだ。
とはいえ、それでも切傷と火傷を同時に与える斬撃が同時に約十。
熱さはガルーレの体内に届き…………条件は満たされた。

「疾ッ!!!!!!!」

「がっ!!!!!?????」

ガルーレの切り札、ペイル・サーベルスが発動された。
身体能力が大幅に向上されたことにより、当然一撃の威力が増す。

(この人、まだ、こんな、奥の手を)

一気に魔力を消費し、これど決めると思った技で決め切れなかったことなどが重なり、初手の対応が遅れたヴェラ。

万全のヴェラであれば、ガルーレがペイル・サーベルスを発動しても……まだ付いていける。
技術の差次第では、ガルーレが負けてもおかしくない。

「ぜぇエエエアアアアアアアッ!!!!」

「ぐぅぅうううううっ!!!???」

渾身のミドルキックには、なんとか炎剣によるガードが間に合ったが、ガルーレはペイル・サーベルスによって向上したパワーで無理矢理突破し……蹴り飛ばした。

(ぐっ、これ、じゃあ……負けて、しまう)

地面を数度バウンドする中、明確に敗北の言葉が脳内を駆け巡る。

(っ!!!! 絶対に、嫌だッ!!!!!!!!)

彼女の、騎士としての本能が、敗北を拒絶。
ヴェラは……後の戦いは愛しい人に、仲間たちに任せ、何が何でも目の前のアマゾネスを確実に倒す覚悟を決めた。
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