1,107 / 1,361
千百五話 趣味ではない
しおりを挟む
(うん、もう……良さそうだな)
アラッドはケプトとの戦いが始まってから、ランクは低くないものの、頑丈さや単純な切れ味が売りのロングソードを使用していた。
そう……彼にとっての、本命とも言える武器を使用していなかった。
「ッ!」
「互いにボルテージが高まった……ここからが本番といきましょうか」
アラッドが亜空間から取り出した武器は、羅刹。
刀という、まさに斬ることに特化した得物。
(良いもんを持ってんじゃねぇかよ)
目利きが出来るタイプではないケプトだが、それでも目の前の者がヤバいと気付ける感覚は有しており、必然的に良い物であることが窺える。
「お前をぶっ殺したら、それも頂いてやるよッ!!!!!!」
ヤバいと感じた。
しかし、アラッドの言う通りボルテージは高まっていた。
これまでの人生の中で、一番と断言出来るほど冴えており、テンションはマックス状態。
ただスキルによって財布たちが有しているスキルを振り回すだけではなく、しっかりとそれらを連結して扱えるほど思考が冴えわたっていた。
ゾーンに入っていると言っても過言な状態であり、ケプトが羅刹を見てヤバいと感じても、そのままこれまで通りぶっ潰そうと……ぶっ殺そうと動いても無理はなかった。
「っっっっっっっっっ!!!!!!」
「薄皮一枚、といったところでしたね」
ケプトは再び振るう得物を大剣から二振りの戦斧に変えていた。
あの得物と対峙するのであれば、小回りが利く戦斧を使うべきだと……本当にケプトらしくなく、冷静かつ正しい判断を下し、アラッドに接近した。
ただ……再び手にした戦斧が振るわれることはなく、ギリギリのタイミングで後方に飛んだ。
「っ……っ……」
ケプトは鋼鉄製の鎧ではなく、皮鎧を装備している。
そんじょそこらの防具とは違い、ただ頑丈なだけではなく魔法耐性も優れた一級品。
加えて、皮鎧の下に来ている服も、普通ではない糸を使用して作られた特注品。
ケプトの実力を考慮して上の者たちが用意した物、財布たちが中身を放出して用意した物が重なり合い……非常に高い防御力、耐久力を有している。
しかし、アラッドが放った斬撃は……皮鎧を、特注の服を切断し、ケプトの皮一枚を切断。
(もう、あまり加減という加減をしていなかったのだが……ふふ。やはり、やれば出来る人なんだな)
皮一枚切断され、そこから多少血が流れているだけ。
まだまだ戦闘続行である。
ただ…………軽傷と戦闘続行がイコールとは限らない。
(い、今。避けんのが、遅れてたら……っ!!!!!!!)
先程アラッドが放った斬撃に対し、ケプトは見事反応してみせたが、避けられたのは偶々であった。
ここで下がらなければ不味いと、勝手に体が反応して回避した。
それだけを聞けば、これまで積み重ねてきた戦闘経験が反応なのではないかと思われるが……違った。
なんとか躱せた一撃は、ケプトに対してもし、あの攻撃を避けられなければ、というイメージを与えた。
「どうしました。俺は、まだ死んでませんよ」
「っ!!!!!!」
今度はアラッドから攻める。
正眼の構えを中心に羅刹を振り続ける。
これまでと同じく、アラッドが使用している得物は一本であるため、二振りの戦斧を使用するケプトの方が手数は有利。
だが……回避、防御で手一杯になってしまう。
(く、くそ……くそ、くそ、くそくそくそクソクソクソクソ、クソがっ!!!!)
これまでギリギリのところで回避していたのとは訳が違い、羅刹から放たれた斬撃はケプトに対し腹を搔っ捌かれ、切断された臓物が零れ落ち……そのまま息絶えるという、自身が死ぬイメージを与えた。
自分が死ぬイメージ。
それは、人に対して明確に恐怖を与えるもの。
世の中にはそのイメージを与えられた結果、寧ろ興奮して戦意が爆上がりする変態もいるが、ケプトは違う。
元々冒険者として活動していたが……変態ではなく、現在のようにアラッドが「やっぱりやれば出来る人じゃないか」と評価するような人物でもなく、ただのヒモ気質な男性冒険者。
これまで何度も何度も死線を潜り抜けて、着実に実力を積み上げてきた冒険者であれば、恐怖に打ち勝つ精神力……メンタルの切り替え方を心得ている。
しかし、ケプトにはそれがなかった。
(……急にどうしたんだ。さっきまでと比べて、集中力が明らかに、駆けている)
ぶっ潰す、ぶっ殺すという気持ちはある。
それでもその気持ちを本当の殺意に変え、死線を越えられるかは、また別問題。
幸いにも、まだケプトの頭には命乞いや降参、ハーレムズを置いて一人で逃走という選択肢はない。
それでも、自分に明確な死をイメージさせた羅刹を、どう乗り越えられば良いのか解らない。
ここにきて、これまでケプトが培ってこなかった経験不足が露呈。
完全に……張りぼてが潰され始めた。
(演技…………ではない、か)
先程までの攻めっ気が消え、ただどうして良いか解らず、必死に対処するだけで……その状況を打破しようとする気概が感じられない。
(…………そういう趣味は、ない)
明確に恐怖し、怯える相手を甚振る趣味はない。
ケプトの変化から一気にテンションが急降下したアラッド。
だからこそ……冷徹に攻めるという判断が加わる。
「なっ!!!!????」
次の瞬間、羅刹がケプトの腕を通り過ぎ……左腕が斬り飛ばされた。
アラッドはケプトとの戦いが始まってから、ランクは低くないものの、頑丈さや単純な切れ味が売りのロングソードを使用していた。
そう……彼にとっての、本命とも言える武器を使用していなかった。
「ッ!」
「互いにボルテージが高まった……ここからが本番といきましょうか」
アラッドが亜空間から取り出した武器は、羅刹。
刀という、まさに斬ることに特化した得物。
(良いもんを持ってんじゃねぇかよ)
目利きが出来るタイプではないケプトだが、それでも目の前の者がヤバいと気付ける感覚は有しており、必然的に良い物であることが窺える。
「お前をぶっ殺したら、それも頂いてやるよッ!!!!!!」
ヤバいと感じた。
しかし、アラッドの言う通りボルテージは高まっていた。
これまでの人生の中で、一番と断言出来るほど冴えており、テンションはマックス状態。
ただスキルによって財布たちが有しているスキルを振り回すだけではなく、しっかりとそれらを連結して扱えるほど思考が冴えわたっていた。
ゾーンに入っていると言っても過言な状態であり、ケプトが羅刹を見てヤバいと感じても、そのままこれまで通りぶっ潰そうと……ぶっ殺そうと動いても無理はなかった。
「っっっっっっっっっ!!!!!!」
「薄皮一枚、といったところでしたね」
ケプトは再び振るう得物を大剣から二振りの戦斧に変えていた。
あの得物と対峙するのであれば、小回りが利く戦斧を使うべきだと……本当にケプトらしくなく、冷静かつ正しい判断を下し、アラッドに接近した。
ただ……再び手にした戦斧が振るわれることはなく、ギリギリのタイミングで後方に飛んだ。
「っ……っ……」
ケプトは鋼鉄製の鎧ではなく、皮鎧を装備している。
そんじょそこらの防具とは違い、ただ頑丈なだけではなく魔法耐性も優れた一級品。
加えて、皮鎧の下に来ている服も、普通ではない糸を使用して作られた特注品。
ケプトの実力を考慮して上の者たちが用意した物、財布たちが中身を放出して用意した物が重なり合い……非常に高い防御力、耐久力を有している。
しかし、アラッドが放った斬撃は……皮鎧を、特注の服を切断し、ケプトの皮一枚を切断。
(もう、あまり加減という加減をしていなかったのだが……ふふ。やはり、やれば出来る人なんだな)
皮一枚切断され、そこから多少血が流れているだけ。
まだまだ戦闘続行である。
ただ…………軽傷と戦闘続行がイコールとは限らない。
(い、今。避けんのが、遅れてたら……っ!!!!!!!)
先程アラッドが放った斬撃に対し、ケプトは見事反応してみせたが、避けられたのは偶々であった。
ここで下がらなければ不味いと、勝手に体が反応して回避した。
それだけを聞けば、これまで積み重ねてきた戦闘経験が反応なのではないかと思われるが……違った。
なんとか躱せた一撃は、ケプトに対してもし、あの攻撃を避けられなければ、というイメージを与えた。
「どうしました。俺は、まだ死んでませんよ」
「っ!!!!!!」
今度はアラッドから攻める。
正眼の構えを中心に羅刹を振り続ける。
これまでと同じく、アラッドが使用している得物は一本であるため、二振りの戦斧を使用するケプトの方が手数は有利。
だが……回避、防御で手一杯になってしまう。
(く、くそ……くそ、くそ、くそくそくそクソクソクソクソ、クソがっ!!!!)
これまでギリギリのところで回避していたのとは訳が違い、羅刹から放たれた斬撃はケプトに対し腹を搔っ捌かれ、切断された臓物が零れ落ち……そのまま息絶えるという、自身が死ぬイメージを与えた。
自分が死ぬイメージ。
それは、人に対して明確に恐怖を与えるもの。
世の中にはそのイメージを与えられた結果、寧ろ興奮して戦意が爆上がりする変態もいるが、ケプトは違う。
元々冒険者として活動していたが……変態ではなく、現在のようにアラッドが「やっぱりやれば出来る人じゃないか」と評価するような人物でもなく、ただのヒモ気質な男性冒険者。
これまで何度も何度も死線を潜り抜けて、着実に実力を積み上げてきた冒険者であれば、恐怖に打ち勝つ精神力……メンタルの切り替え方を心得ている。
しかし、ケプトにはそれがなかった。
(……急にどうしたんだ。さっきまでと比べて、集中力が明らかに、駆けている)
ぶっ潰す、ぶっ殺すという気持ちはある。
それでもその気持ちを本当の殺意に変え、死線を越えられるかは、また別問題。
幸いにも、まだケプトの頭には命乞いや降参、ハーレムズを置いて一人で逃走という選択肢はない。
それでも、自分に明確な死をイメージさせた羅刹を、どう乗り越えられば良いのか解らない。
ここにきて、これまでケプトが培ってこなかった経験不足が露呈。
完全に……張りぼてが潰され始めた。
(演技…………ではない、か)
先程までの攻めっ気が消え、ただどうして良いか解らず、必死に対処するだけで……その状況を打破しようとする気概が感じられない。
(…………そういう趣味は、ない)
明確に恐怖し、怯える相手を甚振る趣味はない。
ケプトの変化から一気にテンションが急降下したアラッド。
だからこそ……冷徹に攻めるという判断が加わる。
「なっ!!!!????」
次の瞬間、羅刹がケプトの腕を通り過ぎ……左腕が斬り飛ばされた。
445
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる