スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千百十三話 居場所は……

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ヴェラとカーラは……貴族である。

そのため、伴侶が複数の妻を持つことに関して、多少思うところはあれど、それが特別おかしいことではない世界で生きてきた。
なので、自分が好いた男が、自分以外の女性も愛している、囲っているという事に関しては……そこまで声を荒げることではない。

ただ……なんていう男を、愛してしまったのかと。
洗脳されたとはいえ、何故……あの様な芯の欠片も、誠実さの欠片もない男を愛してしまい、あまつさえ体を許してしまったのかと。

貞操観念は、人それぞれ。
種族的にエルフという、その辺りに厳しい種族であるレピアも、思うところはあり、心に深い傷を負っていた。
それでも、彼女は……冒険者である。

その職業に触れていたからこそ、ある種の失敗だと受け入れることが、一応出来た。

しかし、二人は違う。
元々騎士団に、魔術師団に所属していた。
そこが彼女たちの居場所である。

だが、二人はしっかりと覚えている。
ケプトという男に対して抱くを意識が変わった以降、同僚たちと出会い……意識が戻った今、殴れるなら思いっきり
ぶん殴りたいと思ってしまうほど、同僚たち……友人たちに惚気てしまっていた事実を。

「あなた達二人は、何かないのか」

「……汚れ、穢れた今の私に……居場所があるとでも」

「操られていたとはいえ、私は……私は…………私を、心配してくれた方々の言葉を、無視してしまいました」

ケプトという男は、情報に詳しい者であればそのよろしくない素性を知っている。

そのため、事情を知らないとはいえ、彼女たちがケプトと関わるようになったことを同僚や友人たちは心配した。
最初こそ上手く対応し、自分にも戦争が終わるまでの我慢だと言い聞かせていた。

だが、二人はヒモの能力に気付くことはなく、彼に手中に堕ちた。

結果、ヴェラとカーラは自分を心配してくれる者たちに対し、かなり失礼な……酷い態度を取ってしまった。

(…………二人が所属している組織だけなのか、それともご両親も自分たちの娘をケプトという男に差し出すことに賛成したのかまでは解らないが……本人達が語る通り、そうなのかもしれないな)

確かに、彼女たちはヒモというスキルの能力を受け、徐々に徐々に洗脳状態になってしまった。
ただ……世間一般的に、ヒモというスキルは失られておらず、戦闘職に就いているような程度スキルに関する知識を持っている者であっても、まず知らない。

つまり、同僚友人たちに説明したところで「そうだったのね」「そんな事するなんて、最低な男ね!!」と、表面上は同情し、慰めの声を掛けるかもしれないが……彼女たちの言葉を、百パーセント信じるのは非常に難しい。

ケプトという男と付き合ってしまった、財布になってしまった、ハーレムの一人になってしまったというのは、彼女たちにとって絶対的な黒歴史となってしまった。

「……今、ここであなた達に慰めの言葉を掛けたところで、意味はないだろう。ただ……それでも、俺は聞きたい。あなた達が、これから先どうしたいのかを」

「「………………」」

当分、男性という生物を信用出来ない精神状態でもおかしくないヴェラとカーラ。

それでも、これまで貴族の世界で生きてきた彼女たちの本能が告げる。
目の前の男は、本気で自分たちを気遣い……真剣に尋ねているのだと。

(何か、したいことなんて…………どうせなら、いっそ……このまま、死んでしまいたいわ)

捕虜となった彼女たちだが、国が彼女たちを確保しようと動かなければ、戦争奴隷として売却されてしまう。

そうなれば、その先でどういった扱いを受けるか、想像に難くない。
だからこそ……まず、このまま死んでしまいたいと思った。
どうせなら、何故あの戦闘中に自分を殺してくれなかったのかとすら思ってしまう。

だが、それが言葉として、口からは出てこない。
変わりに……二人の眼から、涙が零れる。

「…………」

そんな二人の様子にアラッドはギョッとした表情を浮かべることはなく、ゆっくり……彼女たちが自分の思いを言葉にするのを待つ。

「……可能なら……そうね。イリスたちと、知り合いがいない場所で……冒険者として、生活するのも……悪くない、かもしれない」

「…………それ以外に選択肢がないとも言えますが、そうですね。イリスたちと……共にいれば……まだ、これからの人生に……楽しさを、感じられるかもしれませんね」

この世界はアラッドの前世とは違い、その国で噂が広まったとしても、他国まで噂が広まることはあまりなく、国内で広まっても噂の内容だけで解ってしまうほど正確な情報は伝わらない。

なので、ゴリディア帝国の騎士団で、魔術師団で居場所がなくとも、他国でなら居場所をつくれる。
加えて……冒険者という職業なら、たとえそういった過去を知られてしまったとしても「あぁ、そういうのあるよね~~~」「本当に良い男と駄目な男の見分け方を知りたいよね~~」と、過去の数ある失敗話として、特に気にされることはない。

「なんだいなんだい、二人とも嬉しいこと言ってくれるじゃん!!!」

イリスは嬉しそうな笑みを浮かべ、二人の肩に腕を回す。
先程まで死んだような空気が流れていた部屋に、優しい空気感へと変化。

とはいえ、まだ問題が解決した訳ではなかった。
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