スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千百三十七話 見せてちょうだい

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アリサが振るうは、旋風を纏った魔剣。
対して、ライナスが振るうは水流を纏った細剣タイプの魔剣。

どちらも一流と呼べる質の魔剣であり、両者の魔剣が接触する度に甲高い音が鳴り響く。

(流麗で、時折鋭く……うん。やっぱり、上手いね)

まだ全ては出していないものの、それでも真面目に戦っているアリサではあるが、まだ一度も斬撃を与えられていない。

細剣という堅さ、頑丈さに関しては数ある武器の中でも低い数値の得物だが、ライナスは一度だけではなく五度も十度も……数十以上も、アリサの斬撃を受け流していた。

細剣という武器で、アリサの斬撃を完璧に受け流す。
その事実がどれほどの事なのか、ときおり映る光景で捉えていたパーシブル家の騎士たちは、決して小さくない衝撃を受けていた。

(あの、アリサさんの、斬撃を)

(あのいけ好かない、男……やは、り! ただの自信過剰な、騎士では、なかったか!!!)

自身の戦いに集中しろ!!!! と一喝されそうではあるが、彼らが視界の端で起きている事実に驚くのも無理はなかった。

ただ、視界の端で起きている光景に関して、驚いている者はパーシブル家の騎士たちだけではなかった。

(おいおい、マジかよ!!!!)

(受け流せては、いるけど!! ライナスさんが、上手く、攻撃に……出れて、ない!!)

(凄いわ、ね!!! 流石、剣鬼の妻、かしら!!!)

流麗かつ鋭利。
それがライナスの細剣技。

細剣という薄く細い刃で受けす様は、相手に堅牢さすら感じさせる。
そして、体勢が崩れれば即座に敵の急所を貫く水突が繰り出される。

現状、アリサに堅牢さは感じさせられている。
しかし……ときおり刺突は放っているものの、ライナスの攻撃もまた、アリサに一度も当たっていない。

(ふふ、ふっふっふ!!!!! さすが、私が求める、女性だッ!!!!!!)

相手の攻撃を受け流し、体勢を崩した相手を仕留める。
その流れでライナスはこれまで幾つもの勝利を積み重ねてきた。

同じ騎士や冒険者だけではなく、当然モンスターからも討伐して勝利を積み重ね、成長してきた。

(それでこそ、倒す価値もあるというものッ!!!!!!!)

優れた細剣技の技術と、水流を纏った魔剣。
それだけが彼の武器ではない。

「んッ? ッ!! ふッ!!! っと」

「はっはっは!!!! 初見で傷を与えることが出来ないとは。やはり、あなたは本当に強い」

「それはどうも。これでも、冒険者時代は色んな相手と戦ってきたからね」

ライナスは脚に水を纏い、直接線路を形成し、その上を滑った。

脚を動かすことなく移動する動きは、事前情報がなければまずしてやられる。
事前情報を持っていたとしても、その動きをどのタイミングで行うかはライナスが決めるため、警戒していてもしてやられてしまう。

(あぁいう技術を持つ人とは何回かだけ戦ったことがあるけど、皆四十は越えてた……最低でも、三十後半だった気がするんだよねぇ)

「まだまだいきますよ!!!!」

今度は足を動かさず直進……かと思えば直前で切り替え、サイドに回ろうとする。

「っ!!」

(この動きにも、付いてくる。本当に、素晴らしいッ!!!!!)

闘争心が更に高まるライナスは強化系スキル、疾風を発動。

「っっ……ふッ!!!」

アリサも同じく疾風を発動させて対抗するが、戦闘が始まってから初めてのダメージヒット。

先にダメージを与えたのはライナス。
薄い切り傷とはいえ、先にアリサが攻撃を受けた。
その事実に……本人は、薄っすらと笑みを浮かべる。

(疾風の、練度も中々。それに、今の動き……縮地の動きを、身体能力で模倣、した? 良いわね……良いじゃない。他にもあるなら、もっと……見せてちょうだいッ!!!!!!!!!!!)

どこかで戦っている剣鬼の子と、現在いけ好かないイケメン君と戦っている剣鬼の妻を見れば、この親にしてこの子ありと誰かが口にするだろう。

しかし、アラッドの場合はともかく、アリサの場合……その行動には、一定の意味が……利益があった。

「ふっ!!! ッ、くっ!!!」

「あら、直ぐに下がっちゃう、のねっ!!!」

受け流しから反撃。
このスタイルだけだと、相手から攻撃を仕掛けてこなければ、戦いが進まなくなってしまう。

だからこそ、ライナスはただ細剣で攻めるだけの攻撃性も並ではないが、真骨頂は相手の動きを引き出し、結果として相手の動きを崩す、もしくは受け流して仕留める。

相手にライナス以上の技術や大幅に上回る身体能力がなければ、得物を振るって対応するしかなくなる。
そうなれば、もうライナスの術中。

しかし……アリサは受け流されるタイミングで、その力をせき止め、受け流しを防いだ。

(まだ戦闘が始まって、数分も経っていないのに、あぁも完全に、止められてしまうとは……良き、人生を、歩んできたのだろうッ!!!!)

事実、アリサはこれまで本当に良き人生を歩んできた。
ライナスの受け流しを止めた技術も、結婚してパーシブル家の騎士たちと訓練するようになってから使えるようになった技術。

冒険者時代は八割方攻めの意識で戦っていたアリサだが、フールとの出会いが彼女の戦い方を更に豊かにした。

(であればッ!!!!)

得意の受け流しを止められた。
その事実は、彼にとって絶望の要因とはならず……アリサに行動の選択肢を増やさせたという利点に繋がる。

「っ!! 疾ッ!!!!!」

「ぬっ!!!!????」

斬撃はフェイントで、本命は蹴り。
そこまで読み、一応腹筋に力を込めながらも後方に飛んで回避したが……脚先から衝撃波が放たれ、今度はライナスがダメージを負った。

「くっ!! 素晴らしい、脚癖だっ!!!!!」

貴族夫人として脚癖が悪いぞ!!!!! とは言わない。
彼からすれば、どう考えても強さの一つ。

歓迎こそすれ、暴言を吐き捨てるなどあり得なかった。
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