スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千百六十三話 信用出来る部分

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「カイト君……君は、何の為に今回の戦争に参加する」

「…………」

向けられた視線の先にいるのは、変装しているアッシュ。
彼は……直ぐには、答えられなかった。

(正直なところ、メルテさんよりカイト君の方が気になるんだよね)

メルテ……シルフィーに関しては、変装していても尚、歳相応……特におかしなところはないと感じる。

だが、カイトことアッシュには大多数の人間よりも落ち着いており、尚且つ多くの物事に対して悟っているような雰囲気を感じたルメス。

そしてこれまで多くの経験を積んできたルメスだからこそ、勘付くことがある。
その悟り具合……雰囲気は、まだ十代半ばから後半……もしくは前半でありながら、同年代の者たちよりも落ち着きを持っている者のものだった。

「……僕は、身内のメルテが死なないように戦う。それが私的な理由ですね」

アッシュの言葉に、シルフィーは……嬉しさを感じるものの、本当に私情丸出しの考えを口にして大丈夫なのかと不安を感じる。
ドラスこと木竜も同じく、ルメスが予想外の行動に出ても構わないように、動けるように準備する。

「なるほど……メルテさんを守る為なら、他はどうなっても構わないと」

「大袈裟に言うと、そうですね。誰かを囮にしたり、身代わりにしたりしようとは思いませんけど、目の前でメルテと他の冒険者や騎士が危機に陥っていれば、迷わずメルテを助けます」

わざとではあるものの、棘のある言葉を返されても……アッシュは表情を変えることはなく、淡々と自身の考えを告げた。

「個人的な考えではありますけど…………まず、自分が本当に守りたいと思う者を守れなければ、他の見ず知らずの人間を助けることは出来ないと思います」

らしくない言葉を口にしている自覚はある。
なんなら、こんな事を口にしている自分に若干の恥ずかしさすら感じる。

ただ……普段の学生、錬金術師の卵としてではなく、戦闘者として戦場に立つのであれば改めて考えた結果……出てきた考えが、それであった。

「……ふふ、そうか。良い考えだね。カイト君は私の反感を買うかもしれないと思いつつも、本心を教えてくれたかもしれないが、私は共に戦場で戦う身内を第一優先にして戦うというのは、悪いとは思っていないよ」

良いと思っている、と言えないのはルメス・エウレニスが騎士であるから。

それでも、身内を……心の支えとなる人物を失った結果、それ以降戦場に立てなくなった者を知っているからこそ、悪い考え方だと思うこともない。

「そう、ですか」

「やっぱり、咎められると思ったかい」

「はい。メルテの目的は同じく私的ではありますけど、その過程で敵を倒し、誰かを救う可能性があります。ただ、僕の私的な目的はメルテが死なないように動くことで、その過程で誰かを救うことがないので」

「そうだね。でも、カイト君はメルテさんと同じ心を持っているでしょう。彼女を守るために、誰かの命を犠牲にしたとして……本当に胸を張って彼女を守ったと言えるのかと」

「…………」

何から何まで見抜かれている。

アッシュは舌戦で歳上の人間に、貴族の世界で生きてきた人間に勝てると思ってはいない。
ただ、ここまで根っ子の部分を見抜かれていると、少し怖い部分がある。

(強くて、尚且つ貴族の世界で生き抜いてきた人は、皆こうなのかな)

ひとまず、今はその点に関して考えは置いておき……まだ気を抜いていい場面ではない。

「だからこそ、君の私的な目標はメルテさんと同じく、信じられる目標だと思える」

「……そう言ってもらえると、幸いです」

「ふふ……まぁ、他にもカイト君を信用出来ると思える部分はあるのだけどね」

「目標以外で信用出来る部分、ですか?」

この時、アッシュは自分がアッシュであることがバレているのではと思うも、なんとか顔に出すことを防ぐ。

「あぁ。カイト君は、周囲の者たちの行動によって、致し方なく付き合うタイプだと私は感じた」

「それは……どうなんでしょうか」

まさにその通りであった。

アッシュは基本的に錬金術にしか興味がない人間ではあるが、超絶人付き合いが悪いというわけでもない。
そのため、何だかんだで周囲の人間たちの誘いを受け、共に行動することがある。

「私の個人的な経験則だが、そういった者は他の者たちを放っておけないと思ってしまう…………まぁ、あくまで個人的な考えだから、あまり深く考えなくても良い事だ……では、ドラスさん。あなたは、何故今回の戦争に参加をしようと」

アッシュへの身定めは終了。
最後に、二人の保護者であろうドラス……木竜へ、戦争に参戦する理由が問われた。

「そうじゃのう……年寄りが、国の為に戦うというのは、おかしいか?」

「いいえ、全くおかしい事ではありません。ですが……ドラスさんには、それ以上の何かがあるのではないかと思えて」

まだ……ルメスは気付いていない。
しかし、ドラスの存在感から、答えに辿り着く可能性があった。

「ふっふっふ。先程のメルテやカイトとのやり取りを見ても思ったが、伊達に貴族の世界で生きておらんといったところか」

ドラゴンである木竜だが、過去に……本当に過去に人間とそれなりに関わった経験があるため、貴族と呼ばれる者たちの世界が、どれほど面倒なのかそれなりに知っていた。

「そうじゃな……簡単に言えば、売られた喧嘩を買う、といったところじゃ」

「売られた喧嘩を買う、ですか」

今回の戦争、先に仕掛けてきたのはゴリディア帝国側。
木竜……ドラスほどの実力者に接触し、あわよくば殺そうとする考えは、解らなくもない。

「そうじゃ。至って単純なこと。孫…………そう、孫の様なこやつらを守りたいという思いもあるが、同時に売られた喧嘩を買い、奴らを叩き潰す。そういった思いもある」

「っっっ…………そうですね。確かに単純ですが、非常に納得出来る理由です」

木竜は殺気や戦意、怒気を零してはいない。
先程までと同じく、柔らかい表情を浮かべたままだがルメスは久しぶりに……本当に久しぶりに背中から冷や汗を流した。
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