スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千百七十五話 あくまで暖めるのが目的

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(ん? 見たことねぇ顔だな)

(新しく来た連中か。けど、にしちゃあ……)

(あの感じ、冒険者じゃなくて騎士よね?)

冒険者ギルドに入ってきた三人に対し、つい視線を向けてしまう冒険者たち。

いきなりバカ絡みという名の喧嘩売りを行う者はいないが、何故冒険者ギルドに騎士が? という疑問は浮かぶ。

(あっちの嬢ちゃんは……冒険者か? にしちゃあ、ぺっぴんな面してんなぁ)

(冒険者と騎士の組み合わせって結構珍しいな)

(……あっちの金髪の子に、蒼髪の女の子と、赤髪の男の子が付き合わされてる……って感じかしら?)

冒険者たちの中には、一目で彼女たちの関係性を見抜く者もいた。

(あっ、訓練場に入ってった)

訓練場に行ったって事は……いや、どっちかしら?)

全員が冒険者なのか、それとも騎士なのか解らなくなる。
ただ……そんな中、何か面白い匂いを感じ取った冒険者たちが訓練場へと向かった。



「熱気があるな」

「手合せでも、昂るというもの」

「……色んな人たちがいるわね」

訓練へ入ると、多くの冒険者たちが素振りを行うか、模擬戦を行っていた。

戦争……本番前に下手に怪我をしないでくれと言いたい上の人間たち。
だが、体を動かしていなければ、本番の際に鈍ってしまうかもしれないというのも解る。

そのため、基本的に上からの命は刃引きしてない武器を使うなという内容だけ。

(丁度良さそうな方は…………あちらの方ね)

良き人物を見つけたリエラは速足で駆け寄る。

「お兄さん、良ければ私と一度模擬戦してもらえないでしょうか」

「も、模擬戦ですか。わ、解りました。自分で良ければ」

女慣れしていない……という訳ではないが、リエラの容姿と距離の詰め方からほんの少し頬を赤くする青年。

「……リエラ、その木剣大丈夫?」

「えぇ、問題無いわ」

木製の細剣はなく、通常の木剣を使用する。

青年の冒険者が扱う武器も木剣であるため、リエラの方がやや不利になるかもしれない。
といった見解は、二人の中で直ぐに消し飛んだ。

「っ!! くッ!!!」

「ふっ!! シッ! ハッ!!!!」

まだ模擬戦が始まって序盤も序盤ではあるが、押しているのはリエラの方であった。

(使ってるという話意は聞いてたけど、うん……良い腕。でも……多分、直ぐに拮抗しそう)

リエラの木剣を……ロングソードを使った腕に多少の驚きを感じたものの、ラディアの予想通り……剣戟は徐々に青年の方が押し戻していき、拮抗していく。

(ぐっ!! やっぱり、見込んだ、通りっ!!!)

なんとか力強い一撃で青年を押し返し、一度距離を取る。

「まだまだ、上げてくけど……良いよね」

「うん、勿論」

上は、模擬戦時にスキルの発動を禁止にしなかった。
超強力なスキルの技を発動することは禁止にされているが、身体強化や疾風、剛力といった強化系のスキルを使用することは禁じられていない。

たった数日はあれど、強化した状態の身体能力を存分に扱えず、殺されてしまうという流れが絶対にないと否定出来ない。

だからこそ身体強化を使用するぐらいは問題無い。
とはいえ、今行う様な模擬戦は本気で決着をつける為のものではなく、本番に向けて体を温める為のもの。
そのため、リエラはスキルを使用する前に青年に確認を取り、応じた。

「二人とも、それまでにしようか」

身体強化を発動してから数分が経過。
戦況が四対六と、リエラが少々不利になったところで、ライホルトが模擬戦を止めた。

「……それもそうね」

リエラとしては、まだまだ戦えると言いたいところではある。
ただ、自分が最初に言い出した冒険者たちと交流することに関して、忘れていた訳ではない。

交流するのは、一部の冒険者たちだけではない。
始まるまで数日程度ではあるが、ある程度多くの冒険者たちと関わっておきたい。

となると、わざわざ一人の冒険者を相手に全力を尽くす必要はない。

「ありがとう。良い具合に体を動かせたわ」

「じ、自分も体が暖まりました」

勘の良い冒険者たちは声にこそ出さなかったが、心の内で「暖まったのは模擬戦のお陰か?」と、意地悪な笑みを零していた。

「そっちの姉ちゃん、良かったら俺と模擬戦しねぇか」

「……えぇ、戦ろうか」

リエラの青年に対する態度から、特に普通に話しかけても問題無いと声を掛けられたラディア。

声を掛けてきた熊人族の誘いに、リエラは小さく笑みを受けながら答えた。

「? 姉ちゃんも、戦斧を使うのか?」

「少しだけ。だから、少し胸を貸してもらえるだろうか」

「まっ、構わねぇよ」

ふざけてるのか、真面目なのか……それは、声を掛ける前からある程度解っていた。

そして、実際に対峙すると、確信に変わる。

(俺をおちょくる為に戦斧を使うわけじゃなさそうだな)

胸を借りる……そう宣言したリエラの方から近づき、戦斧を振るった。

「っっ!!! 人族なのに、良い腕力、してるじゃねぇか!!!」

「そう言って、貰えると、光栄、だよ!!!!」

かつてアラッドと対峙した際、一番恐ろしさを感じたのは純粋な力。

それだけ目指せば、他の部分を疎かになってしまうのは解っている。
しかし……いつか再戦する時、そこを良い訳にしたくない。

(確実に、パワーが増している……模擬戦の範囲内であれば、拮抗し続けるか?)

「そこに渋顔の強そうなお兄さん、良かったら私と戦らない?」

「構わないが、連れの模擬戦が終わるまで少し待ってほしい」

数日後には戦争という状況を考えれば、万が一が起こるとは思えない。
ただ、パーティーの最年長として、出来ることはしておかなければならなかった。
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