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第17話 半端ない喪失感
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(私は……夢を見ているのでしょうか)
自分と同じ歳頃の男性が良く食べるということは知っていた。
自身の実家に使える騎士たちも良く食べる。
故に、二人がそれなりに食べることは知っていたが……それでも、あまりにも手が止まらな過ぎる。
ガルフに関しては食べるスピードが落ちてきてはいるものの、既に十人前以上の
料理を食べている。
高級料理店で出される料理は、どれも酒場などで提供される料理よりも量が少ない。
とはいえ……とはいえである。
あまりにも食べる量が予想外だった。
イシュドに至っては全く食べるスペースが落ちず、そろそろ二十人前に到達する。
(彼の胃袋は……亜空間になっているのでしょうか?)
そんな事はまずあり得ないことぐらい理解している。
理解はしているものの、そんな事を考えてしまう程今のクリスティールの思考力は低下していた。
因みに、イシュドの食事の手が全く止まらないのには一つ、明確な要因があった。
それは……食い溜めのスキルを有しているからである。
食い溜めとは、自身の限界を越える量を食べることができ、その分は翌日……もしくは更に翌日に影響し、食べる量によって数日間は食べずとも生きていくことが出来る。
イシュドが元々食べる方だという事情もあって、どんどんテーブルに置かれる料理が平らげられ、また新し更が置かれていく。
「たはーーーーっ!!! 食った食った!! いやぁ~~~、本当に美味かった。こんな美味い飯を食えただけでも学園に入学した甲斐があったってもんだ」
「はぁ~~~~……幸せ過ぎて死にそうです」
「なっはっは!! その気持ちは解らなくもねぇぞ」
二人の腹は、今だけはポッコリ膨れていた。
「あの……こちらが、会計金額になります」
「ッ!!!!!?????」
ピシリッ!!!!! といった擬音が聞こえてきそうなほど、クリスティールの体が固まった。
そんな彼女の様子を見て、伝票を持ってきた従業員も不安そうな表情を浮かべる。
一皿一皿が高級料理店の名に相応しい味と値段を有している。
その合計値段は、いかに爵位が高い貴族の令嬢であっても……場合によっては失神する金額だった。
「………………丁度、あると、思います」
「は、はい! えっと…………ちょ、丁度、ですね」
しかしそこは公爵家の令嬢。
毎月実家から平民からすれば涎をダラダラと流して見つめてもおかしくない金額が送られてきている。
そのお小遣いをクリスティールは使わなければいけない時には使うものの、基本的には贅沢をしないスタイル。
なのでそれなりに……いや、かなりの貯金が溜まっていたのだが、その大半を消費する結果となった。
借金をすることになったわけではない事を考えれば、決して悪い結果ではない。
悪くはないのだが……半端ではない喪失感がクリスティールを襲った。
「んじゃ……そうだな。ガルフ、どうせなら夕食頃までぶらっと王都を周るか」
「……うん!!!」
まだ学園に入学して……一日も経っていない。
一日も経っていないが、今学園に戻ったところで……という面倒な未来が想像出来るようになっていた。
「んじゃ、先輩。美味かったぜ、ごちそうさん」
「ごちそうさん? です」
「え、えぇ……満足してくれたようで、なによりです」
若干表情から喪失感がまだ残っているものの、平静を装う様は流石貴族であった。
「さて、イシュド君。あなたはこれから何度も何度も勝負を申し込まれるでしょうが、くれぐれも戦う前に試合の……もしくは決闘の申請を行ってください」
「へいへい。つってもよ、バカ共はその場で攻撃してくるだろ。その時は今日みたいに殴り返したりして良いんだよな」
「……できれば、正当防衛の範囲で収めてください」
「あいよ。なるべく気を付けるっす」
全く信用出来ない軽さで答え、ガルフを連れて王都観光へと向かう。
「どうだった、王都は」
「何と言うか、もう色んなところが異次元と言うか、レベルが違うというか……本当に驚きの連続だったよ」
「だろうな。うちの実家も栄えてる方だが、やっぱり王都の方が勝ってる部分もあってな。俺も初めて観光した時はちょいちょい驚いたぜ」
結局二人はクリスティールと昼食を食べた後、そのまま夕食を外で済ませた。
そのため、既に空は暗くなって完全に日は沈んでいた。
「ちょっと!!!! この私をいつまで待たせるのですかっ!!!!!!!」
「ん?」
二人が正門に到着すると、そこには一人のクリスティールと同じ金髪の令嬢と、二人の令嬢が立っていた。
「…………あんた、誰だ? 確か、同じクラスのやつじゃなかったと思うんだが」
「なっ!!!??? この私を知らないとは、正気ですか!!??」
「おぅ、正気も正気だぜ。あの生徒会長様も知らなかったんだから、他の連中なんて知るわけないだろ。もしかしたら、あんたはあの先輩よりも学園で権力を持ってるのか?」
「うっ! そ、そういう訳ではありませんが……」
納得……出来なくはない反論であるものの、貴族界に身を置いてるのであれば、それがまずあり得ないのだ。
「そんで、あんたは俺に何の用なんだ」
「そ、そうですわ!!! あなた、クリスティールお姉様とアルバレシア公爵家に対してなんて口の利き方をしたのですか!!!!!!!」
金髪ロールが今にもドリル回転しそうなほどの怒りを撒き散らす針々棘々令嬢。
「えぇ~~~~。この学園は基本的に平等なあれなんじゃねぇのかよ」
「限度があるというものですわ!!!!! アルバレシア公爵家やクリスティール様に対してそ、それなりなどという言葉をっ!!!!」
先程まで昼食、夕食の満腹感と王都を本格的に観光した驚きで幸せ一杯だったガルフは思い出し震えしていた。
(ど、どどどどどどどどうしようっ!!!!????)
金髪ロール令嬢の言う通り、何事にも限度がある。
加えて、基本的に平等を謳う学園であったとしても、生徒会に所属する生徒会長という立場に就いていることを考えれば……他の生徒たちよりも偉い、立場がやや上というのは少し考えれば解る話。
そして金髪ロール令嬢としては……クリスティールと二人で(正確には三人で)外食をしたということもプラスで許せないポイントだった。
自分と同じ歳頃の男性が良く食べるということは知っていた。
自身の実家に使える騎士たちも良く食べる。
故に、二人がそれなりに食べることは知っていたが……それでも、あまりにも手が止まらな過ぎる。
ガルフに関しては食べるスピードが落ちてきてはいるものの、既に十人前以上の
料理を食べている。
高級料理店で出される料理は、どれも酒場などで提供される料理よりも量が少ない。
とはいえ……とはいえである。
あまりにも食べる量が予想外だった。
イシュドに至っては全く食べるスペースが落ちず、そろそろ二十人前に到達する。
(彼の胃袋は……亜空間になっているのでしょうか?)
そんな事はまずあり得ないことぐらい理解している。
理解はしているものの、そんな事を考えてしまう程今のクリスティールの思考力は低下していた。
因みに、イシュドの食事の手が全く止まらないのには一つ、明確な要因があった。
それは……食い溜めのスキルを有しているからである。
食い溜めとは、自身の限界を越える量を食べることができ、その分は翌日……もしくは更に翌日に影響し、食べる量によって数日間は食べずとも生きていくことが出来る。
イシュドが元々食べる方だという事情もあって、どんどんテーブルに置かれる料理が平らげられ、また新し更が置かれていく。
「たはーーーーっ!!! 食った食った!! いやぁ~~~、本当に美味かった。こんな美味い飯を食えただけでも学園に入学した甲斐があったってもんだ」
「はぁ~~~~……幸せ過ぎて死にそうです」
「なっはっは!! その気持ちは解らなくもねぇぞ」
二人の腹は、今だけはポッコリ膨れていた。
「あの……こちらが、会計金額になります」
「ッ!!!!!?????」
ピシリッ!!!!! といった擬音が聞こえてきそうなほど、クリスティールの体が固まった。
そんな彼女の様子を見て、伝票を持ってきた従業員も不安そうな表情を浮かべる。
一皿一皿が高級料理店の名に相応しい味と値段を有している。
その合計値段は、いかに爵位が高い貴族の令嬢であっても……場合によっては失神する金額だった。
「………………丁度、あると、思います」
「は、はい! えっと…………ちょ、丁度、ですね」
しかしそこは公爵家の令嬢。
毎月実家から平民からすれば涎をダラダラと流して見つめてもおかしくない金額が送られてきている。
そのお小遣いをクリスティールは使わなければいけない時には使うものの、基本的には贅沢をしないスタイル。
なのでそれなりに……いや、かなりの貯金が溜まっていたのだが、その大半を消費する結果となった。
借金をすることになったわけではない事を考えれば、決して悪い結果ではない。
悪くはないのだが……半端ではない喪失感がクリスティールを襲った。
「んじゃ……そうだな。ガルフ、どうせなら夕食頃までぶらっと王都を周るか」
「……うん!!!」
まだ学園に入学して……一日も経っていない。
一日も経っていないが、今学園に戻ったところで……という面倒な未来が想像出来るようになっていた。
「んじゃ、先輩。美味かったぜ、ごちそうさん」
「ごちそうさん? です」
「え、えぇ……満足してくれたようで、なによりです」
若干表情から喪失感がまだ残っているものの、平静を装う様は流石貴族であった。
「さて、イシュド君。あなたはこれから何度も何度も勝負を申し込まれるでしょうが、くれぐれも戦う前に試合の……もしくは決闘の申請を行ってください」
「へいへい。つってもよ、バカ共はその場で攻撃してくるだろ。その時は今日みたいに殴り返したりして良いんだよな」
「……できれば、正当防衛の範囲で収めてください」
「あいよ。なるべく気を付けるっす」
全く信用出来ない軽さで答え、ガルフを連れて王都観光へと向かう。
「どうだった、王都は」
「何と言うか、もう色んなところが異次元と言うか、レベルが違うというか……本当に驚きの連続だったよ」
「だろうな。うちの実家も栄えてる方だが、やっぱり王都の方が勝ってる部分もあってな。俺も初めて観光した時はちょいちょい驚いたぜ」
結局二人はクリスティールと昼食を食べた後、そのまま夕食を外で済ませた。
そのため、既に空は暗くなって完全に日は沈んでいた。
「ちょっと!!!! この私をいつまで待たせるのですかっ!!!!!!!」
「ん?」
二人が正門に到着すると、そこには一人のクリスティールと同じ金髪の令嬢と、二人の令嬢が立っていた。
「…………あんた、誰だ? 確か、同じクラスのやつじゃなかったと思うんだが」
「なっ!!!??? この私を知らないとは、正気ですか!!??」
「おぅ、正気も正気だぜ。あの生徒会長様も知らなかったんだから、他の連中なんて知るわけないだろ。もしかしたら、あんたはあの先輩よりも学園で権力を持ってるのか?」
「うっ! そ、そういう訳ではありませんが……」
納得……出来なくはない反論であるものの、貴族界に身を置いてるのであれば、それがまずあり得ないのだ。
「そんで、あんたは俺に何の用なんだ」
「そ、そうですわ!!! あなた、クリスティールお姉様とアルバレシア公爵家に対してなんて口の利き方をしたのですか!!!!!!!」
金髪ロールが今にもドリル回転しそうなほどの怒りを撒き散らす針々棘々令嬢。
「えぇ~~~~。この学園は基本的に平等なあれなんじゃねぇのかよ」
「限度があるというものですわ!!!!! アルバレシア公爵家やクリスティール様に対してそ、それなりなどという言葉をっ!!!!」
先程まで昼食、夕食の満腹感と王都を本格的に観光した驚きで幸せ一杯だったガルフは思い出し震えしていた。
(ど、どどどどどどどどうしようっ!!!!????)
金髪ロール令嬢の言う通り、何事にも限度がある。
加えて、基本的に平等を謳う学園であったとしても、生徒会に所属する生徒会長という立場に就いていることを考えれば……他の生徒たちよりも偉い、立場がやや上というのは少し考えれば解る話。
そして金髪ロール令嬢としては……クリスティールと二人で(正確には三人で)外食をしたということもプラスで許せないポイントだった。
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