転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
70 / 493

第70話 お勧めで

しおりを挟む
「………………」

「ビビり過ぎだぞ」

「だ、だって……なんか、別世界みたいだからさ」

変装用のマジックアイテムを使用した三人は背丈こそ変わっていないが、見た目はかなり変わっていた。

「確かに、それは解らなくもねぇな」

「何度も来るようになれば、そのうち慣れるぞ」

「……そもそも、僕たちが何度も来て良いような場所なの?」

ガルフの中にも、もやもやとした言葉では言い表しにくい罪悪感があった。

「別に構わないだろ。つか、寮生活してる俺らにとっちゃ、定期的に来たい場所なんじゃないか」

「イシュドの言う通りだぜ、ガルフ。性欲は適度に発散させておかないとな」

寮生活の場合、当然だがルームメイトがいる。
一人の時を狙てであればまだしも、就寝時間にもぞもぞするのは……よっぽど無神経な者でなければ、中々致せない。

「それはそうかもしれないけど……ど、どうすれば良いの?」

「店に入ったらか? ずらっと嬢が並んでるから、好きな人を選んでお金を払って、部屋に行くだけだ。童貞か否かって……訊かれなくても、自分から童貞ですって言った方が良いらしいぞ」

「ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、それが失敗しない方法、なの?」

「らしいぜ。っと、見えてきたな」

見えてきた……視線の先には、明らかに他の店とは外装のレベルが違う店があった。

「い、いいいいイシュド。もしかしなくても、ぁ……あのお店に、入るの?」

「そうだよ。ここまで来たんだ、逃げたら勿体ねぇだけだぜ」

「イシュドの言う通りだぜ、ガルフ」

男友達二人に引っ張られ、夜のお店に連れて行かれたガルフ。

(っ!!!!???? な、なんだ……ここ?)

まず目に飛び込んできたのは、イシュドが説明してくれていた……お店に在籍している多くの嬢たちが椅子に座って並んでいる光景。

そしてこれまで嗅いだことがない……誘惑という言葉が濃縮された匂いに包み込まれる。

「ほら、ガルフ。あのお姉さん達が番号の付いた札を持ってるだろ。気に入った人の番号を黒服の従業員に伝えるんだ」

「わ、わわわ分かった」

イシュドとフィリップは慣れた様子で相手を選ぶが……初めての場所、これから初体験ということもあり、ガルフのテンパり度はマックス状態だった。

(あちゃ~~~。こりゃ自力で選ぶのは無理そうかな)

ガルフが直ぐに決められそうではなかった為、助け舟を出すイシュド。

「すいません。こいつ、こういう店に来るっていうか、そういう事が今日初めてなんですけど、そういうのが得意人ってどの人ですかね」

「そういう事でしたか。そうですねぇ……」

声を掛けられた黒服の従業員は真剣な表情で考え……今日が色々と初めてであるガルフに、何名かの嬢を紹介。

「そ、それじゃあ」

従業員から候補を提案してもらったおかげで、ガルフも相手を決定。

「んじゃ、楽しんでこいよ、ガルフ」

ガルフの分はイシュドが支払い、三人共別々の部屋に嬢と入り、九十分ほど楽しみ続け……ほぼ同じタイミングでエントランスで再集合。

「ふぅ~~~、発散できた~~~~。んで、ガルフ。どうだったよ」

「え、えっと……なんて、言うか」

「いや、ちょっと待て。どうせなら酒を呑みながら話そうぜ」

「酒ね。それなら、良いバーを知ってるぜ」

「おっ、流石フィリップ!!」

まだ門限まで時間があるため、三人はフィリップお勧めのバーで語り合う……と言うよりも、二人がガルフの初体験に関してあれこれ訊き続けた。

「っし、そろそろ戻るとするか」

どれだけ激闘祭で優秀な成績を残したとしても、門限を破れば面倒が待っている。

三人は門限……ぎりぎりで寮に戻ることに成功し、セーフ。

「ガルフ、また行きてぇか?」

ベッドに入ってから、今日初めて大人のお店に行ったガルフに、また行きたいかと尋ねるイシュド。

イシュドとしては、いつでもウェルカムである。

「……良い体験を出来たとは思う。イシュドには凄く感謝してるけど……でも、あんまり何度も何度も行くのは……なんか、駄目かなって思いもあるんだ」

「ふ~~~~ん? まっ、それはそれで良いんじゃないのか? うちの騎士に、給料の大半をあぁいった店で消費しちまう奴がいるんだけど、そうなるよりは全然良いと思うぜ」

寧ろ、イシュドとしてはガルフほど興味深い存在が、あぁいった場所にハマり過ぎないようで安心した部分もあった。


「よぅ、ちょっと良いか」

「えっ!? あ、はい」

翌日、イシュドたちは自分たちとお茶会をしないかと提案してきた令嬢たちに、了承の返事を返し……それから三日後の昼に、三対三のお茶会が開かれた。

「何が流行とかはいまいち分からんかったから、菓子は店員のお勧めを買ってきたが、こんな感じで良かったか?」

「も、勿論です」

紅茶はお茶会を提案してきた令嬢たちが、お菓子はイシュドたちが用意することになり、イシュドは口にした通り本当に流行り云々を知らなかったため、王都で有名な店で店員のお勧めを一通り購入した。

(つっても、お茶会って何すんだろうな~~)

レグラ家の次男であるダンテと紅茶を飲みながら話し合うことは何度もあったが、女性とのお茶会はガルフだけではなく、イシュドも今日が初めてだった。

「ん? この味…………クレスタって街で採れるやつか?」

「えぇ、その通りですが……もしかして、紅茶が趣味の一つなのですか?」

令嬢達が用意した紅茶は、最上級とまではいかずとも、上級と呼べる物。

何だかんだでフィリップは公爵家の令息。
辺境の野蛮蛮族だのなんだの言われているが、イシュドも辺境伯の令息。

基本的には彼女たちよりも実家の爵位は上であるため、なんとか上等な物を用意したが……イシュドが産地を当てるとは全く予想していなかった。

「いや、俺の趣味じゃない。ただ、うちの次男……ダンテ兄さんが変わった人でな。うちの実家には似合わないタイプ……つっても、オーガぐらいなら素手で殴り殺せるから、別に似合っていないってわけじゃないか」

「あれだよね。クールな見た目でメガネをかけてて、魔法職らしい見た目をしてるんだけど、パワーも半端じゃないお兄さんだよね」

「そうなんだよな~~~。マジで魔法職に就いてるのに、杖で殴るどころか拳で殴り倒したからな……さすがに俺もあの光景はびっくりした」

レグラ家の中にも魔法職に就く者がおり、しかもその令息は魔法職に就いていながら、オーガを素手で殴り殺せるパワーを持っている。

お茶会に似合う会話かどうかはさておき、令嬢たちにとってはとても衝撃的な会話内容であるのは間違いなかった。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

処理中です...