転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
112 / 493

第112話 仮に退いた場合

しおりを挟む
「んじゃ、休憩にすっか」

森の中に入り、モンスターとの実戦を始めてから数時間後、イシュドたちは適当な場所で休憩を取り始めた。

「っしゃ、どんどん食ってけよ!!」

そう言うと、イシュドはガルフたちが討伐したモンスターの中で、食えるモンスターの肉をどんどん焼き始めた。

「……こういった場所で、しっかりお腹に溜まる料理が食べられるのがとても有難いことなのは解っていますが、匂いでモンスターが寄ってきますわよね?」

「ん? あぁ……そうだな。これまで狩ってきた場所とはちげぇから、こいつを使っとくか」

イシュドは結界タイプのマジックアイテムを取り出し、設置。

「イシュド、それはどんなマジックアイテムなの?」

「結界内で発生する匂いを、上に飛ばしてくれるんだよ」

結界の天辺から煙突の様に結界が伸びており、木々よりも上の場所で匂いが放出される。

煙突は細く、空を飛ぶ鳥獣タイプのモンスターが入ることは不可能。

「そんなマジックアイテムが……いったい、どこの誰が造りましたの」

「スアラの師匠を務めてくれてる人だ。俺がこんな感じのマジックアイテムを造ってくれませんかって頼んだら、二週間後にはマジで要望通りのこのマジックアイテムを造ってくれた」

「……これ、購入出来ませんの」

数時間の間、レグラ家が治める森の中で戦い続けたことで、改めて他の領地に生息しているモンスターとはレベルが違うと体感。

ただ、だからといって他の地域に生息するモンスターを相手に油断出来るという訳ではなく、野営中の昼食というのはできればゆっくり食べたいもの。

「さぁな。スアラの師匠に聞いてみねぇと分からねぇな。ほら、とりあえず食ってけ食ってけ」

イシュドは自分で食べながらもどんどん肉を焼いていき、適度に調味料をふりかけて味を変えていく。

すると……数十分後には、全員が満腹になっていた。

「イシュドぉ……こんな場所で食う飯に、調味料とか使って、味を変えんのは……マジで、反則だろ~~」

「う、む。食べ過ぎたのは勿論、俺たちが悪いのだが…………本当に、腹が膨れた」

動けることには動けるものの、正直なところ満腹による幸福感で満たされているフィリップとダスティン。

「情けないですわね、フィリップ」

「……うっせ。お前だって結構食べて腹ぽっこりしてんだろ」

「っ!!!!」

一定以上の量を食べれば、その直後はお腹がぽっこりしてしまう。

それは恥ずべきことではなく、基本的に誰でもそうなってしまうもの。
ただ……それを遠慮せず口にしてしまうあたり、フィリップのミシェラに対するデリカシーのなさが窺える。

「あなたという人は、本当に!!! ……はぁ~~~~。もう良いですわ」

「お、珍しいな。もっと怒り散らかすかと思ったのによ」

「……私も私で、それなりに満腹感がありますの。無駄に怒ったところで、疲れるだけですわ」

用意しておいた椅子に腰を下ろし、ミシェラは結界の外に視線を向ける。

「それにしても、本当に優れた結界ですわね」

結界の外には複数のモンスターが倒れており、その死体をイシュドが解体していた。

「Cランクのモンスターも含まれていますね……ミシェラが先程言っていたように、購入出来るのであれば、是非購入したいですね」

「……イシュドってさ、もしかして錬金術も出来たり、するのかな?」

「ガルフ、何を言ってるのかしら。イシュドの職業は戦闘職の前衛タイプ。錬金術を会得するのは、不可能ですのよ」

「そう、かな……そこまで錬金術を詳しく知ってる訳じゃないけど、イシュドなら……原理と技術を理解したら、出来そうな気がして」

身内の中でも、イシュドのそういった部分に関して理解があるリュネも、ガルフと同じ考えを持っており、同意するように頷いた。

「イシュド兄さんは、私たちレグラ家の中でも特に異質な存在なので、戦闘職の前衛だから、といった理由で不可能と断定するのは早計かと思います」

異質な存在。

その言葉を聞き……全員、激闘祭で行われたエキシビションマッチと、先日超特別製の訓練場で行われた亜神の領域に踏み込んでいると称されるロベルトとの試合を思い出していた。

(そういえばあの時、イシュドは前衛でありながら、魔法を発動していましたわ…………特殊な職業に就いているとは言っていましたが、その特殊さによっては……って、やっぱりあの光景、どう考えてもおかしいですわよね????)

(ロベルトさんとの戦いの最後……イシュドが放った一撃は、確かに居合の際に行う脱力を応用した一撃だった)

(ん~~~~、確かにイシュド君ならという可能性は感じますが、それでも錬金術というのは、紛れもなく生産者の力。いくらイシュド君と言えども…………っていう考え方が、視野を狭める結果に繋がるのでしょうね)

ミシェラたちがあれこれ考えながら食休憩している間に、イシュドが結界の反撃を食らって討伐されたモンスターの解体を終えて戻ってくると、ガルフが遠慮なく質問した。

「ねぇ、イシュド。イシュドってもしくは錬金術が出来たりする?」

「むっちゃ唐突な質問だな。まっ、ポーションを造ったりとかは出来るんじゃねぇの? 錬金術のスキルを持ってるやつよりは生産速度とかクオリティは落ちるだろうけど」

「で、でも造れるは造れるんだね……イシュドにその気はないんだろうけど、引退しても進める道があるのは凄いね」

「はは、かもしれねぇな。けど、俺は仮に引退するなら……どうせなら、鍛冶師の道に進みてぇかな」

「それは……どうして?」

「だってよぉ、武器ってかっけぇだろ」

なんとも……あまりにも、単純で子供過ぎる考え。

かっこいいから、という理由で目指せるほど甘い世界ではない。
本人がそれを解っていないとは思えないが、あまりにも単純過ぎる理由に、一同は固まった。

「物理的な強さとかと同じで、終わりなき道ではあるんだろうけど、やっぱまず武器はかっけぇってのが第一理由だな。マジの武器を見た時は……へへ、笑顔が止まんなかったのを今でも覚えてるぜ」

当然ながら、前世で本物の武器を見る機会は一度もなかった。

多少の憧れを持っていたからこそ、初めて見た時の衝撃は今でも覚えている。
それは……ガルフたちも同じであったため、さすがに理由が子供過ぎないか? というツッコみが口から零れることはなかった。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

処理中です...