転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第121話 地に付ける覚悟はあるか

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「……ダスティン、私思ったのですが」

「俺も、ある事を思い付いたが……」

二人は、ほぼ同時に同じ事を考えた。

「そもそも……そもそもな話ですが、彼の事を嫌っている者たちは、ここに来ようと……イシュドに頭を下げようとしませんよね?」

「ふむ。やはり同じ考えに至ったか。俺たちが言うのもあれだが、貴族というのはプライドが高いからな」

野蛮だと、蛮族だと見下していた。

そんな男、野生児に二人の同級生が挑み……完膚なきまでに叩き潰され、その後は上級生が挑むも、蛮族が使うと思えない武器で敗北。
その後、何十人という学生がイシュドに挑んだが、纏めて蹴散らされた。

そして激闘祭のエキシビションマッチ、各学年の優勝者たちが力を合わせて挑むも、野生児は本来メイン武器である筈の武器を使わず、素手で圧倒。

圧倒的、格が違う……そういった言葉では生温いほどの差を見せ付けられたはずなのだが、中にはまだ言い訳を並べる者がいる。
彼らは心の病に掛かっているのか? それとも思考力が著しく下がる本格的な病気に掛かっているのか…………そうではない。

多くの貴族は、他の立場の人間よりも、個人的に誇り高い!!! と思っているプライドを有している。

イシュドが聞けば「そんな肥料にもならないクソみたいなプライドなんざ意味無いから、さっさと捨てろ」と吐き捨てる事間違いないのだが、それが多くの貴族にとって当たり前なのである。

「そう考えると、未だにイシュドのことをやや嫌っている部分があるが、ミシェラは珍しくそういった気持ちを有していても、頭を下げることが出来る珍しいタイプだな」

「そうですね……個人的には、いつまでもその折れない強さと、柔軟さを持ち合わせてほしいと思います」

二人の言う通り、ミシェラにとってイシュドとの出会いは最悪という言葉が一番近い。

出会って翌日にはボロ負けし、その後は恥を忍んで一緒に訓練させてほしいと頼むも……大金を用意しなければならず、それからもちょいちょい嚙み付いては倍に返される始末。

人によっては、自分を負かした相手に頭を下げるなど、プライドがないと口にするかもしれない。
だが、二人はそれが出来るか否かで、本当に成長出来るかが変わると思っている。

「……不満を抱いてる彼らが頭を下げたところで、イシュド君は容易に胸の内を見抜くでしょうね」

「そういったところに関しては敏感というか、鋭い眼を持っているタイプだからな………………不満がある者たちには、諦めろというしかないか」

クリスティールは……まだ良い。
来年には学園を卒業し、騎士団に入団している。

しかし、ダスティンはまだ学園に在籍しており、生徒会長にならずとも学園の生徒たちを引っ張る存在ではある。

(……今からでも、頭を地面に付けてでもイシュドに頼み込めるか、そう言うしかないな)

結局のところ、本人達の意志次第としか言えない。
仮に本気で恥もプライドを捨てでも強くなりたいと願っても……訓練内容について行けず、逃げ出してしまう可能性すらある。

どちらにしろ、生半可な覚悟しかない者はチャンスを掴むことなど出来ない。
といった結論に至り、二人はそれ以上この件に関して考えることを止めた。


「イシュド、少し良いかしら」

「ん? なんだ、デカパイ」

「あなた、多数の敵と戦う時、何を考えてますの」

もうデカパイと呼ばれることは完全に諦めたミシェラ。

「……………………来た攻撃に反応する、隙を見つけたら全力で叩き込むとか?」

「ッ、もう少し具体的なことは考えてませんの」

ある程度予想はしていたが、あまりにも予想通りの答えが返ってきたため、頭痛を感じながらも、諦めずに訊き続ける。

「んな事言われてもな~~。それに関しては割と感覚タイプだったから、マジで良いアドバイスはねぇんだが………………強いて言うなら、囲まれたら跳んで敵全てを見渡せる場所に移動するとか?」

「一度戦況を冷静に把握する、ということね」

「そんな感じかもな。それが出来りゃあ、とりあえず後ろから狙われることはねぇ」

「……なぁ、イシュド。悪くねぇ対処法だとは思うけどよ、それ跳んでる相手に攻撃されねぇか?」

会話に入って来たフィリップの質問に、イシュドは特に悩まず……当たり前だろと言わんばかりの顔で返答。

「そりゃ跳び方によるだろ。山なりに跳んだろらフィリップの言う通りやられるだろうけど、こんな感じで」

宙に跳んでいる間、あまり山なりにならないように……なるべく地面と並行を保ちながら跳び、着地という実演を行う。

「早い段階で顔を、体を下にいる敵の方に向けることが出来たら、攻撃が飛んできてもなんとか出来るだろ」

「…………あいつ、サラッとムズイこと言いやがったな、ミシェラ」

「えぇ、同感ですわ、フィリップ」

あまり普段から仲が良い二人ではないが、この時ばかりは意見が合致した。

(あまりにも理想的過ぎて、少し魅入ってしまいましたわ)

(イシュドが言いたい理屈は解るが、あんなに空中で上手く体勢をとるのは……かなりムズイだろ)

今は地面が平面の場所で行ったが、イシュドならば斜面であろうとも同じようにやるだろうという確信があった。

「個人的には、空中でどう動けるかってのも結構大事かもな。踏ん張りは効かねぇけど、その分アホみたいに体が回る」

「いや、それってあれだよな。地面との……平衡感覚ってやつ? がなくなって、うっかり頭から激突することもあるよな」

「あぁ~~~~……あったな! はっはっは、懐かしいぜ。マジで頭割れるかと思ったな、あれは」

はっはっは!!!!! と思いっきり笑うイシュドだが、二人からすれば笑い飛ばせる話ではない。

(……これ、練習するか?)

(…………練習するしかな、ないでしょう)

眼で会話しながら、二人は大きなため息を一つ吐き……再度、イシュドから具体的なアドバイスを求めた後、実際に囲まれた状況から跳んで脱出する訓練を開始。

空中で体勢整えるところまでは割と二人とも早く進んだが……空中で攻撃された時の対処するところで躓いた。

とはいえ、遠距離攻撃を行うのがイシュドであり、かなり雑に攻撃していたことが躓きの要因と言えなくもなかった。

それでもなんやかんやで実戦における練度、実力等が向上する中……夏休みも半分が過ぎた頃、イシュドにとって予想外の客が訪れる。
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