転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第140話 王にして王に非ず

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「俺の相手は、お前か」

「そういう事だ……がっかりさせてくれるなよ!!!!!!」

戦斧に旋風が纏わされ、リザードマンキングどころか、戦場を切り裂きそうな斬撃が放たれるも……あっさりと受け止められてしまった。

だが、リザードマンキングは決してイシュドという人間を侮ることはなく「お前の方こそがっかりさせてくれなよ」と言い返すこともなかった。

(やはり、人間の中にもこの様な強者がいるのだな……同族を引き連れていては、ただ無残に殺されていただろう)

リザードマンキングには、かつて部下たちがいた。
当然ながら一体や二体ではなく何十体という規模である。

そしてそれはリザードマンキングだけではなく、コボルトとオークのキングも同じだった。
それぞれ多くの部下を従えていたが……ある時、気付いてしまった。

自分より弱い者を引き連れていても、意味がないと。
結果として足を引っ張られ、自分が死ぬかもしれない。

彼ら同士でぶつかることもあり、キングになる前……ジェネラル時代の時に、跳び抜けた存在であると認識していた。

「そういえばてめぇ!! なんで、同族の部下を、連れてねぇんだ!!!」

「気付いたのだ。自分より数段……圧倒的に弱い者を、連れていても、意味がないと、な」

「はっはっは!!!!! 何かを悟ったってか? んじゃあ、あのオークとコボルトも、同じ考えに至ったって、訳か!!!」

「その通りだ、人間よ」

リザードマンキングが扱う武器は、ロングソード。

これまたリザードマンキングの体格に見合うサイズに変化しているため、イシュドにとっては大剣となんら変わらない。

渡り合うには同じく大剣、もしくは大斧などの武器が妥当だが、イシュドのパワーがあれば……戦斧で渡り合うことは全く不可能ではない。

「んで、キングが三体も集まって、何しようってんだ!!!」

「征服、といったところか」

「征服ときたか! 人間どもを、皆殺しにしてやろうってか!! 良いね良いね!! そのどストレートな考え、嫌いじゃないぜ!!!!!」

「ぬっ!!!!」

自分よりも体格が劣る相手から攻撃に……体が押される。

既にリザードマンキングも強化系のスキルを使用しており、魔力も纏っている。
互いに隠し玉はあれど、二人とも五割以上の力は出していた。

「おらおらどうした!!! 征服すんだろ! 皆殺しにすんだろ!!! そんな欲望全開な目的を持ってんなら、俺一人殺せなきゃ夢のまた夢だぜ!!!!!!!」

斧技、狼牙が放たれる。

しかし、リザードマンキングの鱗を裂くには至らず、今度は逆にイシュドの体が押し返された。

「っ!!?? っと、ハッハッハッ!!!!! そうだよな! まだ終わらねぇよなッ!!!!!!!」

「当然だ。目的は征服だが……俺たちは王にして王に非ず。だからこそ、前に立っている」

イシュドの狂気に釣られ、リザードマンキングも歴戦の戦士が両足を小鹿の様に震わせる笑みを浮かべ……イシュドと同じく、得物に旋風を纏った。


(ふぅーーー、ふぅーーーー……眼を、背けたら駄目だ。あれが……あれが、僕の目指す場所なんだから!!!!)

ガルフたちだけではなく、リストと共に行動していた騎士や魔術師たちも膝を付かずに済んでいた。

ただ、それでも目の前で繰り広げられる激闘に対し……それぞれ思うところがあった。

イシュドは言った。
命を懸けて、最高の戦いを見せてやる。だから、瞬きをするなと。

彼等の目の前で行われている戦いは、確かに最高の戦いである。
それでも……ガルフたちからすれば、まさに異次元の戦い。
全員がイシュドと出会い、今まで以上の向上心を身に付けることが出来た。

しかし、目の前の戦いは……彼等のプライドなどを再度砕くには、十分過ぎた。

レグラ家に仕えている騎士や魔術師たちは、日々既に世間一般基準では化け物と
化した先輩たちの模擬戦や試合等を見ているため、絶望はなかった。

(あの戦いで、笑えるのですか…………改めて、根本から違うと思い知らされますね)

ガルフたちの中で、一番三次転職には近い学生、クリスティール。

日々の模擬戦の中でフィリップより僅かに勝率が高く、最年長であっても成長が緩やかになることはなく、確実に高みへと昇っていた。

だが……そんなクリスティールでも、つい考えてしまう。
自分が三次転職したとして、あの怪物たちとイシュドやレオル……リスト達の様に渡り合えるのかと。

(ッ!! 違うから、なんなのですか。それは…………私たちが口にしていい言葉ではない!!!!!!)

自分もレグラ家の令嬢として生まれてれば、と考えるのはただただナンセンス。

そして貴族の生まれである自分がそういった事を考えてしまうのに、忌避感を覚えずにはいられなかった。

「皆さん。しっかりと、前を向けていますか」

「「「「「「「…………」」」」」」

「返事をしなくて構いません。イシュド君の言った通り、目の前の戦いを決して見逃さないように」

余計なお世話かもしれない。

クリスティールが思っているほど、ガルフたちは弱くないかもしれない。
それでも、彼女は生徒たちの長として、言葉を続けた。

「イシュド君だけではなく、オークキングと戦っている騎士の方やコボルトキングと戦っている獣人族の方も、私たちより遥かに強い」

リストはイシュドの様に狂気的な笑みを浮かべてはいないが、それでも淡々と表情を変えずにオークキングの攻撃に対処し、時には渾身の一撃でその巨体を押していた。

そしてレオルは……イシュドの様に心の底から笑みを浮かべているのではなく、性格には乾いた笑みを浮かべているというのが正しい。
ただ、コボルトキングの圧に、鋭い爪撃に怯えている訳ではなく、その強さや強敵に挑む感覚……全てひっくるめて楽しんでいた。

「しかし、だからといって、私たちが追い付けない理由はありません。何故なら……あの背中を知ってしまったからです」

イシュドという人間に憧れたのだから、とは口にしなかったクリスティールは、まさにナイス判断をした。

仮にそれを口にしてしまった場合、約一名が最高の戦いから視線を逸らし、全力で否定し始めた可能性が高かった。
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