転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
162 / 488

第162話 どれを受ける?

しおりを挟む
同級生から「一緒に訓練をさせてほしい!!!」という申し出を断ってから既に一週間が過ぎた。

その間、未だあまりよろしくない貴族思考が残る者たちから何かされるこちはなく、街中に繰り出しても裏の組織に属する者たちに命を狙われることもなかった。

「う~~~っす、なんか用? 会長パイセン」

そしてイシュドたちは放課後、担任の教師であるバイロンから生徒会室に向かえと伝えられ、言われた通り訓練を始める前に生徒会室へと向かった。

「えぇ、勿論あなた達に用があって呼びました」

生徒会室にはクリスティール以外にも三人の生徒会職員がおり、その内の一人……イシュドからインテリメガネパイセンと呼ばれてる生徒は軽くため息を吐いた。

「イシュド・レグラ君。その会長の呼び方、どうにかならないかね。他の学生たちが面をしたらどうする」

「相変わらずインテリメガネパイセンは面倒な事考えてるね~~~。そんな呼び方したら双剣で首チョンパされるって解ってんだから、真似する生徒はいないだろ」

「イシュド君、私はシリアルキラーではありませんよ」

本人が言う通り、クリスティールには好き好んで人を殺す趣味、短気さはない。

「さぁ、五人とも座ってください」

イシュド、ガルフ、フィリップ、ミシェラ、イブキ。

今回呼ばれたのはこの五人のみ。

夏休みが終わるまで、途中参加ではあるが共にレグラ家で過ごした第五王子、アドレスはいない。

「早速ですが、学園に依頼が届いています」

書記を担当している明るい二年生の女子生徒がテーブルに多数の依頼書を並べていく。

「は~~い! これが依頼書だよ!!!」

「…………会長パイセンたちが、俺達ならやれると思って選んだ依頼、ってことか」

「そうだよ! 勿論、私たちもちゃんと考えたよ~~~」

(……他の二年ならふざけんなって思うが、激闘祭に参加してたこの人たちなら、まぁ納得出来るか)

学生たちを束ねる組織の者たちが、冷静にしっかりと選んだ……依頼書の数は、全部で三十枚。

「……会長パイセン、これって多いのか?」

「えぇ、勿論多いですよ。確かに二年生になれば一応自由に選ぶことは権利はありますが、私たち……教師たちが制限する権利があります。まだイシュド君たちが一年生ということを考えれば、非常に広く選べる結果となりました」

「ふ~~~~~ん……」

イシュドはひとまずテーブルに並べられた依頼書を一枚ずつ確認していった。

特に五人の中でリーダーを決めている訳ではない。
ただ……五人の中で、確実に一番強いのはイシュドだった。

それは犬猿の仲であるミシェラも認めており、イシュドが一人で依頼書を確認していく姿を見ても……特に文句を口にすることはなかった。

「………………会長パイセン、もうちょい良い依頼はねぇの?」

だが、全ての依頼書を見終えた結果、イシュドが受けても良いと思える内容はなかった。

「……私たちなりに、色々と考えて選んだのですが」

「うん、そうだな。並みの一年なら死ぬような依頼がわんさかある。考えて選んだって話は信用出来るよ。けどよ……これじゃあ、俺がこいつらの子守りになるだけだろ」

イシュドの言葉通り、依頼書に記されている内容は、どれも並ではなくとも……高等部の一年生が受ければ、全滅待ったなしのものばかりである。

ただ、イシュド・レグラという人間が……傍に居ても良いと思った同級生たち。
激闘祭を越え、彼の実家で一般的に見れば地獄とも思える訓練漬けの日々を越え、自分の力にした彼らであれば……生きて帰ってこれる可能性の方が高い。

しかし、そこにイシュドという学生がいれば、非常に安全性の高い依頼になってしまう。

「イシュド・レグラ君。学生たちが受ける依頼とは、本来無事帰還出来る確率が高いものを選び、学園側も用意するものだ。冒険者たちが受ける依頼とは似て非なるものなのだよ」

「ガルフはともかく、フィリップは公爵家の人間でデカパイは侯爵家の人間、イブキは他国からの留学生だからか?」

「解っているじゃないか。私も君の力を感じ取ったからこそ、それらの依頼内容を君たちが受けることに賛同した」

三十枚の依頼書の中には……Bランクモンスターの討伐依頼も入っている。

当然の事ながら、三年生であっても受けられる生徒は限られている。
そんな依頼を、彼らはガルフたちが受けても良いと判断した。

これはイシュドだけではなく、ガルフたちの実力も冷静に下した判断だった。

「あっそ。そりゃ結構なことだが、やっぱり足りねぇよ。Bランクつっても……うちの領にいるBランクと比べればなぁ~~~~」

「っ……君は、仮に友人が死んでも構わないと言うのか」

本来であれば、Bランクモンスターの討伐は三次転職が出来るレベルに近づいた者で……ギリギリ。
三次転職を果たしていたとしても、なりたての坊やでは死ぬ可能性も十分あり得る。

「んな簡単に死ぬ鍛え方はしてねぇよ。なぁ、会長パイセン。別にAランクモンスターの討伐依頼を出してとは言わねぇけど、なんかもっと面白い依頼はねぇの?」

(((来るわけないに決まっているだろ(だろう)(でしょ)!!!)))

役員三人は、心の中で盛大にツッコんだ。

戦闘職を志す貴族の令息、令嬢は強い。
それはある程度の常識ではあるが、それでも限度がある。

稀に……本当に稀に、常識という概念を粉々に砕き潰す者は現れるが……それでも、Bランクをソロで討伐するのが限度である。

その稀な存在に該当しうる学生……クリスティールは目を閉じて少し考え込んだ後……一つの書類を取り出し、テーブルの上に置いた。

「こちらは、調査系の依頼書です」

「調査系? 討伐系じゃなくて、か?」

「その通りです。基本的には討伐系よりも評価に繋がりにくい依頼ですが、場合によっては討伐系以上の評価に繋がる依頼です」

「ほ~~~~ん。んで、こいつを出してなかった理由は?」

「……個人的な、勘です」

「個人的な勘ねぇ………………まっ、会長パイセンの勘なら、全く信用出来ねぇとは言えねぇかな」

そう言いながらイシュドは新たな依頼書に書かれてある内容を読み……そして、薄っすらと口端を吊り上げた。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

トップ冒険者の付与師、「もう不要」と言われ解雇。トップ2のパーティーに入り現実を知った。

ファンタジー
そこは、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮を舞台にモンスターと人間が暮らす世界。 冒険者と呼ばれる、ダンジョン攻略とモンスター討伐を生業として者達がいる。 その中で、常にトップの成績を残している冒険者達がいた。 その内の一人である、付与師という少し特殊な職業を持つ、ライドという青年がいる。 ある日、ライドはその冒険者パーティーから、攻略が上手くいかない事を理由に、「もう不要」と言われ解雇された。 新しいパーティーを見つけるか、入るなりするため、冒険者ギルドに相談。 いつもお世話になっている受付嬢の助言によって、トップ2の冒険者パーティーに参加することになった。 これまでとの扱いの違いに戸惑うライド。 そして、この出来事を通して、本当の現実を知っていく。 そんな物語です。 多分それほど長くなる内容ではないと思うので、短編に設定しました。 内容としては、ざまぁ系になると思います。 気軽に読める内容だと思うので、ぜひ読んでやってください。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...