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第232話 もう恩は返した?
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「? そっちか」
「ぬがっ!!!!???? ッ、く……あぁ~~~、参った参った。降参だ」
「あいよ」
フィリップがシドウに相談してから数日後の模擬戦。
イシュドはフィリップとの戦闘中に、一瞬……フィリップを見失った様に感じた。
「あぁ~~、やっぱイシュド相手だと無理クソだな~~」
「なっはっは!!! 年季が違ぇってやつだ」
「一撃ぐらい入っかな~と思ったんだけどな」
「あぁ、さっきのあれか。ぶっちゃけ、結構良かったと思うぞ。勘を信じて戦斧を振り回しただけだしな」
休憩中、二人は模擬戦の最後のやり取りに関して振り返っていた。
「勘って……やっぱ次元が違ぇぜ」
勘という基本的にあてにならない要素に負けてしまったと思うべきか、イシュドを相手に勘という要素に頼らせるほど追い込んだと考えるべきか。
フィリップは……そもそもイシュドの勘はただの勘とは思っていないため、負けるべくして自分は負けたのだと思った。
「にしてもあれだな……なんか、ちょっと雰囲気変わったか?」
「よりイケメンになったってか?」
「令嬢に声を掛けられる回数が増えたのか?」
「……増えてねぇよ」
フィリップは激闘祭で大活躍はしたものの、それでも長年のイメージは消えず、相変わらずノット・オブ・ノット紳士ということもあり、元々本人にそのつもりはないものの、これまで通り貴族令嬢たちからモテていない。
「はっはっは!!! だろうな。どこが変わったかって言われっと、明確には答えられねぇけど…………なんかあれだ。まだまだこっから強くなりそうだな~って雰囲気が強まったって感じだな」
「なんだそりゃ。抽象的過ぎんだろ、ったく…………」
「ついでに、何か悩みもありそうだな」
「カウンセラーかよ」
「フィリップにしちゃあ、陽気さが薄いなと思ってな」
大きなため息を吐きながらも、特に隠すつもりはないフィリップは最近抱えている悩みをイシュドに伝えた。
「別に悩みって訳じゃねぇんだけどな。最近、父さんからこの家のこの令嬢と見合いしてみたらどうだ、って感じの手紙がちょこちょこ届くんだよ」
「あらら、そりゃご愁傷様」
イシュドは特に茶化さなかった。
普段のフィリップから想像すればあり得ない話に思えなくないが、それでもイシュドはフィリップが公爵家の令息であることを忘れていなかった。
「婚約者とか用意されてもなぁ~~って感じなんだよ。んなの居たら、遊べなくなるだろ」
「だな~~~。遊べなくなっちまうよな~~~」
フィリップの考えに、イシュドはうんうんと何度も頷きながら同意した。
そんな二人にジト目を向ける模擬戦終わりのミシェラとルドラ。
対して、ヘレナはそういう存在が出来たのであれば、遊ぶつもりがないフィリップとイシュドに感心した。
貴族の令息であれば、女性関係や歓楽街で遊ぶといった行為は恥だと……一応考えられている。
とはいえ、貴族の世界で恋愛結婚という事例は少なく、大半は家同士の意志が強い政略結婚が行われている。
そのため、裏で隠れてこそこそする貴族の男は少なくなく……中には、夫人という立場であっても旦那と血の繋がった子供を産めば、後は同じく裏でこそこそする女性もいる。
そういった裏の事情を考えれば、寧ろ二人の考えは逆に悪くないのでは? と思えなくもない。
「けど、迷ってるって事は、良い子でもいたんか?」
「いねぇよ。ただ、父さんからの紹介だからなぁ……あんま無下にし続けんのもな」
口煩い者が多い実家の中で、一番口煩くないのは意外にも当主であるゲルギオス公爵だった。
怒られない方が、寧ろ愛されていないのではないか。
そんな考えがあるにはあるが、フィリップは寧ろありがたいと感じていた。
そこにどういった意図があるかなど、どうでも良かった。
「激闘祭で優勝したんだから、別に断り続けても良いんじゃねぇの? そもそも出たくても出られねぇ奴らが多いな中、お前は出場して優勝したんだ。普通に考えりゃ、それだけで十分恩を返したって言えるんじゃねぇか?」
「あぁ…………確かに、確かにそうだよな!!!!!」
先程までの悩みではないと言いながらも実際悩んでいた表情はどこにいったのやら、イシュドの言葉を聞いて、一気に晴れやかな……いつも通りの陽気な表情に戻ったフィリップ。
「「「……」」」
それだけで恩を返したことにはならないんじゃないかとツッコミたい、貴族出身のミシェラとルドラ、ヘレナの三人。
ただ、激闘祭の準決勝でフィリップに負けてしまったミシェラとしては、たかが
それだけで、とは言えなかった。
そしてカルドブラ王国の王都にも激闘祭と開催内容が同じである学生が参加するトーナメントがあるため、それだけで恩を返せる訳が……なんて口が裂けても言えなかった。
「失礼な言葉なのは解っていますが、フィリップはよくガルフやミシェラさん、アドレアス様が参加しているトーナメントで優勝出来ましたね。あなたの実力は軽薄な雰囲気に反して高いことは身を持って解っていますが、それでも正直なところ、驚きました」
「あっはっは!! 軽薄なのは自覚してっから、俺の実力を認めてるとか言ってくれる時点で嬉しいってもんだぜ。まぁ、あの激闘祭では途中でガルフがディムナってやつとぶつかって、ダブルノックアウトになってくれたからな」
本命の一人とダークホースがぶつかり合い、共に倒れて敗退。
フィリップ以外の参加者たちが口が裂けても言えないが、二人が共倒れしてくれたのは非常にラッキーな出来事であった。
「んで、ミシェラとの準決勝はこの前の試合みたいに……俺らしくない感じで頑張ったってところかな。つか、アドレアスとの決勝も似た様なもんか。我ながら、あん時の俺はらしくなかったな」
「………………」
「ふっふっふ。フィリップらしくない頑張りを引き出すことが出来た。そう思うと、負けてしまったけど、どこか嬉しく思うところがある。ね、ミシェラ」
「お言葉ですが、別に嬉しくはありませんわ、アドレアス様」
せっかくアドレアスが本音を代弁してくれたというのに、ツンデレデカパイはツンツンした態度を崩すことはなかった。
「ぬがっ!!!!???? ッ、く……あぁ~~~、参った参った。降参だ」
「あいよ」
フィリップがシドウに相談してから数日後の模擬戦。
イシュドはフィリップとの戦闘中に、一瞬……フィリップを見失った様に感じた。
「あぁ~~、やっぱイシュド相手だと無理クソだな~~」
「なっはっは!!! 年季が違ぇってやつだ」
「一撃ぐらい入っかな~と思ったんだけどな」
「あぁ、さっきのあれか。ぶっちゃけ、結構良かったと思うぞ。勘を信じて戦斧を振り回しただけだしな」
休憩中、二人は模擬戦の最後のやり取りに関して振り返っていた。
「勘って……やっぱ次元が違ぇぜ」
勘という基本的にあてにならない要素に負けてしまったと思うべきか、イシュドを相手に勘という要素に頼らせるほど追い込んだと考えるべきか。
フィリップは……そもそもイシュドの勘はただの勘とは思っていないため、負けるべくして自分は負けたのだと思った。
「にしてもあれだな……なんか、ちょっと雰囲気変わったか?」
「よりイケメンになったってか?」
「令嬢に声を掛けられる回数が増えたのか?」
「……増えてねぇよ」
フィリップは激闘祭で大活躍はしたものの、それでも長年のイメージは消えず、相変わらずノット・オブ・ノット紳士ということもあり、元々本人にそのつもりはないものの、これまで通り貴族令嬢たちからモテていない。
「はっはっは!!! だろうな。どこが変わったかって言われっと、明確には答えられねぇけど…………なんかあれだ。まだまだこっから強くなりそうだな~って雰囲気が強まったって感じだな」
「なんだそりゃ。抽象的過ぎんだろ、ったく…………」
「ついでに、何か悩みもありそうだな」
「カウンセラーかよ」
「フィリップにしちゃあ、陽気さが薄いなと思ってな」
大きなため息を吐きながらも、特に隠すつもりはないフィリップは最近抱えている悩みをイシュドに伝えた。
「別に悩みって訳じゃねぇんだけどな。最近、父さんからこの家のこの令嬢と見合いしてみたらどうだ、って感じの手紙がちょこちょこ届くんだよ」
「あらら、そりゃご愁傷様」
イシュドは特に茶化さなかった。
普段のフィリップから想像すればあり得ない話に思えなくないが、それでもイシュドはフィリップが公爵家の令息であることを忘れていなかった。
「婚約者とか用意されてもなぁ~~って感じなんだよ。んなの居たら、遊べなくなるだろ」
「だな~~~。遊べなくなっちまうよな~~~」
フィリップの考えに、イシュドはうんうんと何度も頷きながら同意した。
そんな二人にジト目を向ける模擬戦終わりのミシェラとルドラ。
対して、ヘレナはそういう存在が出来たのであれば、遊ぶつもりがないフィリップとイシュドに感心した。
貴族の令息であれば、女性関係や歓楽街で遊ぶといった行為は恥だと……一応考えられている。
とはいえ、貴族の世界で恋愛結婚という事例は少なく、大半は家同士の意志が強い政略結婚が行われている。
そのため、裏で隠れてこそこそする貴族の男は少なくなく……中には、夫人という立場であっても旦那と血の繋がった子供を産めば、後は同じく裏でこそこそする女性もいる。
そういった裏の事情を考えれば、寧ろ二人の考えは逆に悪くないのでは? と思えなくもない。
「けど、迷ってるって事は、良い子でもいたんか?」
「いねぇよ。ただ、父さんからの紹介だからなぁ……あんま無下にし続けんのもな」
口煩い者が多い実家の中で、一番口煩くないのは意外にも当主であるゲルギオス公爵だった。
怒られない方が、寧ろ愛されていないのではないか。
そんな考えがあるにはあるが、フィリップは寧ろありがたいと感じていた。
そこにどういった意図があるかなど、どうでも良かった。
「激闘祭で優勝したんだから、別に断り続けても良いんじゃねぇの? そもそも出たくても出られねぇ奴らが多いな中、お前は出場して優勝したんだ。普通に考えりゃ、それだけで十分恩を返したって言えるんじゃねぇか?」
「あぁ…………確かに、確かにそうだよな!!!!!」
先程までの悩みではないと言いながらも実際悩んでいた表情はどこにいったのやら、イシュドの言葉を聞いて、一気に晴れやかな……いつも通りの陽気な表情に戻ったフィリップ。
「「「……」」」
それだけで恩を返したことにはならないんじゃないかとツッコミたい、貴族出身のミシェラとルドラ、ヘレナの三人。
ただ、激闘祭の準決勝でフィリップに負けてしまったミシェラとしては、たかが
それだけで、とは言えなかった。
そしてカルドブラ王国の王都にも激闘祭と開催内容が同じである学生が参加するトーナメントがあるため、それだけで恩を返せる訳が……なんて口が裂けても言えなかった。
「失礼な言葉なのは解っていますが、フィリップはよくガルフやミシェラさん、アドレアス様が参加しているトーナメントで優勝出来ましたね。あなたの実力は軽薄な雰囲気に反して高いことは身を持って解っていますが、それでも正直なところ、驚きました」
「あっはっは!! 軽薄なのは自覚してっから、俺の実力を認めてるとか言ってくれる時点で嬉しいってもんだぜ。まぁ、あの激闘祭では途中でガルフがディムナってやつとぶつかって、ダブルノックアウトになってくれたからな」
本命の一人とダークホースがぶつかり合い、共に倒れて敗退。
フィリップ以外の参加者たちが口が裂けても言えないが、二人が共倒れしてくれたのは非常にラッキーな出来事であった。
「んで、ミシェラとの準決勝はこの前の試合みたいに……俺らしくない感じで頑張ったってところかな。つか、アドレアスとの決勝も似た様なもんか。我ながら、あん時の俺はらしくなかったな」
「………………」
「ふっふっふ。フィリップらしくない頑張りを引き出すことが出来た。そう思うと、負けてしまったけど、どこか嬉しく思うところがある。ね、ミシェラ」
「お言葉ですが、別に嬉しくはありませんわ、アドレアス様」
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