転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第249話 理想とは違うが

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「それでは……始め!!」

開始の合図が行われたと同時に……二人は駆け出さなかった。

(ッ、この時間は、無駄だ)

だが、直ぐにエリヴェラはイシュドと睨み合い続けることを止め、地を蹴った。

「良い判断だ」

その判断にイシュドは笑みを浮かべながら、迫りくる聖剣に対して魔力を纏った戦斧で対応。

「ハッ!!!!」

「おらッ!!!!」

聖騎士と狂戦士……暗黒騎士とはまた別ベクトルで真逆と思えなくもない両者のファーストタッチの結果は……エリヴェラのパワーを読み間違えたイシュドが、やや押される結果となった。

「っと、なっはっは!! 良いじゃねぇか。中々鍛えてるじゃねぇか!!!」

だが、イシュドは直ぐに調整して二撃目に対応。

「戦う信者たる者、鍛えるのは、至極当然、かと」

「あっはっは!!!! そうかそうか……なら、存分にぶつけてくれ!!!!」

もっと上げても構わない。
実際に手合せしたイシュドは、改めて先程戦り合っていたヨセフとは違うと感じ、ギアを上げた。

(良いね……本当に良いな。ちゃんと、付いてきやがる)

手数という面では、イシュドの方が勝っている。
だが、聖剣と盾……戦斧を対処する数に関しては間に合っており、

聖剣と盾を持っていても身軽さを感じさせる動きで、回避も行う。

(それじゃあ、ちょっと遊びを入れてみるか)

エリヴェラが盾で戦斧による攻撃を対処する。
それが確定した瞬間、イシュドは敢えて戦斧をスカさせ、右足で蹴りを叩き込んだ。

「ッ!!!!!」

「…………思ったより戦い慣れてるんだな。ちょっとびっくりしたぜ」

イシュドの蹴りは、確かに盾に当たった。
おそらく耐えられるだろう……それは想定内だった。

(こいつ、今の一瞬で後ろに跳びやがったな)

だが、エリヴェラはただ蹴り飛ばされるだけではなく、後方に跳んで若干ではあるが威力を抑えていた。

「武器と、体技を混ぜ合わせた戦闘スタイルを持つ方が、先輩にいますので」

「ほ~~ん? 自分が来ると思ってたタイミングで戦斧の衝撃が来なかったから、別の攻撃が、蹴りが来ると思って後ろに跳んだって訳か。頭の回転が早ぇじゃねぇか」

「イシュドさんこそ……本当に、恐ろしい身体能力ですね」

エリヴェラは体技が得意な先輩とも模擬戦、試合を行っているため、体技の特徴をある程度把握していた。

(体勢は、不十分だった。にもかかわらず、あの威力…………解っていたことだけども、凄い)

イシュド・レグラという人間が、高等部の一年生にして三次職に転職しているという情報は耳にしていた。

人によっては、二次職で聖騎士に転職したエリヴェラの方が凄いと口にする。
それは……そうなのかもしれないと、本人もちょっと思っていた。

だが、これから先自分が越える山道を、壁を目の前の同世代の男は既に越えている。
その事実に……エリヴェラは感嘆せずにいられなかった。

「上げてくぜ……ちゃんと付いてこいよ」

「えぇ、必死に付いていきます」

狂戦士は笑い、聖騎士は闘志を滾らせる。



「いやぁ…………あれだな。思ってたより、強ぇな。あの聖騎士」

「……そうですわね」

フィリップはただただ素の状態でマックスまでギアを上げたイシュドに対し、まだ聖光を纏わず、強化系スキルの発動だけで渡り合っているエリヴェラに賞賛を送る。

対して、ミシェラはその光景を観ているうちに……拳を握る力が強まっていた。

(私の求める理想とは違いますが、あれはあれで……私より、上手く対処してますわ)

二振りの戦斧を扱うイシュドに対し、双剣を扱うミシェラは一応手数では同等であり、対処出来ないことはない。

エリヴェラと同じく、二つの得物を使って対処するだけではなく、回避という選択肢も取れる。
だが、エリヴェラは素の状態でマックスまでギアを上げたイシュドに対し、時折盾で対処する際……耐える、もしくは受け流すのではなく、弾いていた。

(私の双剣で、あれは……っ、しかし…………)

二振りあるとはいえ、一つの攻撃が弾かれれば、少なからず大勢が崩れる。
その隙を狙い、エリヴェラは聖剣を振り下ろす。

勿論、イシュドはそれを心底楽しそうな笑みを浮かべながら躱すが、それでも戦況内容は……自分より良いものだと認めざるを得ないと感じたミシェラ。

「いやぁ~~~、世界は広いね、イブキ」

「……そうですね、シドウ兄さん」

当然と言えば当然……イブキもミシェラと同じく、渋い表情をしていた。

イブキも過去に、模擬戦ではあるが二振りの戦斧を使ったイシュドと戦ったことがある。
感想としては、他の武器を使っている時よりも、断然やりにくい。

(……いずれは挑戦しようとは思っていますが、小手先の技術では即破られてしまう……それを考えると、素の状態とはいえギアを最大限にまで高めているイシュドに、あそこまで対応出来ているエリヴェラ殿は…………見事の、一言ですね)

まだ先の話ではあるが、イブキはいずれ二刀流を体得しよと考えている。
楽な道のりではないことは、重々承知している。
それでも、目指すと決めている。

そんなイブキの眼から見て……エリヴェラの剣盾一体の攻防は非常に完成度が高かった。

「話だけでも驚かされましたが、実際に見ると……更に驚かされますね」

聖剣技を使えば、聖光を纏えばどうなるか。
エリヴェラの正真正銘を想定した上で何度も脳内でイメージした結果……当然の事ながら、クリスティールは自身が百パーセント勝てるイメージが思い浮かばなかった。

(時折見せるイシュド君のトリッキーの動きに関しても、正確に対応出来ている……現時点では、おそらくイシュド君を除く同じ一年生では……)

毎日イシュドたちと訓練を行えている訳ではないクリスティールだが、それでもガルフたちの戦闘力はおおよそ把握している。
勿論……ガルフが闘気の応用技術、護身剛気を会得していることも知っている。

だが、それを踏まえても……彼等の勝率が三割を越えることはない思った。

「さぁ、ようやく芯が暖まってきただろっ!!!! もっと魅せてくれ、お前の強さをよッ!!!!!!」

「望み通り、お見せ、しましょうッ!!!!!」

悪魔の注文通りエリヴェラは聖剣技と聖光の使用を解禁。

まだ楽しめる、寧ろこれからが本番…………その状況を改めて感じ取ったイシュドは、後方で観戦しているステラたちが思わずゾッとするような狂気的な笑みを浮かべた。
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