転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第287話 危機一髪

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「そ、そうなん、だ…………」

「ふふ、エリヴェラ。なんて面白い顔してんだよ」

「い、いや、その……もしかしたら、イシュド君はあまりそういう事に、興味がないタイプかと思って」

神の存在を信じるか否か。
このエリヴェラからの問いに関して、イシュドが「神ねぇ……まっ、いるにはいると思うぜ」と答えた事に、エリヴェラたちだけではなく、ガルフたちもそれなりに驚いていた。

「興味があるかないかって質問ならまた別だが、存在自体はしてるんじゃないかって思うぜ。生物の起源なんかは知らねぇけど、卵か先かヒヨコが先か、みたいな議論があるだろ」

「う、うん。確かにあるね」

「そういう議論があるなら、俺たちのスキルやレベル、職業ってのはどこから来たのか……俺としては、そもそも人間に備わってるとは思えなくてな」

「イシュドは、それが神から与えられた恩恵だと思ってるのね」

ステラもイシュドと同じ考えを持っていた。

「モンスター連中にも、明確な職業とかはねぇけど、ナイトとかファイター、ランサーとかメイジの名を持つ個体もいる。他にも…………まぁ、珍しいそういう職業名を持つ個体もるな」

(あっ、今イシュドの奴、あの話をしようとしかけたな)

フィリップは以前、イシュドの実家にいる際にイシュドから大浴場でオークがパラディンの名を持つオークパラディンというモンスターと遭遇した話を聞いたのを思い出した。

当然の事ながら、この国でもオークやゴブリンは嫌われてる。

そんなモンスターがパラディンの……聖騎士の名を持っているとなれば、大議論待ったなし……最悪、過激派がイシュドに襲い掛かり……戦闘不能になった戦闘職たちの山が出来上がる。

その話を聞いたフィリップは、目の前で二振りの大剣を扱うオーガが目の前からAランクモンスター、剣鬼へと進化し……人の言葉を話すようになった場面を名前で見たため、そういったモンスターがいてもおかしくはないと思っている。

だが、エリヴェラたちにとっては関係無く、オークがパラディンの名を持つなど……侮辱しているとしか思えない。

さすがのイシュドも、さすがに喧嘩売り過ぎな内容だと思い、その一件を口にするのは未然に防いだ。

「そもそも、スキルとかレベル、職業とかがなかったら、生物的に人間がモンスターに勝つのはクソ不可能な話だからな」

「……元々、神がそれを見通した上で、私たちに与えていたと」

「多分な」

ステラたちに話を合わせる為に嘘を付いたという訳ではなく、それらの点に関してだけは、イシュドは本当に神が自分たちに与えた点だと思っている。

加えて……何故自分がと思う部分もあるが、前世の記憶を持って別世界の住人として転生した。
これに関しても、それが普通であれば、世の中もっと複雑になっているというのがイシュドの考え。

あみだくじなのか、それとも適当に浮かんできた魂をキャッチして「よし、お前の魂を前世の記憶を付けた状態で転生させよう!」と決めたのかは知らない。

ただ、それが出来るのは神の領域に位置する者だけだとしか思えない。

「だから俺は、神は本当にいると思ってる。まっ、俺が言えるのはここまでだな」

それ以上、神に対する感想などを口にすれば、喧嘩待ったなしに発展してしまうため、イシュドはそれ以上神に関して口にしなかった。



(よ、良かった~~~~。予想してた答えと逆だったけど、本当に良かった~~~~~~~)

イシュドが、神はいるだろうと答えたことに関して、心の中で無茶苦茶ほっとしていたエリヴェラ。

神を信じる者として、神はいないと答える者に対する印象はあまりよろしくはない。
ただ、イシュドという人間を多少知れたエリヴェラは、寧ろイシュドは神の存在を信じないタイプの人間ではあるが、それでも確かな優しさを持ってる人間だと、エリヴェラは思っていた。

だからこそ、「神? そんなのいないんじゃねぇの」と答えられたとしても、怒りは湧かない。
ただ……質問した場所が本当に良くなかった。

それこそ、先程昼食を食べていた店の個室内であれば、そういった回答をイシュドがしても、回答を聞いているのはガルフたち、エリヴェラたちだけである。
しかし……先程エリヴェラが尋ねてしまった場所は、大通りも大通り。

周囲には多くの通行人達がいる。

神なんていない……そう口にした場合、多くの者に睨まれるのは必至。
いきなり斬り掛かってくる者はいないが……過激な思想を、狂信者であれば、イシュドに襲い掛かったかもしれない。
非常に危険な状態であるが……イシュドの場合は、返り討ちにして終わっていただろう。
多くの者が鋭い視線を向けたとしても、イシュドが本気の圧を振りまけば、全員明後日の方向を向くしかない。

(スキル、レベルなどの存在に関しては、神が関わっている……イシュドらしい答え、って感じですね)

ステラもエリヴェラと同じく、イシュドは神の存在を信じていないだろうと思っていた。

理由は……諸々とある。
貴族の世界で生きているからこそ、この世界は綺麗事だけで生きてはいけないと解る。

個人的に、これまで表舞台に出てこなかったイシュドも、別の視点からそういった考えを持っているタイプだと思っていた。

しかし、イシュドは神はいると答えた。
答えた時の表情には、自分たちに気を遣っての嘘は全くなく、本心から神はいると答えたのが解った。

途中……何か嘘を付いた、もしくは隠したのかと思いはしたが、そこに関しては深くツッコまなかった。

(あぁ~~~~~、良かった……本当に良かった~~~~~~。あそこでイシュド君が神はいるって答えてくれてなかったら……クビになってたかも)

エリヴェラと同じく、もう一人心の底からホッとしていた男……クルト。

今回の一見、仮にイシュドが「神~~~? んなの、何かに縋りたい人間が考え出した偶像、もしくは変なク○リを決めちゃった奴が見た幻覚だろ」といった感じの考えを口にしてれば、普通に問題となっていた。

誰が原因かといえば、大勢の通行人がいる場所でその質問をしてしまったエリヴェラが原因だが、この場にはアンジェーロ学園側の監督者であるクルトがいる。

そのため、監督責任でクルトの首が飛ばされてても……本当におかしくなかった。
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