転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
297 / 481

第297話 俺の物だし

しおりを挟む
エリクサー。

それは回復薬の中でも最上級のアイテムであり、人によっては神の雫と表現する者もいる。
手に入れようとも容易に手に入るアイテムではなく、大金を有していても、それだけで手に入れられるアイテムではない。

加えて、基本的にポーションなどは錬金術で造ることが出来るものの、エリクサーに関しては殆どの者が造れない。

一応…………レシピ自体は存在するものの、一部の超優秀な錬金術師たちしか知らない。
ただ、そんな超優秀な錬金術師たちであっても、大なり小なり失敗したらという恐怖はある。
他の錬金術師たちと比べてそこら辺のブレーキがぶっ壊れている者たちなのだが、それでもエリクサーを造るのに必要な素材は非常に貴重で高価であり、絶対に成功する保証がないエリクサーの制作に使用するのであれば、他のアイテムを造るのに使った方が良いと考える者の方が多い。

そんな神の雫と言い表せられるアイテムを、殺し合える戦いをするためだけに使用した。
この発言には、普段からダラッとしている教師、クルトでさえも驚愕の表情を抑えきれなかった。

「おいおい、お前ら面白い顔し過ぎだっての。なぁ、フィリップ」

「面白過ぎる顔っていうことには同意だけど、割とエリヴェラたちの反応が妥当だと思うぜ」

「フィリップの言う通りですわ。全く……そういうところに関しては、しっかりと
常識が欠けていますわよね」

フィリップやミシェラの言う通り、まず……特に両者の因縁や深い思いなどなく、ただ死という結果ありの戦いをしたいという理由だけでエリクサーを使ってしまうのは、非常に非常識である。

「なっはっは!!! まっ、そんな事より飯が届いたんだ。昼飯にしようぜ」

テーブルや椅子などに関しては、既にクルトがアイテムバッグから取り出した物があり、用意されていた食事が次々に並べられていく。

「ん~~~、良いね。悪くないじゃん」

アンジェーロ学園の学食で作られている料理に対し、イシュドは特に不満を感じることはなく、悪くないと思いながら次々に食べていく。

がっつり汗をかくほど動いてはいなかったが、毎回模擬戦を行っていたこともあり、それに腹が減っていた。

「「「「「「「…………」」」」」」」

その間、エリヴェラたちもお腹は空いているため、とりあえず食事の手は動いていた。
ただ、先程聞いた内容があまりにも衝撃的過ぎて、感情を整理し切れていなかった。

「えっと……イシュドは、どのようにして、エリクサーを、手に入れたのですか?」

ようやく口が開いたステラは、ひとまずどの様な手段でエリクサーを手に入れたのか尋ねた。

「オークションで手に入れたんだよ」

「な、なるほど…………」

いったい、どれほどの金額を使用したのか。
それを尋ねようとするも、ぐっと飲み込んでしまった。

おそらく、尋ねれば答えてくれる。
それは解っていても……ステラは、なんとなく怖いと感じてしまった。

どれほどの金額を使い、競り落としたのかを聞けば、卒倒してしまうかもしれない。
そんなステラの胸の内を知っても、この場に笑う者は一人もいなかった。

「……では、どうして……何故、その……シドウ先生との戦いで、使おうと思えたのですか」

エリクサーという回復薬、マジックアイテムがどれだけ貴重な存在なのか、解らない男ではないと思っている。

だが、あまりにもあっさりと使ってしまったと……そこまで重要ではないと思える場面で、考え方で使ってしまったいう思いから、当時のイシュドの思考が気になった。

「ん~~~? どうしてっつわれてもな~~~~~。俺にとっちゃあ、やっぱマジの大和出身の侍ってのは憧れの存在だったし、一度でいいから俺も刀を使って、本気で殺り合いたいって思ってたんだよ」

イシュドのべた褒めに、大和出身である侍のシドウとイブキは思わず頬が緩む。

「……イシュドの実家にある、特別な部屋で行うという、選択肢はなかったの?」

「いや、シドウ先生とイブキが留学してきた時は、まだ夏休み前だったんだよ。それに、夏休みの間は学生たちは休みでも、先生たちは仕事があるだろ」

さすがに授業を休み、実家に戻るのはあまりよろしくない。
イシュドが二日や三日良くても、臨時教師として赴任してきたシドウ的には全くもってよろしくない。

「な、なるほど……いや、しかし」

一応理屈は通る内容ではあるが、それでもステラたちが納得するには程遠い。

「つか、ぶっちゃけエリクサーなんて回復薬、どうせ勿体ない勿体ないって使わない日々が続いて、埃被っちゃうんだから使える時に使っちゃわないと勿体ないだろ」

「それは……確かに……」

「武器と同じだと思うぜ? だから、俺は使うべきタイミングで使ったんだよ」

ステラたちも、一応…………一応、イシュドが言いたい事を理解出来てきた。
とはいえ、それでも彼らが有する常識から、その言い分を……考え方を飲み込むことは難しかった。

「それに、エリクサーなんざ量産できない回復薬なんだぜ? 別に正解中の怪我人の怪我を治せるほど万能な薬じゃねぇんだ。だから、別にそんな焦るっつーか、驚き過ぎる必要はねぇんじゃねぇの?」

「ッ!!!! ……そう、ですね。どうやら、あまりよろしくない考え方に偏ってしまっていました」

イシュドの言う通り、世界に一滴たらすだけで、周囲十キロ以内の怪我人たちの怪我……病人の病気を治療するような効果は有していない。

それもあって、そんな存在を重要視するのは冒険者や権力者たちのみ。

「目が覚めました。ありがとう、イシュド」

「? そりゃなによりだ。けど、本音に関しちゃあ、エリクサーをゲットしたのは俺なんだから、他の人間たちが俺の遣い方にとやかく悩んでも意味ねぇだろって感じだけどな」

大前提として、本当に……本当にその通りである。
加えて、イシュドは薬と毒は表裏一体の性質を利用してヤバい実験を行おうとしてた訳ではなく、本来の使い方……傷を癒すという使い方をしたのみ。

決して、何も悪い事はしていなかった。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ
ファンタジー
魔王の息子に転生したら、生後三ヶ月で魔王が討伐される。 魔領の山で、幼くして他の魔族から隠れ住む生活。 逃亡の果て、気が付けば魔王の息子のはずなのに、辺境で豆スープをすする極貧の暮らし。 魔族や人間の陰謀に巻き込まれつつ、 いつも美味しいところを持って行くのはジイイ、ババア。 いつか強くなって無双できる日が来るんだろうか? 1章 辺境極貧生活編 2章 都会発明探偵編 3章 魔術師冒険者編 4章 似非魔法剣士編 5章 内政全知賢者編 6章 無双暗黒魔王編 7章 時操新代魔王編 終章 無双者一般人編 サブタイを駄洒落にしつつ、全261話まで突き進みます。 --------- 《異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた》 http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/952068299/ 同じ世界の別の場所での話になります。 オキス君が生まれる少し前から始まります。

異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです

青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。 混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。 もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。 「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」 思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。 その時、見知らぬ声が響く。 「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」 これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語

最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。 シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。 十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。 だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。 彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。 シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。 『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』 シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。 これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。

男装して過ごしてたら、学園内でも札付きの悪で有名な男子に顔面殴られて、更に女だとバレて責任取るって土下座された話

一樹
ファンタジー
タイトル=あらすじ、です。 つまりはそういう内容です。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】

一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。 その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。 それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。

ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者

マーラッシュ
ファンタジー
国庫の一割を独断で使い、帝国から追放!?  日本から異世界転生したユクトは皇族の暮らしに飽き飽きしていた。  公務に帝王学の勉強で自由はほぼなく、皇太子である自分の顔色を伺う大人達、皇城内では競争相手を蹴落とそうと常に謀略が蔓延っている。  こんな生活はもう嫌だ! せっかく異世界ファンタジーに転生したのだから、もっと自由に行きたい!  それに俺は特別な【固有スキル】を持ってるからな。  どうにかこの生活から抜け出そうと考えた時、あることが思いついた。 「狙って追放されるか⋯⋯」  言葉にしたらもう衝動を止めることは出来なかった。  ユクトはすぐに行動に移し、皇太子の地位を剥奪されるのであった。  これは異世界転生した元皇子が、最弱と言われたギルドマスターになったけど実は最強で、弱き者に代わって悪に裁きを下す物語です。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

処理中です...