チートはズルくて卑怯? バカ野郎、だから使うのが楽しいんだろう!!! ゲームのやり過ぎで死んだ大学生のセカンドライフ

Gai

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第65話 俺を見ろ!!!

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目の前の敵が消えた……そうなると、コボルトジェネラルの経験上、敵は背後から自分の命を狙って来る。

最後の力を振り絞った。
それでも、大剣を振り回すぐらいの力なら残っている。

敵の位置に関しては……スキルが使えずとも、意識すれば優れた嗅覚が教えてくれる。
その感覚に頼り、大剣を振りぬこうとするジェネラル。

「もう終わりだ」

ここまで弱れば、ユウゴのサイキックを突破することは不可能。

「ギっ!?」

自分の体が動かない。後ろを振り向けない現状に困惑しながらも……自身の首が斬られている……それを理解。
もうここから逆転するのは不可能だと悟り、コボルトジェネラルはそっと目を閉じた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……はぁ~~~。危なかった~……いや、本当に強かった」

結果的にほぼ無傷の状態で勝利することが出来た。
その結果はかなりの快挙なのだが……今のユウゴにそこを喜ぶ余裕はなかった。

そもそもユウゴは最後、疾風に風の魔力を思いっきり纏わせてスパッと首を斬ろうとしたのだが、完全に切断することは出来なかった。

「ほんと、チートスキルがなかったら勝てなかったよ……あっ!! そういえば……って、心配する必要なんてなかったか。というか、俺と違って本当に綺麗に斬るな。まっ、当たり前と言えば当たり前か」

思い出したようにコボルトマーサーと戦っているウルの方に顔を向けると、そこには双剣から刀に武器を切り替え、コボルトマーサーの首を完璧に斬り落としたウルがいた。


遡ること数分前、コボルトマーサーと何度か刃を合わせたウルは、ある程度緊張感を持ち始めた。

(おそらく、レベルは私の方が上。ただ、身体能力に関しては全く油断出来ない。なにより……ユウゴと戦っているジェネラルと比べて、戦い方が上手い)

チラッと隣の戦いを見たウルはユウゴが上手く戦えているのを見て「流石ユウゴだと」賞賛を送っていた。

「足癖が悪いな」

地面を蹴り、砂を顔面にぶつけて目潰し行ったマーサーだが、ウルはそれをあっさりと回避。

種族的にジェネラルは戦闘よりも統率に優れているので、マーサーの戦闘技術はジェネラルと比べて数段上。

仮にユウゴがチートスキル全開で戦ったとしても、ある程度学習されて手痛い反撃を食らう可能性が高い。

「グルゥラアアアッ!!!!」

突然声を荒げ、柄を握る力が強まり……斬撃の速度が上がった。
その一撃を風葬で受け止め、ウルはマーサーの想いを汲み取る。

「すまなかったな」

戦いの最中に、よそ見をした。
となりの戦いに意識が向いていた。

ウルとの戦いを楽しみだと思っているマーサーにとって、その行為は神経を逆撫でられたのと同じ。

しかしマーサーも戦闘のプロ。
その怒りを直ぐに飲み込み、冷静さを取り戻した。

それからはユウゴとジェネラルの戦いよりも苛烈な高速戦闘が行われた。

手数は双剣を使うウルの方が多い。
ただ、マーサーは平気な顔で高速戦闘をしながら毒魔法を使ってくる。

(毒か……中々いやらしいじゃないか)

そんなことを心の中で呟きながらも、決して毒を使う相手に拒否感などない。
ただ、やはり厄介だという気持ちが大きい。

ウルも属性魔法のスキルは持っており、高速で動きながら魔法陣を展開することは可能。
毒魔法による攻撃もそれで相殺できそうだが、コボルトマーサーとの戦いであまり得意ではない事をしようとすると、命取りになりそうだと感じた。

(接近戦での攻撃魔法を使った戦闘なら、ユウゴの方が上手い……これからの課題だな)

得意ではないが、放置して良い理由はならない。
なんてことを考えながらも、コボルトマーサーの攻撃を丁寧に捌き、要所要所できっちりダメージを与えていく。

コボルトマーサーのスピードも中々の者だが、身に着けている装備……元々の身体能力の差もあり、ウルの方が一手二手早い。

毒の攻撃魔法を放たれても、風刃で吹き飛ばし……マーサーのロングソードも圧されずに防ぐ。
ただ、バトル中盤からマーサーは闘気を使い始めた。

戦闘者の中には、闘気を習得したらようやく一人前と考えている者もいる。
当然、昇格試験の試験監督だったバルトや、同じくBランクのウルも習得している。

(ほほぅ……闘気の扱いも上手いな)

ウルの刃が、風刃が体に届きそうになる度に、その部分に闘気を集中させてガード。
高速戦闘の中で行う瞬間的なガードなので、完全に防ぐことは難しいが、確実にダメージは減らせる。

そして剣技の間に飛んでくる拳や蹴りにも闘気が纏われており、素人の攻撃ではない。

(流石傭兵。なんでも出来るという訳か)

剣技に魔法、そして体技。
加えて、闘気の操作まで行う。

ウルと同じBランクの冒険者であっても、このコボルトマーサーと渡り合い……勝利するのはかなり難易度が高い。

ただ……今対峙しているウルは、先程マーサーが浮かべた笑みと同じ顔をしていた。

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