チートはズルくて卑怯? バカ野郎、だから使うのが楽しいんだろう!!! ゲームのやり過ぎで死んだ大学生のセカンドライフ

Gai

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第66話 敬意を表して

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今回の討伐に関して……特にギルドの依頼を受けたものではない。
武器や防具の素材として欲しいと思い、狩ろうとしたわけでもない。

ただ……二人にとって丁度良い相手だった。

故に、ウルはコボルトマーサーとの戦いを楽しんでいた。
徐々に徐々に戦闘スピードを上げていき、どこまでマーサーが付いて来れるのかを楽しむ。

コボルトマーサーの体には少しずつ斬り傷が増えていくが、それでも戦闘速度が落ちることはない。
それどこか傷の痛みなど一切感じず、健気にスピードを上げていくウルに付いて行こうとする。

(これは、珍しく良い敵に巡り合えたな!!!)

戦闘時間にすればユウゴと同じく数分程度の短さだが、その短さで斬り結んだ数は優に千を越えていた。

高速戦闘の中でマーサーはロングソードを振るうことだけに集中するのではなく、戦闘開始当初と変わらず毒魔法や体技なども同時に繰り出し……その精度は更に成長。

さすがにここまでくると、チートスキルを多数搭載しているユウゴでも勝機は限りなく小さくなる。

それはウルも理解しており、自分がマーサーの相手をしておいて良かったと思った。
もっとも……ユウゴが全力でチートスキルをフル活用すれば、マーサーが成長する前に倒し切れた可能性もゼロではない。

「……敬意を表そう」

マーサーの強さ、成長、覇気に対して感想を口から漏らし、ウルは瞬時に双剣を収め……愛刀、雷光を取り出した。

「故に、次の一刀で終わりだ」

「…………」

敵が何を口にしたのか、詳しくは分からない。
だが、お互いに次の一撃で終わる。

なにより……敵の集中力が先程よりも上がっていることに気付き、マーサーは再度覚悟を決めた。

そして最後の力を振り絞り、ロングソードに猛毒を纏い、魔力も闘気も全てを使い果たすつもりで斬りかかった。

「居合・一閃」

刀技、居合・一閃。

刀を収めた状態から放つ超速の一振り。

その一刀はマーサーが全力で振り下ろしたロングソードを猛毒ごと斬り裂き……そのまま首をも斬り捨てた。

「良き戦いだったぞ、コボルトマーサー」

膝から倒れ落ちた強敵に賞賛を送り……ウルは勝利を、生をつかみ取った。

「……そういえば、完全に忘れていた……ふふ、当然の結果か」

完全にコボルトマーサーと死合に集中し、すっかりユウゴとコボルトジェネラルの戦いを忘れていたウルは、慌ててそちらの方向に顔を向けたが……そこには同じく強敵を倒し、こちらを向いているユウゴの姿があった。

「お疲れ様です、ウルさん」

「ユウゴこそ、お疲れ様。じっくり戦っているところは見れなかったが、無事に倒せたみたいだな」

「は、ははは。一応勝ちはしましたけど、結構ギリギリでしたよ」

最後、コボルトジェネラルが放った特大炎刃に関して、吸収を使ってなんとかダメージを食らわずに済みはしたが、一瞬で吸収できたわけではない。

四分の三を吸収するのに数秒ほど掛かり。コボルトジェネラルに余力が残っていれば、その時間を利用して大剣をぶち込まれていたかもしれない。

そうなれば、結果が逆だった可能性は十分にあった。

「そうかもしれないな。でも、勝ったのはユウゴ。どんな戦いも、生き残った者が勝者だ」

「それは確かな心理ですね。でも、俺は最後ウルさんみたいに綺麗にスパッと斬れませんでしたよ」

ウルはコボルトマーサーの首を愛刀である雷光を使い、刀技居合・一閃で綺麗に斬り落とした。

それに対し、ユウゴはなんとか半分ほど斬り裂き、致命傷を与え……出血多量という大ダメージを食らわせてなんとか勝てた。

「それは経験の差……加えて、武器の差だな。私のこの雷光……刀はそこら辺の武器と比べて断然、切れ味が高い」

「……ザ・業物って感じのオーラが出てますね」

日本人であるユウゴは当然、刀という武器に関して多少なりとも知識はある。
実際に触ったことはないが、扱いが難しそうというイメージが強い。

「そうだろう。自慢の一品だ」

嬉しそうに話すウルの表情に……ユウゴの心がまたやられた。

「まぁ、刀を使いこなすまでに何本を駄目にしてしまったがな」

「そ、そうなんですね……ちょっと意外です」

「そうか? これでもそんなに器用な方ではない。使いこなせるまでには時間が掛かる方さ」

美しい謙虚さ……と感じる者もいるだろうが、ウルが刀を使いこなせるようなるまでの期間を知っている者であれば、謙虚過ぎると答える。

「さて……随分と暴れたな」

「そうですね……」

ウルとコボルトマーサーとの戦いでもそれなりに周囲はあれだが、結果的にユウゴとコボルトジェネラルの戦いの方が周囲を荒らした。

戦いの影響で、コボルトの死体がいくつか駄目になっていた。

「と、とりあえず時間はあるんで、解体しますか?」

「うむ、そうだな」

いくつか死体が駄目になったとはいえ、四十以上の死体がある。
ギルドに持っていけば、ギルド専属の解体士が解体してくれるが……これも経験ということで、二人は日が暮れそうになる時間までコボルトの死体を解体し続けた。

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