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少年期[408] 失ったからこそ
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振り下ろされる大斧を躱し、勢いが止まる瞬間を狙って巻き上げを使う。
連撃の連続で搦め手が来ると思っていなかったディリアの両手から大斧がすっぽ抜ける。
自身の得物を手放してしまう。
その行為が冒険者に取ってどれだけ不利な状態になるのか、周囲の冒険者達は理解している。
それはディリアも同じく、自身の手から重さが完全に無くなった瞬間に思考が止まってしまった。
攻撃の嵐が止まらないこの状況にそんな状態に陥ってはいけない、常に思考を途切らせてはいけない。
そんな事は百も承知。
だからこそ、ディリアは咄嗟の行動に出れた。
得物を手放し、ほんの一瞬ではあるが自分にとっては完全な隙が見えたフーラはそのタイミングを見逃さずに渾身の突きを放つ。
狙いは中心線。
完全に決まった。この戦いの中で最高に最強の一撃を出せた。
それはフーラの中で確信に近いものだった。
しかしディリアの得物を、相棒を失ったからこそ咄嗟に取った体の前に腕をクロスさせ、魔力を纏ってガードする。
相手が武器を失った自分の隙を見逃すはずが無い。
そんな今までの経験により得た予測が功を為し、ディリアはフーラの渾身の一突きに後方へ押されながらもなんとか倒れずに堪えることに成功。
会心の一突きに耐えたディリアの姿に観戦していた冒険者達のテンションは更に上がる、汗を流して汗臭くなろうが知ったことでは無くテンションを、声量を上げる。
ここで先程までとは状況が真逆になる。
何かされた訳では無い。いや、正確には攻撃を防がれたのだがフーラに害は無い。
冒険者達の騒ぎ方で嫌でも思い知る。まだ勝負は終わっていない。動かなければ。
なのに、絶対に勝てると思ったイメージが崩れた事に心が動揺している。
なんで今の一撃で決まらなかった、終わらなかったんだと。
「戦いの最中に放心とは、随分と嘗められたもんだね」
腕に魔力を纏っていたとはいえ、流石に無事では無かった。
だがそれでも動きはする。
「ハァアアアァァアアアアアッーーーーー!!!!!」
ディリアは同じクランの仲間が貴族の代理決闘人として戦った話を実際に見に行った同僚から聞いた。
シーナの戦いぶりは勿論凄かった。それは仲間の話を聞いているだけでも伝わって来た。
それを聞いて自分も先輩として負けられないと思った。
だが更に鼓舞されたのはシーナの対戦相手であったゼルートの戦いぶりだった。
戦いの序盤は長剣を使っており、その腕は決して低くは無い。
リーダーであるライオットの話を聞く限り、戦いの最中に長剣をフルで使っているように思えなかった。
そこに疑問と驚きが残るが、長剣をシーナの巻き上げによって飛ばされたにも拘わらず体術で圧倒した事に大して驚き、それと同時に同じ冒険者としてゼルートを尊敬した。
(あの歳でシーナを体術で圧倒するなんて容易な努力では不可能。にも関わらずそれを実行した。長剣と体術、それに貴族の子息なんだから魔法も使える筈。それがメインの武器なのかは解らない。でも・・・・・・どれも中途半端だとは思えない、寧ろ完成されているとすら思える)
その戦いを見に行かなかった事に後悔するも、少し前に勝手に決めた体術の限界をぶち破ろうと決める。
(最後の一撃、借りとくよッ!!!!!)
「崩拳ッ――ー――!!!!!」
「ガッ!!!???」
先程のフーラと同じく試合中に最高で最強の一撃、では無い。
それでも、真面に喰らえばただでは済まない一撃であったのは確か。
崩拳をモロに受けたフーラは地面を何度もバウンドして吹っ飛び、完全に地面に落ちても起き上がることは出来ず、地面を転がる。
そしてフーラの前にディリアが立ち、巻き上げによって吹き飛ばされた大斧が収まる右手を振り上げて止める。
「そこまでだ!!!! 勝者、強獣の精鋭のディリア!!!!」
連撃の連続で搦め手が来ると思っていなかったディリアの両手から大斧がすっぽ抜ける。
自身の得物を手放してしまう。
その行為が冒険者に取ってどれだけ不利な状態になるのか、周囲の冒険者達は理解している。
それはディリアも同じく、自身の手から重さが完全に無くなった瞬間に思考が止まってしまった。
攻撃の嵐が止まらないこの状況にそんな状態に陥ってはいけない、常に思考を途切らせてはいけない。
そんな事は百も承知。
だからこそ、ディリアは咄嗟の行動に出れた。
得物を手放し、ほんの一瞬ではあるが自分にとっては完全な隙が見えたフーラはそのタイミングを見逃さずに渾身の突きを放つ。
狙いは中心線。
完全に決まった。この戦いの中で最高に最強の一撃を出せた。
それはフーラの中で確信に近いものだった。
しかしディリアの得物を、相棒を失ったからこそ咄嗟に取った体の前に腕をクロスさせ、魔力を纏ってガードする。
相手が武器を失った自分の隙を見逃すはずが無い。
そんな今までの経験により得た予測が功を為し、ディリアはフーラの渾身の一突きに後方へ押されながらもなんとか倒れずに堪えることに成功。
会心の一突きに耐えたディリアの姿に観戦していた冒険者達のテンションは更に上がる、汗を流して汗臭くなろうが知ったことでは無くテンションを、声量を上げる。
ここで先程までとは状況が真逆になる。
何かされた訳では無い。いや、正確には攻撃を防がれたのだがフーラに害は無い。
冒険者達の騒ぎ方で嫌でも思い知る。まだ勝負は終わっていない。動かなければ。
なのに、絶対に勝てると思ったイメージが崩れた事に心が動揺している。
なんで今の一撃で決まらなかった、終わらなかったんだと。
「戦いの最中に放心とは、随分と嘗められたもんだね」
腕に魔力を纏っていたとはいえ、流石に無事では無かった。
だがそれでも動きはする。
「ハァアアアァァアアアアアッーーーーー!!!!!」
ディリアは同じクランの仲間が貴族の代理決闘人として戦った話を実際に見に行った同僚から聞いた。
シーナの戦いぶりは勿論凄かった。それは仲間の話を聞いているだけでも伝わって来た。
それを聞いて自分も先輩として負けられないと思った。
だが更に鼓舞されたのはシーナの対戦相手であったゼルートの戦いぶりだった。
戦いの序盤は長剣を使っており、その腕は決して低くは無い。
リーダーであるライオットの話を聞く限り、戦いの最中に長剣をフルで使っているように思えなかった。
そこに疑問と驚きが残るが、長剣をシーナの巻き上げによって飛ばされたにも拘わらず体術で圧倒した事に大して驚き、それと同時に同じ冒険者としてゼルートを尊敬した。
(あの歳でシーナを体術で圧倒するなんて容易な努力では不可能。にも関わらずそれを実行した。長剣と体術、それに貴族の子息なんだから魔法も使える筈。それがメインの武器なのかは解らない。でも・・・・・・どれも中途半端だとは思えない、寧ろ完成されているとすら思える)
その戦いを見に行かなかった事に後悔するも、少し前に勝手に決めた体術の限界をぶち破ろうと決める。
(最後の一撃、借りとくよッ!!!!!)
「崩拳ッ――ー――!!!!!」
「ガッ!!!???」
先程のフーラと同じく試合中に最高で最強の一撃、では無い。
それでも、真面に喰らえばただでは済まない一撃であったのは確か。
崩拳をモロに受けたフーラは地面を何度もバウンドして吹っ飛び、完全に地面に落ちても起き上がることは出来ず、地面を転がる。
そしてフーラの前にディリアが立ち、巻き上げによって吹き飛ばされた大斧が収まる右手を振り上げて止める。
「そこまでだ!!!! 勝者、強獣の精鋭のディリア!!!!」
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