冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai

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1巻

1-1





 序章 神様とご対面



 目の前に広がる白い世界。ここはどこなのか、なぜこんな場所にいるのか。その場に一人たたずむ少年の頭には、疑問があふれかえっていた。

「それは、わしが答えよう」

 少年の目の前に、威厳のある老人が現れた。
 老人の背中には、翼が生えていた。
 そんな老人の姿を見て、少年に一つの予想が生まれる。

「あんた、神様ってやつか?」
「ほう、いきなりわしのことを言い当てるとは……お主なかなかやるではないか」
「いや、最近こんな感じの流れで始まるライトノベルを読んでいるんだ」

 少年が近頃ハマっているライトノベルの冒頭は、真っ白の世界で目を覚ますことが多い。
 だから、少年にとって目の前の現状は、すぐに理解できるものだった。

「ほうほう、そうかそうか。やはり人間は面白いものを作るのう」

 神様は一人勝手にうんうんとうなずく。少年はなんとなく事情を察しているものの、それでも彼に現在どうなっているのか説明してほしかった。
 その思いが顔に出ていたのか、神様は唐突に我に返る。

「ぬ、すまんすまん。お主には、今の状況を説明しなければならなかったのう。まあ簡単に言うと……」

 と、なぜかここで言葉をめる。簡単に言うとなんなのか。早くしてくれと、少年は心の中で急かす。

「死んでしまったんじゃよ、お主は」

 やっぱりそうなのか、と少年は思った。
 なぜ死んでしまったのかは、今までの生活にそこまで未練がない少年にとって、どうでもよかった。
 だから、すぐに気持ちを切り替えることができた。

「それで、俺はこれからどうなるんだ? このままあの世行きになるのか?」
「まあまあ待て、落ち着け。そう急かすでないわ。まず、お主には二つの選択肢がある」
「……その選択肢とは?」
「お主が先程言った通り、このままあの世に行って永遠の眠りにつくか、それともお主の生きていた世界とは違う世界で、新たな人生を送るか。お主がいた世界でいう転生というやつじゃな」

 まさに予想していた展開。少年の胸は高鳴った。
 だが、まず確認しておきたいことがある。

「質問が三つある。なんで俺は転生できるんだ? そして、俺が転生する世界はどんな世界なんだ? 最後に、その世界には俺以外にも転生者がいるのか?」

 一番目と二番目はそこまで大切ではない。しかし、三番目は、少年にとってとても重要だった。転生できること自体は嬉しいが、転生した世界が原始時代や魔法などがないただの中世のヨーロッパみたいなところだったら、このままあの世に行く方がいいように思える。

「まあ、当然の質問じゃな。一番目の質問に関しては、転生のシステムルールだからと言うべきじゃろう。その世界の死者が十億人出るごとに、十億人目の死者を転生者に選ぶのじゃ。お主がちょうどそれでな」

 そう聞くと、少年は自分がすごく幸運なのだと分かった。

「それで、二つ目の質問については安心してよいぞ。お主が行くのはファンタジーな世界だからのう。お主が存分に楽しく冒険できる世界じゃ。ちょっと厄介事やっかいごとがあるかもしれんがな」

 少年は最後の部分は聞かなかったことにし、前半の部分だけを頭に入れた。

(ファンタジーな世界、かあ……一口にファンタジーって言っても多くの世界があるけど、やっぱり面白そうだな)

 少年が心をおどらせていると、神様は三つ目の質問に答える。

「そして三つ目の質問じゃが、それも安心してもらってかまわん。一つの世界に転生者は一人だけじゃ」

 神様の答えを聞いて、少年はホッとする。
 自分以外にも転生者がいたら、楽しみが半減すると思ったからだ。

「聞きたいことはもうないかの?」
「ああ、もう十分だ。俺を異世界に転生させてくれ」
「そうか、それではお主を転生させるとしよう。おっと、忘れるところじゃった。これから新しい人生を送るお主に、二つほどプレゼントをしよう」

 神様からのプレゼントとなると、とても高級そうに感じられる。
 一体どんなプレゼントなのか……少年はその答えがすぐにでも知りたかった。

「その二つはどんなプレゼントなんだ?」

 少年が質問したら、神様はニヤリと楽しそうに笑った。

「それは、転生してからのお楽しみというものじゃろ」
「……それもそうだな。それじゃ、頼むよ」
「うむ、二度目の人生じゃ。後悔せぬようにな。では、そなたによき未来があらんことを」

 神様がそう言うと、目の前が光に覆われ、少年の意識が沈みはじめた。

(そうだな、この二度目の人生……後悔しないように楽しく生きよう)







 第一章 こんにちは異世界



 光を浴びてからどれくらい経ったのか。少年は意識を取り戻したが、目を閉じていることもあり、周囲の状況が分からなかった。
 しかし徐々に目を開けていくと、視界から情報が入ってくる。

「お、目を開けたぞ、レミア! いや~~~、これは、将来俺に似て、いい男になりそうだな」
「ええ、そうね。確かにガレンみたいな男前になりそうね。でも、女たらしなところは似ないでほしいわ」
「う、それはその…………すまん」
「ふふ、冗談だから、そう落ち込まないで」

 転生したということは、最初に目に映る二人の男女は両親なのではと少年は思っていたが、どうやらそれで当たっているらしい。
 父親らしき人物は、イケメン、というよりはナイスガイな見た目をしている。
 そして母親らしき人物の方は、転生前の日本で出会ったら、高校生だと思ってしまうほどに若く、綺麗きれいな容姿をしていた。


「う~ん、将来は騎士の道か……いや、長男のクライレットがいるんだ。俺たちのように、冒険者もありだな。そうなると、十二歳になったら冒険者の学校に入学させた方がいいな」

 まだ生まれたばかりだというのに、十二年も先のことを考えるのが、この世界の常識なのか……と、少年は驚くが、それは勘違いである。彼の父親が考えすぎているだけだった。

「あなた、気が早すぎるわよ。どんな道を進むのかは、ゼルートの意志次第よ」

 少年の新しい名前は『ゼルート』だった。
 その名に少年は……いや、ゼルートは、そこそこ満足していた。

(ゼルートか。父親は金髪で母親は赤髪と、どう見ても日本人ではないし、服装からしてもここは西洋風の異世界みたいだから、横文字は当たり前だろうし、なかなかカッコいい名前で安心した)

 前世の記憶があるから少し中二病くさく感じるが、この世界ではこういった名前が普通にちがいない。そう思えば、ゼルートもそこまで恥ずかしさを感じない。

(にしても、俺の父さんはなかなかに子煩悩こぼんのうみたいだな。あと、二人とも冒険者だったのか。前世よりも、才能に血筋が大きく関係する世界なら、俺には強くなれる可能性があるかもしれない)

 ゼルートが転生した世界には、魔物という人々を襲う凶悪な生き物がいる。
 そんな魔物を倒すのが、騎士や冒険者だ。

(騎士は……なんか堅物が多そうなイメージだから遠慮したいな。目指すは冒険者かな……うん、まだ赤ちゃんだからか、また眠くなってきた)

 襲ってきた眠気に身を任せ、ゼルートは眠りについた。


         ◇


 ゼルートが、この世界に転生してから一年が経った。
 たった一年、されど一年。意識はしっかりとあるが、ほとんど自分では何もできないという、ゼルートにとってなかなか退屈な一年であった。
 だが、そんな中で、ゼルートは自分が置かれている環境を大体把握はあくした。
 ゼルートの父親であるガレン・ゲインルートは元冒険者であり、しかもそこそこ有名な存在であった。
 その中で残した功績により、国から男爵位と領地をもらい、貴族の仲間入りをする。
 まだゼルートには、それがどれほどすごいことなのか分かっていないが、それでもそう簡単にはなれるものではないのは、なんとなくだが理解した。
 そして、ゼルートには兄と姉がいる。
 兄はクライレット、姉はレイリアという。
 何度かゼルートの部屋に来て、相手をしてくれた。
 ただ、相手をしてくれたといっても、差は一、二歳差なので、一緒にじゃれていると表現した方が正しい。
 そんな、自分ではほとんど何もできないゼルートのマイブームは、母親のレミアかメイドのローリアに魔法関連の本を読んでもらうことだった。
 ちなみにローリアは犬の獣人である。彼女を初めて見たとき、ゼルートは自分でも驚くほど、激しく興奮したことを今でもはっきり覚えている。
 興奮しすぎてつい欲望丸出しの心の声が口から漏れてしまった。だが、赤ちゃんで声帯が発達していなかったので、何を言ったのかローリアは聞き取れなかったらしく、首をかしげて、どうしたらいいか困っていた。
 本による知識のおかげで、この世界の魔法がどういったものなのかも大体理解できた。
 基本は、詠唱をおこなってから魔法の名前を言えば、魔法が発動する。
 もちろん、無詠唱というのもあるらしい。
 ただ、魔法は誰でも扱えるわけではない。才能が必要だ。
 ゼルートの場合は、両親のレミアとガレン、どちらも魔法を使えるので、自分も使えると期待していた。
 実際、魔法や魔力という単語を聞いてから、自分の力でどうにか体内にある魔力を感じ取れたので、体の外に出そうとしたら、思いのほか簡単にできてしまった。
 以降、ゼルートは毎日寝る前に、体の中にある魔力を全て外に出してから寝ることにした。
 体内の魔力がからにしてから寝ると、高い負荷をかけた筋トレのように魔力総量が徐々に上がるのと、ぐっすり眠れることに気づいたからだ。
 まさに一石二鳥である。


         ◇


 今日は、母親のレミアが実際に魔法を見せてくれるというので、家の庭に来ている。
 赤ちゃんのゼルートが身振り手振りで、魔法を見てみたいと必死で訴えたたところ、熱意がなんとか通じたのである。

(やっぱ実際に見てみたいんだよ!!! 簡単な魔法の名前とかなら分かるけど、どんなのか具体的には分からないからさ)

 そんなわけで、父親ガレンは領主としての仕事が忙しいらしく、暇なレミアが魔法を見せてくれることになった。

「よ~~し、ゼルート。ママがあの岩に魔法を当てるから、しっかりと見ておくのよ」
(はい! もちろんです!!!)

 ゼルートは心の中で元気良く返事をする。
 そして、メイドのローリアに抱っこされながら、レミアをじっと見つめた。

「よし……我が手に集いし火球よ、敵を撃て……ファイヤーボール!!」

 レミアの手から直径二十センチくらいの火球が勢いよく飛び出し、前方にある岩にぶつかると、半分ほど溶かしてしまった。

(うん、やっぱりこう……なんというか心がおどるな!!! ……んん? ちょっと待てよ。ファイヤーボールで木を燃やすなら分かるけど、岩って普通燃えるものだっけ???)

 そんなゼルートの疑問に対して、心を読んだかのようにローリアが説明する。

「ゼルート様、奥様はものすごく強い魔法使いなのですよ。そこら辺の魔法使いが岩にファイヤーボールを放っても、あのように溶けたりはしないのです」

 一般的な魔法使いがファイヤーボールを使っても、木々を燃やすことはできるが、岩を溶かすことはできない。
 一般的な魔法使いにはできないことができるレミアの息子ということで、自分にも魔法の才能があるのでは、とゼルートの期待がさらに高まる。

「あうあうふお~い」

 と、まだ上手くしゃべれないが、ママすご~いとレミアに伝える。
 すると、ゼルートの言葉を理解したらしく、レミアはさらに気合いを入れて次の魔法を見せてくれようとする。

「ありがとうゼルート。そうよ、あなたのママはものすごいんだから。よ~し今度の魔法は……」

 だがそれは、ローリアの言葉によってさえぎられた。

「奥様、そろそろ夕食の時間になるので、お戻りになられては」
「え~~~、もうそんな時間なの、ローリア? もう少しぐらいいいじゃない」

 レミアは、ゼルートにもっと自分のすごいところを見せたいので駄々だだをこねたが、ローリアは許さなかった。

「駄目です。さあ、あまり遅いと旦那様が心配してしまいます。早く戻りましょう」

 もう少し魔法を見たいという気持ちがあるゼルートも、父親のことを考えて我慢する。

(それにしても、俺も早く剣や魔法を使って魔物を倒したりしてみたいな。でも…………うん、やっぱり無詠唱は早く覚えたいな。詠唱がかっこ悪いと思っているわけじゃないんだけど、やっぱり前世の感覚が残ってるからちょっと恥ずかしいしな)

 そんなことを思いながら、みんなで美味おいしい夕食が待っている家へと戻った。


         ◇


 さらに四年経ち、ゼルートは五歳になった。
 これまでの間に、強くなるためにゼルートが表立ってできることはほとんどなかった。いて言えば、本を読んだり、体を少し動かしたり、魔力の操作の訓練ぐらいだ。
 ただし、そんな中でも魔法に関しては着実に上達している。どの程度かは分からないが、ゼルートにも魔法の才能はあったのである。
 ゼルートは、両親や使用人たちにバレないように、こっそり練習していたのだ。
 すると、まだ初級魔法ばかりだが、基本属性の火、水、風、土、雷が使えるようになった。
 そして、無魔法というオリジナルの魔法を造っている。これは簡単に言うと、属性に頼らず、魔力そのものを使用する魔法である。普通はこんなことできないようなのだが、ゼルートにはなぜかできた。理由はいつか分かるだろうと、深く考えてはいない。
 おまけに、無詠唱も使えるようになった。しかし、全ての魔法に詠唱が必要でなくなったわけではなく、十分習熟したと思える魔法のみである。だから、いまだ扱いが難しいと感じている魔法は、引き続き詠唱が必要である。
 とはいえ、全てが順調というわけではない。
 火から雷までの基本属性以外の属性魔法も使えるようになろうと頑張がんばっているが、まだ習得できていない。魔法の才能があっても、そちらの方はそう簡単に習得できないらしい。
 また、ゼルートにもついに…………友達ができた!!!
 その喜びようは尋常じんじょうではなかった。人が見たら、きっと彼がおバカになってしまったと思ったことだろう。それほど嬉しかったのだ。
 ただ、それは彼の境遇を考えると、仕方ないことだった。まだ幼いので、家の庭ぐらいなら一人で遊んでいても大丈夫だが、領主の息子という立場ゆえ、屋敷の外に遊びに行くことは許されていなかった。街中まちなかを歩くときも、必ず誰かがついていたため、友達を作る機会などなかったのである。


 そんなある日、ゼルートは両親と執事のレントとともに王都に行くことになった。そこにある教会で神の『お告げ』を聞くためだ。
 この世界では、五歳になると教会で神のお告げを聞くことができる。お告げで分かるのは、自身のステータス、持っているスキル、才能、仕事や魔法の適性だった。
 一度お告げを聞いてしまえば、その後は自分でステータスを出せるようになる。
 そして、自分が『ギフト』を持っているかどうかも分かる。ギフトとは先天的に所有しているスキルのことで、通常のものよりも強力であったり、特殊である場合が多い。
 ただし、誰もが持っているわけではない。持たない者の方が多いとされている。
 ゼルートはお告げのことを知ったとき、絶対に自分にはギフトが二つあると確信していた。
 なぜなら転生の際、神様が二つプレゼントをくれると言っていたが、今までそれらしいことはなかったので、ギフトこそがプレゼントであると考えたからだ。

「さあゼル、これから王都の教会に行くわよ」
「分かったよ、母さん」

 玄関にいる母親に呼ばれたゼルートは、急いで彼女のもとへ向かう。
 そして、母親と手を繋いで、馬車へと乗り込む。
 前世を含めると、精神年齢は二十歳を超えており、ゼルートは親と手を繋ぐことを少し恥ずかしく感じるが、前世では母親に良い印象がなかったため、ちょっと嬉しいとも思っていた。

「ゼルはガレンと私の息子だから、きっとすごいスキルを持っているはずよ」
「うん! とっても楽しみだよ、母さん‼」

 これは、ゼルートの本音だった。
 前世でゲームや漫画、ラノベに出てくる特殊な能力にものすごあこがれていた。神様がくれたのがギフトなら、それはもうとんでもないもののはずだ。期待しないわけがない。
 そんな期待をつのらせるゼルートを乗せた馬車は、王都へと進んでいく。


 しかし……ゼルートは今、退屈で仕方がなかった。

(最初の方は景色を楽しめたりもしたんだが、それもきてきた。王都まで一週間かかるらしいけど、今日で四日目……せめて、ゲームのリバーシブルぐらい作っておけばよかったな。スマホや漫画なんて贅沢ぜいたくは言わないから、トランプぐらい欲しい……)
「ふふ、随分と退屈そう、ゼルート」

 レミアの言葉に、ゼルートは少しむくれた。

「仕方ないじゃん。外の景色はずっと一緒だし、何もすることがないからつまんないよ」

 レミアたちが近くにいるから、魔法の練習をすることもできない。
 すると、彼女が魅力的な提案をしてくれた。

「そうね……それじゃあ王都に着いたら、何かゼルートの欲しいものを買ってあげるわ」
「母さん、それ本当!?」

 レミアの言葉に、ゼルートはちょっとテンションが上がった。
 まだ五歳ということで、剣の練習そのものは最近始めさせてもらったものの、木剣しか使わせてもらっていない。
 だから、本物の剣が欲しいな~と最近思っていた。しかし、真剣が欲しいと話しても反対されるはずだと、言わないでいた。

「ええ、本当よ。でも、あんまり高いものはダメよ」
「うん、分かったよ、母さん」

 楽しみができたので、少しは退屈を我慢できるかもしれない。

(真剣がどれだけ高いのか分からないけど、業物わざものとかでなければ大丈夫なはずだ)

 ゼルートが王都に着いてからの楽しみを想像していると、馬を操っている執事のレントがガレンを呼ぶ。

「旦那様、大変です!」
「どうしたんだ、レント。魔物か!?」

 レントはすぐに状況を伝える。

「はい、ワーウルフが五体です!」

 レントの言葉を聞いたガレンは勢いよく馬車から飛び出し、迎撃に出る。

「よし、ゼルート、父さんの戦いぶりをしっかりと見てろよ!!!」
「はい!!!」

 ガレンのテンションがいつもより高いことに、ゼルートは気づいた。
 その理由は単純で、我が子に自身のカッコいい姿を見せたいからだった。
 レミアは、ガレンを若干じゃっかんあきれ顔で見ている。

「しっ!!!!」

 ガレンは長剣を右手に持ち、ワーウルフに向かって走り出す。
 陸上選手なんて比べものにならないほどの速さ。ゼルートはしみじみと、ここが異世界なのだと感じる。
 ガレンはまず向かってきた一匹のみつき攻撃をかわし、首と胴体をスパッと切断する。
 そして二匹が同時に飛びかかってくると、長剣を横に振りぬいた。
 直後、長剣から風の刃が飛び出し、二匹のワーウルフを横に真っ二つにしてしまう。
 残りの二匹はガレンにかなわないと思ったのか逃げようとした。だがガレンはそれを見逃さず、ゼルートが全く目で追えない速度で二匹を斬りつける。二匹の首が地面に落ち、続けて体もまた崩れ落ちた。

「父さん、すっごい!!!!」

 戦いを見ていたゼルートは、思わず大きな声を出してしまった。

(いや、本当にすごかった。これまで魔物との戦いを見たことがなかった俺にとっては、驚きと感動の戦いだった)

 最後のガレンの動きは、ゼルートからすればまさに風のようだった。
 そのガレンは、息子にめられたのがよほど嬉しいのか、強面こわもてイケメンフェイスを崩してニヤニヤしている。

「そうだろう、ゼルート! まあ、父さんの真の実力はワーウルフぐらいじゃ発揮できないけどな」

 ゼルートはそれはそうだろうなと思っている。ガレンが過去に、一流と言われている、Aランクの冒険者として活動していたのを知っていたからだ。

(魔物の図鑑に、ワーウルフは群れると強いが、単体だとそこまで強くないと書かれていた。だから、父さんの真の実力は、あの程度の魔物では見せられないのだろう。それにしても……本当にすごかった)


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