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少年期[575]とりあえず無視
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(今更だけど、本当に俺の鑑定眼って凄いんだな)
ゼルートがギフトして手に入れた鑑定眼Sは最上級の鑑定スキルであり、対象の能力や性能を見破れないということはあり得ない。
(赤鬼の怒気……ありゃ真の効果を発揮するには少々時間が掛かるが、条件を達成すればマジで有能なマジックアイテムに化ける……でも、低レベルの鑑定スキルじゃ見破れない。別に商人じゃないけど、有難みが良く解ったな)
オーガはランクCの魔物。並みの強さではない。
だが、BランクやAランクの冒険者からすれば時間を掛けずに倒せる相手。
三百個の魔石は確かに数は多い……だが、消して無理な数字ではない。
(何度もダンジョンに潜って最初から高性能な指輪が入っている宝箱を探すが、オーガの魔石を三百個集めるか……俺としては後者の方が楽だと思うけどな)
一旦自分の実力で考えず、一般的な冒険者の実力を考えた場合は三百個の魔石を集める方が楽だとゼルートは考えたが、結局それは人それぞれだ。
ダンジョンの下層にも難無く潜れる冒険者であれば宝箱を探している方が早いかもしれない。
ただ、そもそも魔物の素材の中で一番価値が高い魔石を吸収させるという行為に反対な者もいる。
「……やっぱり俺は根っからの冒険者なのかもな」
ブラブラと歩き続けたゼルートは結局武器屋や防具を売っている店がズラッと並んでいる辺りにやって来ていた。
「正直、武器も防具も当分必要無いんだけど……やっぱり見てるだけでも楽しいからな」
氷の魔剣、フロストグレイブ。雷の聖剣、バールクス。雷竜皇の素材から造られた紫電の刃。
その他にも業物と呼べる武器を多く持っているゼルートだが、それでも武器が並んでいる様子を見ると童心に返る。
一店、二店三店とのんびりと武器屋を見て回る。
戦闘者の力量を読めない鍛冶師ならゼルートが店に入って来た途端「ここはガキの来るところじゃねぇから帰れ!」と言われる可能性もあるが、この街で店を出している鍛冶師にそんなポンコツはいない。
ただ、全員が全員ゼルートの力量を読めているのではなく、単に違和感を感じて声を掛けていない者もいる。
完全な強者には見えない。しかし、見た目通りの子供には思えない。
そう感じさせる雰囲気を纏っている。
そして途中でゼルートは自分に向けられている視線に気が付いた。
(……やっぱり俺を追ってきているみたいだな)
自身に向けられている視線はゼルートが動くたびに付いて来ている。
その人物はゼルートがダンジョンに入る前に少々絡んで来た愚か者だった。
(俺が丁度一人で行動しているから襲えるタイミングを狙っている……そんな感じか? そんなつまらない事をしている暇があるならダンジョンに潜って魔物を倒してレベルアップしていれば良いのに)
大勢の前で少々面子を潰された韋駄天のベーザル達がゼルートに恨みを持って接触の機会を窺う、という可能性は理解出来る。
だが、まだ無名でどこにでもいるような冒険者達がゼルートに向ける恨みや妬みなど、持って向けたところでクソほど役に立たない。
「……坊主、お前さん同業者から恨みでも買ってんのか?」
「あぁ……ダンジョンに潜る前に向こうから絡まれてな。面倒事になったらあれだし、もう出て行くよ」
「いや、別に気にする必要は無い。相手の実力が解らん若造を鎮めるぐらい問題無い」
現在ゼルートが訪れている店の店主はゴリマッチョな体格であり、並みの冒険者なんてコテンパンにしてしまう雰囲気を持っている。
(視はしないけど、元冒険者ってパターンか? それならDランクぐらいの冒険者が相手でもサラッと潰してしまうか)
遠慮はいらないと言われたので再び武器の鑑賞に移る。
「ところで……一応聞くが、外の連中をどうするつもりだ」
「ん~~~……いつもなら潰して武器とか有り金を剥ぎ取るけど、今はなんとなく気分が良いから人気が多い場所を歩いて宿に帰るかな」
「……ふふ、敵対者は魔物と同じという事か」
「そんなところだ。迷惑料はキッチリと貰う派なんで」
年齢に合わない言動を続けるゼルートだが、店主には見た目と言葉にズレを感じなかった。
(世の中は広いとは、まさしくこの坊主みたいな奴を言うのだろうな。強いというのはなんとなく解るが……大体を把握することが出来ない)
鍛冶師になって十年弱、多くの冒険者を見てきたつもりの店主だが、ゼルートのようなタイプの冒険者に初めて遭遇した。
ゼルートがギフトして手に入れた鑑定眼Sは最上級の鑑定スキルであり、対象の能力や性能を見破れないということはあり得ない。
(赤鬼の怒気……ありゃ真の効果を発揮するには少々時間が掛かるが、条件を達成すればマジで有能なマジックアイテムに化ける……でも、低レベルの鑑定スキルじゃ見破れない。別に商人じゃないけど、有難みが良く解ったな)
オーガはランクCの魔物。並みの強さではない。
だが、BランクやAランクの冒険者からすれば時間を掛けずに倒せる相手。
三百個の魔石は確かに数は多い……だが、消して無理な数字ではない。
(何度もダンジョンに潜って最初から高性能な指輪が入っている宝箱を探すが、オーガの魔石を三百個集めるか……俺としては後者の方が楽だと思うけどな)
一旦自分の実力で考えず、一般的な冒険者の実力を考えた場合は三百個の魔石を集める方が楽だとゼルートは考えたが、結局それは人それぞれだ。
ダンジョンの下層にも難無く潜れる冒険者であれば宝箱を探している方が早いかもしれない。
ただ、そもそも魔物の素材の中で一番価値が高い魔石を吸収させるという行為に反対な者もいる。
「……やっぱり俺は根っからの冒険者なのかもな」
ブラブラと歩き続けたゼルートは結局武器屋や防具を売っている店がズラッと並んでいる辺りにやって来ていた。
「正直、武器も防具も当分必要無いんだけど……やっぱり見てるだけでも楽しいからな」
氷の魔剣、フロストグレイブ。雷の聖剣、バールクス。雷竜皇の素材から造られた紫電の刃。
その他にも業物と呼べる武器を多く持っているゼルートだが、それでも武器が並んでいる様子を見ると童心に返る。
一店、二店三店とのんびりと武器屋を見て回る。
戦闘者の力量を読めない鍛冶師ならゼルートが店に入って来た途端「ここはガキの来るところじゃねぇから帰れ!」と言われる可能性もあるが、この街で店を出している鍛冶師にそんなポンコツはいない。
ただ、全員が全員ゼルートの力量を読めているのではなく、単に違和感を感じて声を掛けていない者もいる。
完全な強者には見えない。しかし、見た目通りの子供には思えない。
そう感じさせる雰囲気を纏っている。
そして途中でゼルートは自分に向けられている視線に気が付いた。
(……やっぱり俺を追ってきているみたいだな)
自身に向けられている視線はゼルートが動くたびに付いて来ている。
その人物はゼルートがダンジョンに入る前に少々絡んで来た愚か者だった。
(俺が丁度一人で行動しているから襲えるタイミングを狙っている……そんな感じか? そんなつまらない事をしている暇があるならダンジョンに潜って魔物を倒してレベルアップしていれば良いのに)
大勢の前で少々面子を潰された韋駄天のベーザル達がゼルートに恨みを持って接触の機会を窺う、という可能性は理解出来る。
だが、まだ無名でどこにでもいるような冒険者達がゼルートに向ける恨みや妬みなど、持って向けたところでクソほど役に立たない。
「……坊主、お前さん同業者から恨みでも買ってんのか?」
「あぁ……ダンジョンに潜る前に向こうから絡まれてな。面倒事になったらあれだし、もう出て行くよ」
「いや、別に気にする必要は無い。相手の実力が解らん若造を鎮めるぐらい問題無い」
現在ゼルートが訪れている店の店主はゴリマッチョな体格であり、並みの冒険者なんてコテンパンにしてしまう雰囲気を持っている。
(視はしないけど、元冒険者ってパターンか? それならDランクぐらいの冒険者が相手でもサラッと潰してしまうか)
遠慮はいらないと言われたので再び武器の鑑賞に移る。
「ところで……一応聞くが、外の連中をどうするつもりだ」
「ん~~~……いつもなら潰して武器とか有り金を剥ぎ取るけど、今はなんとなく気分が良いから人気が多い場所を歩いて宿に帰るかな」
「……ふふ、敵対者は魔物と同じという事か」
「そんなところだ。迷惑料はキッチリと貰う派なんで」
年齢に合わない言動を続けるゼルートだが、店主には見た目と言葉にズレを感じなかった。
(世の中は広いとは、まさしくこの坊主みたいな奴を言うのだろうな。強いというのはなんとなく解るが……大体を把握することが出来ない)
鍛冶師になって十年弱、多くの冒険者を見てきたつもりの店主だが、ゼルートのようなタイプの冒険者に初めて遭遇した。
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