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少年期[769]裏ではヤバそう
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「……貴様、ふざけているのか」
「いや、別に全くふざけてないけど」
お互いに準備運動が終わり、開始線に立つが……三人はしっかりと己の武器を手に持っているが、ゼルートはいつも身に着けているロングソードをアレナに預けていた。
「武器を持たない状態がふざけていないだと? 冗談もほどほどにしてもらおうか」
「いや、だからふざけてないって言ってるだろ」
自身の武器を持たずに戦いに挑む。
ゼルートに恥をかかせたくて絡んだ傲慢貴族だが、身に付けている武器を手放すという行為は見逃せない。
ただ、そこでニコニコ顔の貴族が傲慢貴族をなだめる。
「まぁまぁ落ち着いて。武器を持つ持たないは個人の好きにしていいじゃないか。それに……武器を持ってなかったから負けたと後から言い訳できるし、僕は悪い選択だと思わないよ」
この一言で、ゼルートはニコニコ顔の貴族が表情通りの優男ではないと察した。
(この人……絶対表では良い人を演じるけど、裏では妻に暴力を振るって、最後はこれも君の為なんだよ……って言いながら抱きしめて洗脳するDVクズ臭がする)
ニコニコ顔の貴族にかなり嫌悪感を感じ、ゼルートは少しだけムッと表情を歪めるが、心を乱された程度で結果が変わることはない。
「……武器を持っている持っていないなど関係無い。俺たちが勝てば良いだけだ」
槍を扱う堅物系の男は淡々と言葉を口にしたが、ゼルートは男から向けられている敵意をしっかり感じ取っていた。
(ん~~~~……この人は、隣の二人と違って悪い人、男って感じではなさそうなんよだな……敵意を向けてきてはいるけど、二人と違って純粋な敵意なんだよな。敵意を向けられてるってことは、嫌われてるってことなんだろうけど)
堅物男は隣の二人と同じく、ゼルートに嫉妬している。
何故なら……女性でありながら騎士として男に負けず活躍しているミーユに憧れているから。
現時点でミーユに憧れ、惚れている同性は多い。
しかし、偶に噂は流れても本当に異性と付き合っている、もしくは婚約関係を結んでいるという話は出てこない。
そして堅物男はミーユに憧れてはいるが、それでもいつかは彼女に相応しい男になろうと日々研鑽を重ねている。
この状況をミーユが好ましいと思っているとは思えないが、それでも現時点で自分よりも親しい仲であるゼルートは実力的に超えなければならない存在。
その超える方法に関しては四の五の言ってられないことを理解しているからこそ、この状況を甘んじて受け入れている。
(勝ったらお前らの武器を報酬として頂くぞって言うタイミング逃したな……まっ、模擬戦の最中に壊してしまえば良いか。変えの武器ぐらい持ってるだろ)
そもそも、この模擬戦は傲慢男が絡んで来なければ起きることはなかった。
そしてゼルート的にはわざわざ納得させるために模擬戦を行ってやる……という気持ちなので、怒りはしていないが報酬は貰いたい気分。
しかし、もう流れ的に勝てば何かを貰うとは言えないので、とりあえずゼルートの中で傲慢貴族と優顔DV貴族の武器を壊すことは確定した。
「それでは、今から特例として模擬戦を始めるが……くれぐれも、模擬戦ということを忘れるなよ」
「無論」
「分かってますよ」
「えぇ、勿論忘れていませんよ」
「うっす」
(……ゼルート殿はともかく、こいつらの眼は変わらずマジだな)
審判を務める男は三人にとって先輩にあたる騎士。
その騎士から見て、どう考えても三人が模擬戦という枠内の戦いで満足するとは思えなかった。
だめだこりゃと思いながらも、騎士としての経験と勘が三人ではゼルートに勝てないと告げる。
覇王戦鬼の心配をするだけ無駄だろうと思い、完全に準備が整った四人を確認し、男は開始の合図を行った。
「いや、別に全くふざけてないけど」
お互いに準備運動が終わり、開始線に立つが……三人はしっかりと己の武器を手に持っているが、ゼルートはいつも身に着けているロングソードをアレナに預けていた。
「武器を持たない状態がふざけていないだと? 冗談もほどほどにしてもらおうか」
「いや、だからふざけてないって言ってるだろ」
自身の武器を持たずに戦いに挑む。
ゼルートに恥をかかせたくて絡んだ傲慢貴族だが、身に付けている武器を手放すという行為は見逃せない。
ただ、そこでニコニコ顔の貴族が傲慢貴族をなだめる。
「まぁまぁ落ち着いて。武器を持つ持たないは個人の好きにしていいじゃないか。それに……武器を持ってなかったから負けたと後から言い訳できるし、僕は悪い選択だと思わないよ」
この一言で、ゼルートはニコニコ顔の貴族が表情通りの優男ではないと察した。
(この人……絶対表では良い人を演じるけど、裏では妻に暴力を振るって、最後はこれも君の為なんだよ……って言いながら抱きしめて洗脳するDVクズ臭がする)
ニコニコ顔の貴族にかなり嫌悪感を感じ、ゼルートは少しだけムッと表情を歪めるが、心を乱された程度で結果が変わることはない。
「……武器を持っている持っていないなど関係無い。俺たちが勝てば良いだけだ」
槍を扱う堅物系の男は淡々と言葉を口にしたが、ゼルートは男から向けられている敵意をしっかり感じ取っていた。
(ん~~~~……この人は、隣の二人と違って悪い人、男って感じではなさそうなんよだな……敵意を向けてきてはいるけど、二人と違って純粋な敵意なんだよな。敵意を向けられてるってことは、嫌われてるってことなんだろうけど)
堅物男は隣の二人と同じく、ゼルートに嫉妬している。
何故なら……女性でありながら騎士として男に負けず活躍しているミーユに憧れているから。
現時点でミーユに憧れ、惚れている同性は多い。
しかし、偶に噂は流れても本当に異性と付き合っている、もしくは婚約関係を結んでいるという話は出てこない。
そして堅物男はミーユに憧れてはいるが、それでもいつかは彼女に相応しい男になろうと日々研鑽を重ねている。
この状況をミーユが好ましいと思っているとは思えないが、それでも現時点で自分よりも親しい仲であるゼルートは実力的に超えなければならない存在。
その超える方法に関しては四の五の言ってられないことを理解しているからこそ、この状況を甘んじて受け入れている。
(勝ったらお前らの武器を報酬として頂くぞって言うタイミング逃したな……まっ、模擬戦の最中に壊してしまえば良いか。変えの武器ぐらい持ってるだろ)
そもそも、この模擬戦は傲慢男が絡んで来なければ起きることはなかった。
そしてゼルート的にはわざわざ納得させるために模擬戦を行ってやる……という気持ちなので、怒りはしていないが報酬は貰いたい気分。
しかし、もう流れ的に勝てば何かを貰うとは言えないので、とりあえずゼルートの中で傲慢貴族と優顔DV貴族の武器を壊すことは確定した。
「それでは、今から特例として模擬戦を始めるが……くれぐれも、模擬戦ということを忘れるなよ」
「無論」
「分かってますよ」
「えぇ、勿論忘れていませんよ」
「うっす」
(……ゼルート殿はともかく、こいつらの眼は変わらずマジだな)
審判を務める男は三人にとって先輩にあたる騎士。
その騎士から見て、どう考えても三人が模擬戦という枠内の戦いで満足するとは思えなかった。
だめだこりゃと思いながらも、騎士としての経験と勘が三人ではゼルートに勝てないと告げる。
覇王戦鬼の心配をするだけ無駄だろうと思い、完全に準備が整った四人を確認し、男は開始の合図を行った。
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