冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai

文字の大きさ
612 / 1,083
連載

少年期[769]裏ではヤバそう

しおりを挟む
「……貴様、ふざけているのか」

「いや、別に全くふざけてないけど」

お互いに準備運動が終わり、開始線に立つが……三人はしっかりと己の武器を手に持っているが、ゼルートはいつも身に着けているロングソードをアレナに預けていた。

「武器を持たない状態がふざけていないだと? 冗談もほどほどにしてもらおうか」

「いや、だからふざけてないって言ってるだろ」

自身の武器を持たずに戦いに挑む。
ゼルートに恥をかかせたくて絡んだ傲慢貴族だが、身に付けている武器を手放すという行為は見逃せない。

ただ、そこでニコニコ顔の貴族が傲慢貴族をなだめる。

「まぁまぁ落ち着いて。武器を持つ持たないは個人の好きにしていいじゃないか。それに……武器を持ってなかったから負けたと後から言い訳できるし、僕は悪い選択だと思わないよ」

この一言で、ゼルートはニコニコ顔の貴族が表情通りの優男ではないと察した。

(この人……絶対表では良い人を演じるけど、裏では妻に暴力を振るって、最後はこれも君の為なんだよ……って言いながら抱きしめて洗脳するDVクズ臭がする)

ニコニコ顔の貴族にかなり嫌悪感を感じ、ゼルートは少しだけムッと表情を歪めるが、心を乱された程度で結果が変わることはない。

「……武器を持っている持っていないなど関係無い。俺たちが勝てば良いだけだ」

槍を扱う堅物系の男は淡々と言葉を口にしたが、ゼルートは男から向けられている敵意をしっかり感じ取っていた。

(ん~~~~……この人は、隣の二人と違って悪い人、男って感じではなさそうなんよだな……敵意を向けてきてはいるけど、二人と違って純粋な敵意なんだよな。敵意を向けられてるってことは、嫌われてるってことなんだろうけど)

堅物男は隣の二人と同じく、ゼルートに嫉妬している。
何故なら……女性でありながら騎士として男に負けず活躍しているミーユに憧れているから。

現時点でミーユに憧れ、惚れている同性は多い。
しかし、偶に噂は流れても本当に異性と付き合っている、もしくは婚約関係を結んでいるという話は出てこない。

そして堅物男はミーユに憧れてはいるが、それでもいつかは彼女に相応しい男になろうと日々研鑽を重ねている。
この状況をミーユが好ましいと思っているとは思えないが、それでも現時点で自分よりも親しい仲であるゼルートは実力的に超えなければならない存在。

その超える方法に関しては四の五の言ってられないことを理解しているからこそ、この状況を甘んじて受け入れている。

(勝ったらお前らの武器を報酬として頂くぞって言うタイミング逃したな……まっ、模擬戦の最中に壊してしまえば良いか。変えの武器ぐらい持ってるだろ)

そもそも、この模擬戦は傲慢男が絡んで来なければ起きることはなかった。
そしてゼルート的にはわざわざ納得させるために模擬戦を行ってやる……という気持ちなので、怒りはしていないが報酬は貰いたい気分。

しかし、もう流れ的に勝てば何かを貰うとは言えないので、とりあえずゼルートの中で傲慢貴族と優顔DV貴族の武器を壊すことは確定した。

「それでは、今から特例として模擬戦を始めるが……くれぐれも、模擬戦ということを忘れるなよ」

「無論」

「分かってますよ」

「えぇ、勿論忘れていませんよ」

「うっす」

(……ゼルート殿はともかく、こいつらの眼は変わらずマジだな)

審判を務める男は三人にとって先輩にあたる騎士。
その騎士から見て、どう考えても三人が模擬戦という枠内の戦いで満足するとは思えなかった。

だめだこりゃと思いながらも、騎士としての経験と勘が三人ではゼルートに勝てないと告げる。
覇王戦鬼の心配をするだけ無駄だろうと思い、完全に準備が整った四人を確認し、男は開始の合図を行った。
しおりを挟む
感想 685

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。