カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

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二十四話 死にたがりではないよ

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「なるほど。彼の強さが少し解りました」

「……頭おかしいでしょ」

クランド、リーゼの狩りに付いてきた二人は、戦闘に参加はせず、後方で二人の戦いっぷりを観察。

目の前ではモンスターとの戦闘に一切臆することなく、果敢に突っ込む二人。

(異常に戦い慣れしているのは、日頃から実戦を続けているから……それ以外にも理由はありそうですが、そのうちの一つではあるでしょう)

Fランクは勿論、Eランクのモンスターが相手であっても、クランドは普段通りの表情で前進し、戦闘に勝利する。

(バカなんじゃないの、こいつ)

心の中でもクランドを罵倒するメイナだが、実際のところは……モンスターを相手に戦い続けるクランドに恐れを感じていた。

何故、モンスターという凶悪な存在に、何度も何度も挑めるのか。
どうして自分を殺せる力を持つ相手に、そんな笑みを浮かべながら戦えるのか。

メイナもモンスターとの戦闘経験はあるが、クランドやリーゼほどは多くない。
今でもモンスターとの戦闘には、大なり小なり恐怖感を持っている。

決してそれが悪いのではなく、メイナが考えている通り、二人が少々おかしい。

リーゼが変態だと思うのも無理はない。

「あんた、死にたがりなの」

休息中に、メイナがそんな質問をクランドに投げた。

リーゼには、クランドを支える、サポートする! という献身の意志を感じる。
ただ、クランドの戦っている時の表情は、どこからどう見ても笑顔。
楽しんでいる様にしか思えず、実際のところ楽しんでいる。

「……強い奴と戦うのが好きなんですよ」

「それで死んだとしても?」

強い相手と戦っていれば、当然死ぬ可能性はある。

クランドが戦ってきたワイルドボアやオークなどのDランクモンスターが相手では、十分死ぬ可能性があった。
その点に関しては、専属の従者であるリーゼも少々心配している。

「死にたくはないですよ。老衰するまで、美味い料理を食べ続けたいと思ってますし」

「なら、尚更そんな死に急ぐような真似はするものじゃないじゃない」

リーゼの言葉に、狩り時の護衛を担当する騎士たちは、揃って何度も頷いた。

「……本当に無理だと思う相手なら、騎士たちに任せますよ。ただ、挑戦できる相手には挑戦したい」

以前、Cランクモンスターのリザードマンと遭遇したことがある。

その時……クランドは本能的に「お願いします!!」と、騎士たちに戦闘を任せると、声を掛けた。
この時の反応は正しく、今のクランドでは到底敵わない程の戦力差がある。

死ぬ気で挑んでも勝てない相手。
それは即座に感じ取った。

「死にたがりと言うのは、死に場所を探して無茶をしている者のことです。俺は強い相手と戦いたい……ただ、それに加えて勝ちたいという思いがあります」

強敵に死ぬ気で挑むにしても、本当に死ぬつもりはない。

「負けて得られる戦いもあると思いますが、勝ってなんぼの勝負だと思ってるんで」

この言葉に、実際にクランドと模擬戦を行ったフェリスは深く納得。

クランドの中に実力差から、本気を出しても問題無いという気持ちはあったが……負けても良いやという気持ちはなかった。

「……あっそ」

何故だが自分はまだまだ子供で、目の前の自分を負かした男が、自分よりも大人だと感じ、思わずそっぽを向いてしまった。

(仕方ありませんね)

自分から質問しておいて、そんな態度を取るのは良くない。
良くないが……フェリスにはメイナの気持ちが理解出来た。

それはフェリスだけではなく、護衛の騎士たちも同じ気持ちだった。

「よし、そろそろ行きましょうか」

夕食時まで時間はまだあるため、クランドはいつも通り時間ギリギリになるまで狩りを楽しんだ。

すると、翌日の訓練時……メイナが少々上から目線で、クランドに模擬戦を挑む。

「えぇ、大丈夫ですよ」

既に体が暖まっていたこともあり、クランドは迷うことなく了承。

「……」

先日と同じく木槍を持つクランドに対し、あからさまに不満を顔に浮かべる。
意地でも素手で戦わせてやる!! と意気込んで意気込んだは良かったが、四分後には首元に刃先を突き付けられていた。

「そこまで」

「っ~~~!!!」

馬鹿ではない為、その時点で自分の負けは認める。
だからといって、悔しい気持ちがゼロなわけがない。

「よろしくお願いします」

「えぇ、お願いします」

クランドにとって、メイナとの模擬戦は丁度良い準備運動。

本番はフェリスとのガチ模擬戦。
相変わらず戦意と殺気全開で、属性魔力も遠慮なしにフル活用。

本気中の本気で挑むクランドに対し、フェリスも有効打を一切食らわないように全集中で対応。
結果、先日と同じくクランドのギブアップで終了。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。まだ、無理みたいですね」

「これでも現役の騎士ですからね」

だとしても、戦うからには負けて良いと思っていないクランドは、直ぐに模擬戦の振り返りを始めた。

「ふふ、良い刺激になってるみたいだね」

「その様だな」

少し離れた場所から模擬戦を観ていた父親ズは、二人とも嬉しそうな笑みを浮かべていた。

そして数日後、ジルたちがパルスティラ王国に戻る日が訪れた。
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