23 / 92
二十三話 どうすれば取り込める?
しおりを挟む
「素晴らしい戦いだった! いや、本当に素晴らしかったよ!!」
ジルが二人のバトルを褒め始め、観戦していた騎士たちも二人に拍手を送った。
(褒められるのは嬉しいけど……まだまだだな)
フェリスたとの戦闘中、クランドは一応使える火も使用し、全力で勝とうとした。
しかし、結果的に有効打を一つも決めることは出来なかった。
「フェリス、滞在してる間はクランド君の相手をまた頼んでも良いかな」
「かしこまりました」
ジルの言葉は……クランドにとって、非常に有難い提案だった。
ただ、同時にそれは良いのか? という疑問が浮かび上がる。
ぐるっと大人たちの顔を見ると、全員が了承しており……それならば良いかと思い、疑問が解消。
嫉妬の感情が籠った視線が向けられているが、気にしないことにした。
(是非ともメイナの婿になってくれないかな)
当然、ジルはクランドをメイナの婚約者としてランディ―ス家に迎え入れたいと考え始める。
とはいえ、クランドの就きたい職業は冒険者。
冒険者という職業に偏見はないが、あまり娘に就いて欲しいとは思わない。
加えて……半日も経っていないやり取りで、メイナがクランドに対して良い感情を持っていないことは理解していた。
(そういえば、フェリスとしっかり向き合った時、ちょっと頬が赤くなってたような……もしかして歳上好き?)
そうではないが、完全に間違ってもいなかった。
(確か、フェリスには婚約者がいなかったよね。まだ二十歳を超えてないし……でも、年齢さが八歳ぐらいか……さすがに厳しいかな)
ジルは本気でクランドを取り込めないか考え始めていた。
そして夕食時……この時、ジルの頼みとあって、クランドは厨房にとって夕食に出す料理を作っていた。
「うん、美味しいね! いくらでも食べられるよ!!」
心底美味そうな表情で食べてくれるため、作ったクランドとしては嬉しい限り。
クランドに負けてから、あまり機嫌が良くない状況が続いていたメイナだが、夕食を食べ始めてからは機嫌がプラスに向き始めた。
「いや~、こんな美味しい料理を作れるなんて……本当になんでも出来るんだね」
「ありがとうございます。ですが、何でもは出来ません。頑張って続けていたら、出来るようになっただけですから」
「ふふ、本当に謙虚だね」
頑張って続けていたら、出来るようになった。
その言葉を堂々と、負の感情を混ぜずに言えるクランドに、ジルは尊敬の念すら覚える。
「クランド君なら、遊撃部隊に騎士として入隊出来ると思うんだけどね」
「遊撃部隊、ですか」
必要な技術が縛られている訳ではなく、敵の殲滅や絡めることに特化している。
ある程度の身体能力、魔力を持っており、加えて何かしらの一芸を持っている人達が入隊する部隊。
「クランド君の強味はある程度の武器を扱えることと、圧倒的な身体能力。それらは十分過ぎる武器だ。多分……オルガが後押ししなくても入隊できると思うよ」
「……クランドなら、無理ではないだろうな」
クランドが冒険者の道に進むことを、もう止めるつもりはない。
しかし、ジルの考えに答えるのであれば……イエスという答えが事実。
ある程度の身体能力と魔力量。
この二つに関しては余裕で超えており、両方とも規定の一芸に匹敵する。
「自分の実力を評価してくれるのは、とても嬉しいです。ただ、俺が目指す道は冒険者なので」
「そうか……芯が太いね」
属する国は違う。
ただ……貴族として、元騎士として是非ともクランドには騎士の道に進んで欲しい、という思いが芽生えてしまった。
それ以降、食事の席ではクランドの進路が話題に出ることはなく、大きな問題が起こることなく、一日目は終了した。
そして二日目……朝食を食べ終え、準備運動を終えたクランドは、早速フェリスに模擬戦の相手をしてもらっていた。
前日とは違い、素手だけではなく、他の武器を使って模擬戦行うクランド。
勿論、キャントを行いながら、毎回毎回本気で挑んでいる。
(この歳でここまで戦えるのは……以上ですね)
王道な動きだけではなく、獣人族の様な不規則な動きも可能。
一般的には、王道的な動きを極めるのに多くの時間が必要になる。
クランドがその動きを極められているかと言うと……極められていない。
ただ、現年齢を考えれば十分な質まで高められている。
もうそちらの動きを鍛えることを止めている訳でもないので、戦い方や普段の訓練内容に口を挟む部分がなかった。
「本当に、強いですね」
「それはこちらのセリフですよ。クランド君の実力は、同性代の子供たちが可哀想と思ってしまう程、全てのレベルが高いです」
「現役騎士の方にそう言ってもらえると、自信持てますね」
爽やかな笑顔でそう言うクランドだが、フェリスはお世辞を言っているつもりはない。
先日の、夕食までの訓練光景で、攻撃魔法を拳や蹴りで弾くことが出来るのは把握している。
間接的に護衛対象のメイナも可哀想と口にしまっているのだが……フェリスは全く気付いていなかった。
そして朝の訓練、昼食が終わった後、メイナとフェリスはクランドの狩りに付いて行った。
ジルが二人のバトルを褒め始め、観戦していた騎士たちも二人に拍手を送った。
(褒められるのは嬉しいけど……まだまだだな)
フェリスたとの戦闘中、クランドは一応使える火も使用し、全力で勝とうとした。
しかし、結果的に有効打を一つも決めることは出来なかった。
「フェリス、滞在してる間はクランド君の相手をまた頼んでも良いかな」
「かしこまりました」
ジルの言葉は……クランドにとって、非常に有難い提案だった。
ただ、同時にそれは良いのか? という疑問が浮かび上がる。
ぐるっと大人たちの顔を見ると、全員が了承しており……それならば良いかと思い、疑問が解消。
嫉妬の感情が籠った視線が向けられているが、気にしないことにした。
(是非ともメイナの婿になってくれないかな)
当然、ジルはクランドをメイナの婚約者としてランディ―ス家に迎え入れたいと考え始める。
とはいえ、クランドの就きたい職業は冒険者。
冒険者という職業に偏見はないが、あまり娘に就いて欲しいとは思わない。
加えて……半日も経っていないやり取りで、メイナがクランドに対して良い感情を持っていないことは理解していた。
(そういえば、フェリスとしっかり向き合った時、ちょっと頬が赤くなってたような……もしかして歳上好き?)
そうではないが、完全に間違ってもいなかった。
(確か、フェリスには婚約者がいなかったよね。まだ二十歳を超えてないし……でも、年齢さが八歳ぐらいか……さすがに厳しいかな)
ジルは本気でクランドを取り込めないか考え始めていた。
そして夕食時……この時、ジルの頼みとあって、クランドは厨房にとって夕食に出す料理を作っていた。
「うん、美味しいね! いくらでも食べられるよ!!」
心底美味そうな表情で食べてくれるため、作ったクランドとしては嬉しい限り。
クランドに負けてから、あまり機嫌が良くない状況が続いていたメイナだが、夕食を食べ始めてからは機嫌がプラスに向き始めた。
「いや~、こんな美味しい料理を作れるなんて……本当になんでも出来るんだね」
「ありがとうございます。ですが、何でもは出来ません。頑張って続けていたら、出来るようになっただけですから」
「ふふ、本当に謙虚だね」
頑張って続けていたら、出来るようになった。
その言葉を堂々と、負の感情を混ぜずに言えるクランドに、ジルは尊敬の念すら覚える。
「クランド君なら、遊撃部隊に騎士として入隊出来ると思うんだけどね」
「遊撃部隊、ですか」
必要な技術が縛られている訳ではなく、敵の殲滅や絡めることに特化している。
ある程度の身体能力、魔力を持っており、加えて何かしらの一芸を持っている人達が入隊する部隊。
「クランド君の強味はある程度の武器を扱えることと、圧倒的な身体能力。それらは十分過ぎる武器だ。多分……オルガが後押ししなくても入隊できると思うよ」
「……クランドなら、無理ではないだろうな」
クランドが冒険者の道に進むことを、もう止めるつもりはない。
しかし、ジルの考えに答えるのであれば……イエスという答えが事実。
ある程度の身体能力と魔力量。
この二つに関しては余裕で超えており、両方とも規定の一芸に匹敵する。
「自分の実力を評価してくれるのは、とても嬉しいです。ただ、俺が目指す道は冒険者なので」
「そうか……芯が太いね」
属する国は違う。
ただ……貴族として、元騎士として是非ともクランドには騎士の道に進んで欲しい、という思いが芽生えてしまった。
それ以降、食事の席ではクランドの進路が話題に出ることはなく、大きな問題が起こることなく、一日目は終了した。
そして二日目……朝食を食べ終え、準備運動を終えたクランドは、早速フェリスに模擬戦の相手をしてもらっていた。
前日とは違い、素手だけではなく、他の武器を使って模擬戦行うクランド。
勿論、キャントを行いながら、毎回毎回本気で挑んでいる。
(この歳でここまで戦えるのは……以上ですね)
王道な動きだけではなく、獣人族の様な不規則な動きも可能。
一般的には、王道的な動きを極めるのに多くの時間が必要になる。
クランドがその動きを極められているかと言うと……極められていない。
ただ、現年齢を考えれば十分な質まで高められている。
もうそちらの動きを鍛えることを止めている訳でもないので、戦い方や普段の訓練内容に口を挟む部分がなかった。
「本当に、強いですね」
「それはこちらのセリフですよ。クランド君の実力は、同性代の子供たちが可哀想と思ってしまう程、全てのレベルが高いです」
「現役騎士の方にそう言ってもらえると、自信持てますね」
爽やかな笑顔でそう言うクランドだが、フェリスはお世辞を言っているつもりはない。
先日の、夕食までの訓練光景で、攻撃魔法を拳や蹴りで弾くことが出来るのは把握している。
間接的に護衛対象のメイナも可哀想と口にしまっているのだが……フェリスは全く気付いていなかった。
そして朝の訓練、昼食が終わった後、メイナとフェリスはクランドの狩りに付いて行った。
21
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる