カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

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五十六話 落ち込まない、苛立たない

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ギルドに入ってきた一つのパーティーに、多くの視線が集まる。

そのパーティーは、クランドとリーゼの二人を除けば、ハリストンで最もCランクに近いDランク冒険者たち。

そんなパーティーが……一直線に二人の元に歩を進めた。

「……」

「お前が、クランドって奴であってるか?」

「あぁ、そうだよ。俺の名前はクランドだ。それで、お前はどちら様なんだ?」

「っと、確かに自己紹介しなきゃいけねぇよな」

男は得意げな表情で名乗りを上げた。

「俺はウルガラ!!! Dランク冒険者。パーティー名、月光の虎のリーダーだ!!!」

赤髪短髪で、元気と野性を足して半分に割った高い顔面偏差値。
慎重も百八十センチあり、彼がどれだけ自身を鍛えてるか伺える。

「クランド、俺と勝負しようぜ!!!!」

「……いきなりだな」

クランドが少々面食らっていると、隣に立っていた斥候姿のパーティーメンバーが、思いっきり握りこぶしを振り下ろした。

「っでぇええええええ!!!! い、いきなり何すんだよ!!! 頭蓋骨割れちまうだろ!!!」

「いきなりなのはあんたの方よ!!! ていうか、わたしの腕力であんたの堅過ぎる頭蓋骨が割れる訳ないでしょ!!!」

「だかって、普通殴るかよ!!!!」

目の前で夫婦漫才が始められた。
そう感じたクランドは、助けを求めてリーゼに視線を送る。

「はぁ~~~……あなたたちの目的は何なのですか」

「うちの馬鹿がごめんね!」

斥候女性が、無理矢理ウルガラの頭を下げさせ、自身の頭も下げる。

「謝罪は受け入れるよ。ただ、いきなり勝負を申し込んで来た理由を教えてほしい」

「うちのリーダーが申し訳ない。説明は僕の方からさせてもらおう」

今度はインテリイケメンメイジが一歩前に出て、クランドに勝負を挑むことになった経緯について、説明を始めた。

簡単に言えば、ウルガラたちはハリストンに戻る途中で、友人のルーキーたちと遭遇し、クランドとリーゼについて説明を受けた。

ウルガラたちは、そのルーキーたちからの説明を、全て馬鹿正直に受け入れはしない。
まだ完全にケツの殻が取れてはいないが、それでもDランク冒険者。

とはいえ、最近現れて幅を利かせている? スーパールーキーの話はかなり気になる。
そんな事があって、帰って来て早々噂の二人を発見したので、一直線に向かった。

「って訳だ! 俺のタイマン勝負しようぜ!!」

「ん~~~~…………分かった。良いよ」

「マジか!?」

自分で申し込んでおいて、あっさり了承してくれるとは思っておらず、驚きを隠せないウルガラ。

「何をそんなに驚くんだよ。そっちから頼んできたことだろ」

「いや、そりゃそうだけどよ……そっちにも予定とかあるだろ」

いつも突っ走る暴走ブルというイメージが強いウルガラだが、一応考える頭は持っている。

「いや、特にないぞ。別にレストランの予約もしてないしな」

「そ、そうか。なら、これから戦ろうぜ!!!!!」

「そっちがそれで良いなら、今からでも構わないよ」

討伐依頼を受けて帰ってきたばかり……ではあるが、大して疲れていない。

そんな自分と比べて、ウルガラはどうなんだ? と思ったが、勝負を挑んできたのはウルガラ。
そこを心配するのは無意味だろうと思い、訓練場へ移動。

数分ほど体を動かした後、訓練場にいたCランク冒険者が審判を務めてくれることになり、模擬戦が始まる。

周囲にはベテランたちだけではなく、依頼から帰ってきた多くのルーキーたちも集まっていた。

(俺を応援する声は二割、ウルガラを応援する声が八割ってところか。まぁ、俺を応援してくれる人が二割もいるだけ喜ぶべきところか)

パーティーメンバーであるリーゼは、応援することはなく、ただ静観していた。

「んじゃ、模擬戦のルールは守って戦えよ」

「「はい」」

「そんじゃ、始め!!!!」

審判の掛け声と共に、二人は己の武器を構える。

ウルガラは相棒である大剣を構え、クランドはいつも本気を出すときの構えではなく、オーソドックスな徒手格闘の構えを取っていた。

「本当に素手で戦うんだな……いくぞ!!!」

噂通り素手で戦おうとするクランドに、苛立ちは感じない。

他のルーキーたちよりも少し経験が豊富なこともあり、その点に関して反感はない。
しょうもない事で思考を鈍らせず、闘志を滾らせ、大剣を振り下ろす。

(身体強化を使ってない、が……そこそこ速いな)

ウルガラと同じく強化系スキルを使わない状態で、飄々と躱す。

「はっ! おらっ!!! ふんっ!!!!」

「…………」

気合一閃とばかり大剣を振るうが、数分ほど経っても、刃はクランドに掠りもしなかった。

(はっはっは! マジか、本当に強いな!!!)

若干押されている状況など気にも留めず、テンションは更に上昇。
身体強化を使用し、再びクランドに突貫。

今のままでは危ないと思い、クランドも身体強化を使用して対応。
第二ラウンドはクランドの方からも攻め始め、激しい攻防となる。

(くっ! 解ってたけど、Cランクモンスターを倒せる、実力者は、やべぇな!!!!)

劣勢という状況に落ち込みや苛立ちもなく、更に闘志を燃やし、大剣に火を纏わせた。
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