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五十八話 目を逸らすな
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ルーキーという枠の中で、トップの実力を持つウルガラがタイマン勝負で負けてしまった。
この一件は、他のルーキーたちに大きな衝撃を与える結果となった。
元々女性冒険者たちは、先日盗賊に襲われているところをクランドが助けた一件もあって、負の視線を向ける者は一人もいない。
同性の冒険者だけが、クランドに向けて負の視線を向け続けていた。
だが……自分たちの目の前で、ルーキーの中では最強だと思っていた人物が負けた。
過程はどうであれ、クランドの実力が間違いないということが証明された。
この結果に対し、それでも不満を持った者はいたが、ダル絡みしようとした瞬間……それを見逃さなかった先輩から、鉄拳を頭部に叩きこまれた。
(ったく、ちょっとは学習してほしいもんだぜ。負けた本人は清々しい表情だってのによ)
全く悔しくない、という訳ではない。
今の自分では絶対に敵わない実力を持っていると解っても、負けたらやはり悔しい。
その炎は、確かに心の中にあった。
しかし、ウルガラには実際に負けてしまったという事実を受け入れる器がある。
「お前ら! 今よりも強くなりてぇなら、現実から目を逸らすな!!!!」
拳骨を食らわせてもまだ何か言いたげなルーキーたちに対し、先輩冒険者は大きな声で一喝。
先輩が少々怒っていると勘付き、しおらしくなる……が、クランドに対して反抗的な態度が消えたかどうかはまた別。
そんなことが起こっている中、クランドは約束通りウルガラたちに夕食を奢ってもらっていた。
金はそれなりに持っているが、奢ってもらえるのであれば、有難くご馳走になる。
クランドは遠慮なく料理を注文し、腹に流し込んでいく。
その食いっぷりに、先程までバチバチに戦っていたウルガラも負けじと、空腹を全力で満たしにいく。
互いに歳が近く、正確に難もないため、クランドたちとウルガラたちは直ぐに友人関係となった。
クランドとしては、冒険者になってから初めてできた同世代の友人。
今までボッチ生活を送っていた訳ではないが、冒険者としての友人ができたことは予想以上に嬉しく、寝るまで表情に喜びが現れていた。
(こんなに嬉しそうな顔をするクランド様は、いつぶりでしょうか? それだけウルガラさんたちのことを気に入ったのでしょう……できれば、事故は起きないでほしいものですね)
冒険者という職業上、当然仕事中に死ぬリスクはある。
それはリーゼも承知している。
ウルガラたちもそれを承知の上で、日々生活を送っている。
ただ、主人に初めてできた仕事仲間。
そう願わずにはいられなかった。
「よぅ、クランド! 予定が空いてるなら、この依頼を一緒に受けねぇか!!」
そんな嬉しい出会いがあってから四日後、二人で冒険者ギルドに入ると、元気な声で一緒に依頼を受けないかと声を掛けられた。
「やぁ、ウルガラ。いったいどんな依頼だ?」
「デットルティスの討伐依頼だ」
モンスターの名前を聞いた瞬間、二人の表情が少々強張った。
「あっ、あれだぞ。できれば、二人にはサポートをメインにお願いしたいと思ってる。勿論、報酬金額は折半する」
「いや、そこはそれで有難いんだけど……本気で言ってるのか?」
「おう! 本気だぜ!!!」
デッドルティスはカマキリの昆虫モンスター。
ランクはCと、Dランクのルーキーが挑むには少々早い壁。
パーティーメンバーである参謀のメガネ男子、ガリアに目を向けたが、「ウルガラの我儘だから仕方ない」といった思いは表情に浮かんでおらず、至って真面目。
「何と言うか……そろそろ、超えるべき壁を感じておきたいと思ってね」
「そういう、ことか……」
さすがにまだ早いだろ、とは思わなかった。
先日戦ったウルガラの実力は、タイマン勝負であればDランクモンスターであるオークを倒せるほどのもの。
オークとデッドルティスでは身体能力にそこそこ差があるが、そこにパーティーメンバーであるガリアたちの力が加われば……結果は分からない。
勝つ可能性もあるが、誰かが死ぬ可能性も大いにある。
冒険者はなるべく冒険しない方が長生きするのだが、時と場合によっては冒険しなければならない。
加えて、冒険しなければ超えられない金は存在する。
「分かった、一緒に受けよう」
「マジか! ありがとな!!!」
強い昆虫系のモンスターと戦える機会は多くない為、クランドとしても有難い誘い。
受付嬢に二組で受けることを伝え、互いに野営の準備ができている事を確認し、直ぐに目撃情報がある場所へ向かう。
「あいつら、上手くやれると思うか?」
「……まっ、やれないこともないだろ」
やり取りを見ていたベテラン達は、クランドたちが協力して挑むのであれば、問題無いと思った……が、懸念点もある。
「でもな、確かデッドルティスは……いや、一人でCランクを倒せるクランドに、誰とでも上手く連携出来るリーゼがいるなら、大丈夫か」
「それもそうだな」
特に問題は起こらないだろう……そう思いながら、ベテラン達も自分たちの仕事を選びに、クエストボードの前へ向かった。
この一件は、他のルーキーたちに大きな衝撃を与える結果となった。
元々女性冒険者たちは、先日盗賊に襲われているところをクランドが助けた一件もあって、負の視線を向ける者は一人もいない。
同性の冒険者だけが、クランドに向けて負の視線を向け続けていた。
だが……自分たちの目の前で、ルーキーの中では最強だと思っていた人物が負けた。
過程はどうであれ、クランドの実力が間違いないということが証明された。
この結果に対し、それでも不満を持った者はいたが、ダル絡みしようとした瞬間……それを見逃さなかった先輩から、鉄拳を頭部に叩きこまれた。
(ったく、ちょっとは学習してほしいもんだぜ。負けた本人は清々しい表情だってのによ)
全く悔しくない、という訳ではない。
今の自分では絶対に敵わない実力を持っていると解っても、負けたらやはり悔しい。
その炎は、確かに心の中にあった。
しかし、ウルガラには実際に負けてしまったという事実を受け入れる器がある。
「お前ら! 今よりも強くなりてぇなら、現実から目を逸らすな!!!!」
拳骨を食らわせてもまだ何か言いたげなルーキーたちに対し、先輩冒険者は大きな声で一喝。
先輩が少々怒っていると勘付き、しおらしくなる……が、クランドに対して反抗的な態度が消えたかどうかはまた別。
そんなことが起こっている中、クランドは約束通りウルガラたちに夕食を奢ってもらっていた。
金はそれなりに持っているが、奢ってもらえるのであれば、有難くご馳走になる。
クランドは遠慮なく料理を注文し、腹に流し込んでいく。
その食いっぷりに、先程までバチバチに戦っていたウルガラも負けじと、空腹を全力で満たしにいく。
互いに歳が近く、正確に難もないため、クランドたちとウルガラたちは直ぐに友人関係となった。
クランドとしては、冒険者になってから初めてできた同世代の友人。
今までボッチ生活を送っていた訳ではないが、冒険者としての友人ができたことは予想以上に嬉しく、寝るまで表情に喜びが現れていた。
(こんなに嬉しそうな顔をするクランド様は、いつぶりでしょうか? それだけウルガラさんたちのことを気に入ったのでしょう……できれば、事故は起きないでほしいものですね)
冒険者という職業上、当然仕事中に死ぬリスクはある。
それはリーゼも承知している。
ウルガラたちもそれを承知の上で、日々生活を送っている。
ただ、主人に初めてできた仕事仲間。
そう願わずにはいられなかった。
「よぅ、クランド! 予定が空いてるなら、この依頼を一緒に受けねぇか!!」
そんな嬉しい出会いがあってから四日後、二人で冒険者ギルドに入ると、元気な声で一緒に依頼を受けないかと声を掛けられた。
「やぁ、ウルガラ。いったいどんな依頼だ?」
「デットルティスの討伐依頼だ」
モンスターの名前を聞いた瞬間、二人の表情が少々強張った。
「あっ、あれだぞ。できれば、二人にはサポートをメインにお願いしたいと思ってる。勿論、報酬金額は折半する」
「いや、そこはそれで有難いんだけど……本気で言ってるのか?」
「おう! 本気だぜ!!!」
デッドルティスはカマキリの昆虫モンスター。
ランクはCと、Dランクのルーキーが挑むには少々早い壁。
パーティーメンバーである参謀のメガネ男子、ガリアに目を向けたが、「ウルガラの我儘だから仕方ない」といった思いは表情に浮かんでおらず、至って真面目。
「何と言うか……そろそろ、超えるべき壁を感じておきたいと思ってね」
「そういう、ことか……」
さすがにまだ早いだろ、とは思わなかった。
先日戦ったウルガラの実力は、タイマン勝負であればDランクモンスターであるオークを倒せるほどのもの。
オークとデッドルティスでは身体能力にそこそこ差があるが、そこにパーティーメンバーであるガリアたちの力が加われば……結果は分からない。
勝つ可能性もあるが、誰かが死ぬ可能性も大いにある。
冒険者はなるべく冒険しない方が長生きするのだが、時と場合によっては冒険しなければならない。
加えて、冒険しなければ超えられない金は存在する。
「分かった、一緒に受けよう」
「マジか! ありがとな!!!」
強い昆虫系のモンスターと戦える機会は多くない為、クランドとしても有難い誘い。
受付嬢に二組で受けることを伝え、互いに野営の準備ができている事を確認し、直ぐに目撃情報がある場所へ向かう。
「あいつら、上手くやれると思うか?」
「……まっ、やれないこともないだろ」
やり取りを見ていたベテラン達は、クランドたちが協力して挑むのであれば、問題無いと思った……が、懸念点もある。
「でもな、確かデッドルティスは……いや、一人でCランクを倒せるクランドに、誰とでも上手く連携出来るリーゼがいるなら、大丈夫か」
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