68 / 92
六十八話 最悪過ぎたタイミング
しおりを挟む
クランドが再度投下した爆弾によって、酒場に居た者たちの大半が笑い始めた。
確かに……クランドの言葉は中々否定出来ない事実。
ワイバーン……亜竜を倒しただけで、ドラゴンスレイヤーと名乗るのは、いさかか詐欺と思われても仕方ない。
ただ、今回のように笑いが爆発したのには、他にも理由があった。
クランドたちが座っている席から離れた場所で座っていた冒険者たちが……とんでもなくタイムリーな話をしていたのだ。
場所とタイミングが悪く、彼らの会話内容がクランドとリーゼの耳に入ることはなかった。
そして運悪く、彼らが店を出る前に、クランドが爆弾を何度も投下してしまった。
「っ!!!」
当然、つい先ほどまで自分たちがワイバーンを倒し、ドラゴンスレイヤーの称号を得る!!! と意気揚々と話していた冒険者たちにとっては、笑いものにされたも同然。
その原因となった人物であるクランドを、許せるはずがなかった。
「おい、お前……何がおかしいんだよ」
「えっと……どちら様ですか?」
いきなり自分たちの元にやって来た、おそらく同業者に対して、いつも通りの表情で対応。
男としては、最大限の威圧感を出しながら詰め寄ったつもりだったが、クランドの表情に焦りや恐怖は一切ない。
(このガキが!!!)
その態度が余計に男の怒りを増幅させた。
「お前、確かクランドって生意気なルーキーか」
「生意気かどうかは分かりませんけど、少し前に冒険者になったルーキーなのは間違いありませんね」
クランドが生意気か否か……それは個人の主観が大きく作用する点。
本人としては、全くそういった態度を取っているつもりはない。
「そうかそうか、戦いの場でカバディカバディカバディって、変な言葉をぶつぶつ呟きながら戦う頭おかしいルーキーってのはお前のことだったか!!」
「……」
男が大声でクランドのことをバカにした瞬間……リーゼが静かに椅子から腰を上げた。
だが、クランドの制止によって、酒場で切傷沙汰を起こす事態には至らなかった。
「既に広まっているんですね。まぁ、仕方ないんですよ」
「何が仕方ねぇんだ? カバディカバディカバディって、ぶつぶつ呟いてうるせぇだけじゃねぇか」
この男は、クランドが学生最強の男であるブラハムを倒した話に関して……全てが事実だとは思っていなかった。
何かしらの小細工を使い、現役騎士にも負けない実力を持つと言われている学生を倒した……と、非常に大きな勘違いをしている。
出会ったタイミングが違えば、ここまで暴言を吐くことはなかっただろう。
しかし…………本当にタイミングが悪過ぎた。
クランドが詐欺だ、詐欺師だと発言した時、特に悪意はなく、自分の中の素直な本音を口にしていただけ。
それに対し、男とその仲間たちも真剣に全力でワイバーンに挑み、勝利してドラゴンスレイヤーの称号を手に入れるぞ!! と盛り上がっていた。
非常に、非常に同じ空間に居たタイミングが最悪過ぎた。
後になれば解るが、だとしても今は男に取って、そんなタイミングなど一切関係無い。
今は何とかし挑発して、目の前のガキを喧嘩の土俵に上げることしか頭にない。
「別にうるさくはないと思うんだが……まっ、そういうのは聞いてる人の立場になってみないと解らないものか」
どう考えても、目の前の男が難癖を付けているだけ。
そんなことは解りきっていながらも……クランドはゆっくりと椅子から腰を上げた。
(来いよ、完膚なきまでに叩き潰して、その減らず口を一生開かねぇようにしてやる!!!!)
クランドが喧嘩の土俵に上がってきたことで、怒りと嬉しさで表情が中々に苛烈な状態となっていた。
男が潰す気満々な状態であるにもかかわらず、仲間は一切止めようとしない。
潰すを易々と超えて殺しそうな雰囲気を放ってるにも拘らず、ニヤニヤと汚い笑みを浮かべている。
「ちなみに、カバディってのはな……」
「……はっ?」
目を離してはいない。
男に油断はあったが、目を離してはいなかった。
だが……気付いたときには視界からクランドが消えていた。
そして、何故か視界は天井に変わっていた。
「狩るって意味なんだよ」
「がっ!!??」
一応歳上だからという理由で敬語を使っていたアラッドだが、そんな気遣いを一切忘れ、右足で男の足を刈り……右手を喉に添えて半回転。
そして右手で掴む位置を喉から頭に、それなりの力を込めて地面に叩きつけた。
「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」
この光景に、男のパーティーメンバーだけではなく、周囲の客たちも同様に驚きの表情を浮かべていた。
体格的には、クランドよりもドラゴンスレイヤーになりたい男の方がやや大きい。
その点だけを考えれば男の方が強そうに見えるかもしれないが、中身はその逆。
カバディという特異なスキルを使わずとも、クランドの強さはそこら辺の冒険者が対応出来るものではない。
「でも、どうやらあんたは狩る必要がなかったみたいだな」
「っ!!!」
今回に関しては、詐欺や詐欺師のような素直な本音の類ではなく、煽り返すための言葉だった。
確かに……クランドの言葉は中々否定出来ない事実。
ワイバーン……亜竜を倒しただけで、ドラゴンスレイヤーと名乗るのは、いさかか詐欺と思われても仕方ない。
ただ、今回のように笑いが爆発したのには、他にも理由があった。
クランドたちが座っている席から離れた場所で座っていた冒険者たちが……とんでもなくタイムリーな話をしていたのだ。
場所とタイミングが悪く、彼らの会話内容がクランドとリーゼの耳に入ることはなかった。
そして運悪く、彼らが店を出る前に、クランドが爆弾を何度も投下してしまった。
「っ!!!」
当然、つい先ほどまで自分たちがワイバーンを倒し、ドラゴンスレイヤーの称号を得る!!! と意気揚々と話していた冒険者たちにとっては、笑いものにされたも同然。
その原因となった人物であるクランドを、許せるはずがなかった。
「おい、お前……何がおかしいんだよ」
「えっと……どちら様ですか?」
いきなり自分たちの元にやって来た、おそらく同業者に対して、いつも通りの表情で対応。
男としては、最大限の威圧感を出しながら詰め寄ったつもりだったが、クランドの表情に焦りや恐怖は一切ない。
(このガキが!!!)
その態度が余計に男の怒りを増幅させた。
「お前、確かクランドって生意気なルーキーか」
「生意気かどうかは分かりませんけど、少し前に冒険者になったルーキーなのは間違いありませんね」
クランドが生意気か否か……それは個人の主観が大きく作用する点。
本人としては、全くそういった態度を取っているつもりはない。
「そうかそうか、戦いの場でカバディカバディカバディって、変な言葉をぶつぶつ呟きながら戦う頭おかしいルーキーってのはお前のことだったか!!」
「……」
男が大声でクランドのことをバカにした瞬間……リーゼが静かに椅子から腰を上げた。
だが、クランドの制止によって、酒場で切傷沙汰を起こす事態には至らなかった。
「既に広まっているんですね。まぁ、仕方ないんですよ」
「何が仕方ねぇんだ? カバディカバディカバディって、ぶつぶつ呟いてうるせぇだけじゃねぇか」
この男は、クランドが学生最強の男であるブラハムを倒した話に関して……全てが事実だとは思っていなかった。
何かしらの小細工を使い、現役騎士にも負けない実力を持つと言われている学生を倒した……と、非常に大きな勘違いをしている。
出会ったタイミングが違えば、ここまで暴言を吐くことはなかっただろう。
しかし…………本当にタイミングが悪過ぎた。
クランドが詐欺だ、詐欺師だと発言した時、特に悪意はなく、自分の中の素直な本音を口にしていただけ。
それに対し、男とその仲間たちも真剣に全力でワイバーンに挑み、勝利してドラゴンスレイヤーの称号を手に入れるぞ!! と盛り上がっていた。
非常に、非常に同じ空間に居たタイミングが最悪過ぎた。
後になれば解るが、だとしても今は男に取って、そんなタイミングなど一切関係無い。
今は何とかし挑発して、目の前のガキを喧嘩の土俵に上げることしか頭にない。
「別にうるさくはないと思うんだが……まっ、そういうのは聞いてる人の立場になってみないと解らないものか」
どう考えても、目の前の男が難癖を付けているだけ。
そんなことは解りきっていながらも……クランドはゆっくりと椅子から腰を上げた。
(来いよ、完膚なきまでに叩き潰して、その減らず口を一生開かねぇようにしてやる!!!!)
クランドが喧嘩の土俵に上がってきたことで、怒りと嬉しさで表情が中々に苛烈な状態となっていた。
男が潰す気満々な状態であるにもかかわらず、仲間は一切止めようとしない。
潰すを易々と超えて殺しそうな雰囲気を放ってるにも拘らず、ニヤニヤと汚い笑みを浮かべている。
「ちなみに、カバディってのはな……」
「……はっ?」
目を離してはいない。
男に油断はあったが、目を離してはいなかった。
だが……気付いたときには視界からクランドが消えていた。
そして、何故か視界は天井に変わっていた。
「狩るって意味なんだよ」
「がっ!!??」
一応歳上だからという理由で敬語を使っていたアラッドだが、そんな気遣いを一切忘れ、右足で男の足を刈り……右手を喉に添えて半回転。
そして右手で掴む位置を喉から頭に、それなりの力を込めて地面に叩きつけた。
「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」
この光景に、男のパーティーメンバーだけではなく、周囲の客たちも同様に驚きの表情を浮かべていた。
体格的には、クランドよりもドラゴンスレイヤーになりたい男の方がやや大きい。
その点だけを考えれば男の方が強そうに見えるかもしれないが、中身はその逆。
カバディという特異なスキルを使わずとも、クランドの強さはそこら辺の冒険者が対応出来るものではない。
「でも、どうやらあんたは狩る必要がなかったみたいだな」
「っ!!!」
今回に関しては、詐欺や詐欺師のような素直な本音の類ではなく、煽り返すための言葉だった。
21
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる