カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

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六十八話 最悪過ぎたタイミング

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クランドが再度投下した爆弾によって、酒場に居た者たちの大半が笑い始めた。

確かに……クランドの言葉は中々否定出来ない事実。
ワイバーン……亜竜を倒しただけで、ドラゴンスレイヤーと名乗るのは、いさかか詐欺と思われても仕方ない。

ただ、今回のように笑いが爆発したのには、他にも理由があった。

クランドたちが座っている席から離れた場所で座っていた冒険者たちが……とんでもなくタイムリーな話をしていたのだ。

場所とタイミングが悪く、彼らの会話内容がクランドとリーゼの耳に入ることはなかった。
そして運悪く、彼らが店を出る前に、クランドが爆弾を何度も投下してしまった。

「っ!!!」

当然、つい先ほどまで自分たちがワイバーンを倒し、ドラゴンスレイヤーの称号を得る!!! と意気揚々と話していた冒険者たちにとっては、笑いものにされたも同然。

その原因となった人物であるクランドを、許せるはずがなかった。

「おい、お前……何がおかしいんだよ」

「えっと……どちら様ですか?」

いきなり自分たちの元にやって来た、おそらく同業者に対して、いつも通りの表情で対応。

男としては、最大限の威圧感を出しながら詰め寄ったつもりだったが、クランドの表情に焦りや恐怖は一切ない。

(このガキが!!!)

その態度が余計に男の怒りを増幅させた。

「お前、確かクランドって生意気なルーキーか」

「生意気かどうかは分かりませんけど、少し前に冒険者になったルーキーなのは間違いありませんね」

クランドが生意気か否か……それは個人の主観が大きく作用する点。

本人としては、全くそういった態度を取っているつもりはない。

「そうかそうか、戦いの場でカバディカバディカバディって、変な言葉をぶつぶつ呟きながら戦う頭おかしいルーキーってのはお前のことだったか!!」

「……」

男が大声でクランドのことをバカにした瞬間……リーゼが静かに椅子から腰を上げた。

だが、クランドの制止によって、酒場で切傷沙汰を起こす事態には至らなかった。

「既に広まっているんですね。まぁ、仕方ないんですよ」

「何が仕方ねぇんだ? カバディカバディカバディって、ぶつぶつ呟いてうるせぇだけじゃねぇか」

この男は、クランドが学生最強の男であるブラハムを倒した話に関して……全てが事実だとは思っていなかった。

何かしらの小細工を使い、現役騎士にも負けない実力を持つと言われている学生を倒した……と、非常に大きな勘違いをしている。

出会ったタイミングが違えば、ここまで暴言を吐くことはなかっただろう。

しかし…………本当にタイミングが悪過ぎた。
クランドが詐欺だ、詐欺師だと発言した時、特に悪意はなく、自分の中の素直な本音を口にしていただけ。

それに対し、男とその仲間たちも真剣に全力でワイバーンに挑み、勝利してドラゴンスレイヤーの称号を手に入れるぞ!! と盛り上がっていた。

非常に、非常に同じ空間に居たタイミングが最悪過ぎた。
後になれば解るが、だとしても今は男に取って、そんなタイミングなど一切関係無い。

今は何とかし挑発して、目の前のガキを喧嘩の土俵に上げることしか頭にない。

「別にうるさくはないと思うんだが……まっ、そういうのは聞いてる人の立場になってみないと解らないものか」

どう考えても、目の前の男が難癖を付けているだけ。
そんなことは解りきっていながらも……クランドはゆっくりと椅子から腰を上げた。

(来いよ、完膚なきまでに叩き潰して、その減らず口を一生開かねぇようにしてやる!!!!)

クランドが喧嘩の土俵に上がってきたことで、怒りと嬉しさで表情が中々に苛烈な状態となっていた。

男が潰す気満々な状態であるにもかかわらず、仲間は一切止めようとしない。
潰すを易々と超えて殺しそうな雰囲気を放ってるにも拘らず、ニヤニヤと汚い笑みを浮かべている。

「ちなみに、カバディってのはな……」

「……はっ?」

目を離してはいない。

男に油断はあったが、目を離してはいなかった。
だが……気付いたときには視界からクランドが消えていた。

そして、何故か視界は天井に変わっていた。

「狩るって意味なんだよ」

「がっ!!??」

一応歳上だからという理由で敬語を使っていたアラッドだが、そんな気遣いを一切忘れ、右足で男の足を刈り……右手を喉に添えて半回転。

そして右手で掴む位置を喉から頭に、それなりの力を込めて地面に叩きつけた。

「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」

この光景に、男のパーティーメンバーだけではなく、周囲の客たちも同様に驚きの表情を浮かべていた。

体格的には、クランドよりもドラゴンスレイヤーになりたい男の方がやや大きい。
その点だけを考えれば男の方が強そうに見えるかもしれないが、中身はその逆。

カバディという特異なスキルを使わずとも、クランドの強さはそこら辺の冒険者が対応出来るものではない。

「でも、どうやらあんたは狩る必要がなかったみたいだな」

「っ!!!」

今回に関しては、詐欺や詐欺師のような素直な本音の類ではなく、煽り返すための言葉だった。
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